第15.5話(★書き下ろしエピソード)~幕間~国王陛下は何を思う

 ◇◆◇◆◇◆


 その夜。王宮の深部にて。


 この国を統べる王の下へ一人のシノビが音もなく現れます。


「妃殿下のそうです」


 王はその報告にふうと溜め息の様なものをきます。


「そうか……困ったものだな」


 北の帝国から迎えたテレーゼ妃は最初は側妃でした。第二王子を産み、エドワード第一王子の実母である当時の王妃が亡くなった事で王妃となったものの、その後重大な病が発覚したのです。テレーゼ妃は離宮に籠って静養中の為、長年の間ほぼ表には出てこない存在となっています。


「悪さをするは見つかったのか」


「まだハッキリとは。引き続き注意してお見守り致します」


「そうか……まあそろそろ例のアレがを与えるだろうしな」


「はい。そちらで落ち着いて下さればいいのですが。ただ、もうひとつご報告がございまして」


「なんだ」


「エドワード殿下とアキンドー公爵令嬢が本日、人目を忍んで会話を。……しかしながら」


 いつもは淡々と報告を上げるシノビが僅かに言葉を濁します。が、多忙な国王の時間を無駄にするわけにはいきません。王は王妃が側にいないことで公務を独りで背負っている身なのです。シノビはすぐに実情を報告しました。


「はははは! そうか。あのディアナの、氷の彫像のような姿は作り物ではないかとは思ってはいたが……カンサイ弁か。しかし、婚約破棄は頂けないな。エドのやつ、何を考えてる? まさか本当に例の男爵令嬢に入れあげている訳でもないだろうに」


 王は愉快そうに、ただその目は爛々と光らせて言いました。


「……なるほど。病のもとも益々活発になるかもな」

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