座敷童子


「良し。では次はワラジ頼めるか」

 とリーダーが次に指名したのは、リーダーには「ワラジ」と呼ばれている座敷童子わらこであった。

「ん? オッケー僕ね。……って言っても僕はリーダーや三世女史みたいにこれといった秘密はないよ。まあ強いて言うならバ美肉おじさんだって事くらいかな~?」

 と小首を傾げる童子だが、すぐに香織が反応する。

「え? いやちょっと待って。バ美肉ってバーチャル美少女受肉の事だよね?」

「そうだよ?」

 っと頭に疑問符を浮かべる童子。

「いや、そうだよ? っじゃなくて……。だってワラワラってパソコンのモニター越しとかじゃなくて今、私達の目の前に美少女として居るじゃん? バーチャルでも受肉でもなくない?」

「あ~それね〜。それならバーチャルだし受肉だよ。だって今みんなに見えてる僕の姿って網膜に直接映し出されてるだけだからね」

「だけだからねって、どういう技術っ!?」

 っと目を丸くして驚く香織だが、童子の姿はその丸くした瞳に映し出されている幻影との事だった。


 しかし気が付いた香織はすぐに反論に出る。

「じゃ声は? 仮に姿はそうだったとしてもワラワラって声も女の子っていうか萌え声じゃん? おじさんが裏声とかで出せるレベルではないと思うんだけど?」

 という香織の指摘に童子はカラカラと笑い。

「あ、それは蝶ネクタイ型変声機を付けて喋ってるからだよ」

「蝶ネクタイ型変声機っ! それはワラワラじゃなくてどっちかって言ったらみっちゃんが付けるべきじゃないっ!?」

「ルパンなのに?」

 とこれを言ったのは当の本人である三世である。しかし結局のところ見た目は子供、頭脳は大人であってもルパン三世に蝶ネクタイ型変声機を付けても特に意味がないので香織の意見は普通に却下された。


 そしてここでリーダーが童子の頭頂部を指差し。

「というより香織。ワラジの頭には普通にケモ耳が付いているじゃないか。その時点で生身の人間ではないと理解出来るだろう?」

「え? あ、いや確かにケモ耳には最初から気が付いてたけど、カチューシャとかかなって思ってて……。てかケモ耳付けてるって事はワラワラって座敷童子って名前だけどモチーフは犬とか猫みたいなモフモフな動物なの?」

「うん、そうだよ。僕のモチーフはしじみだね」

「貝じゃん! しじみにケモ耳なんてないじゃん! 全然モフモフじゃなくてどっちかっていったらツルツルだし!」


 とツッコミまくる香織だが、結局座敷童子がバ美肉である事を認めつつも本当に中身がおじさんなのかは確認しない香織であった。

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