第6話 とある修学旅行のお話 -京都行バス-

 早朝、私のスマホの呼び出し音が私の耳を貫いた。

 せっかく気持ちよく寝てたのに起こすなよと思いながらスマホの画面を見る。


「眠い…こんな朝から、誰?」


[咲稀]


 咲稀からか。どうしよう、出なくてもいいかな。まだ寝てたい。

 しょうがなく咲稀からの電話に応答した。


「美春――!今日修学旅行の日だよ!!」


 そんなことだろうと思った。

 声大きすぎて耳が痛い…。

 

「叩き起こすのはひどい」

「えへへ」

「え、それを言うためだけに私に電話したの?」

「そーだよ……いやいやいや、違う違う。ちゃんとした理由があったんだよ!」

「?」

「集合場所どこだっけ」


 あほ。


「学校意外にどこに集合すんの」

「あ、やっぱそうだよね!?でも私心配性だからめっちゃ怖くて!」

「プリントに書いてあるよね?無くしたの?」

「あ、ほんとだ。書いてある」


 いや、あほ。


「私眠いからこれで」

「え?もうそろそろ行かないと間に合わないよ?」

「ん?」


 私は横に置かれた時計に目をやった。

 6時6分。

 集合する時間は6時20分。

 ちなみに私はまだ起きたてで当然パジャマで準備もしてない。私が能力者じゃ無かったら遅刻してたね。


「……」


 私もあほだったか。

 まあ別に瞬間移動があるからいいんだけど。


「じゃあまたあとで」

「私もちゃちゃっと準備して行っちゃお」


 っていうか咲稀に関しては今から家出ないと間に合わないでしょ。

 着替えそういえばベランダに干してるな。取りに行くのめんどくさいなー。

 私はしょぼしょぼした目をこすりながらため息をつくのであった。




 修学旅行の荷物を持って集合場所の学校の近くの人気のない裏路地に瞬間移動。やっぱ便利な時は便利。

 そして私は何食わぬ顔をして学校に入り、時間まで待機している生徒の中に入っていった。


「美春―!遅かったじゃん」

「あ、咲稀間に合ったんだ」

「私は追い詰められたとき覚醒するタイプだから!」

「追い詰められる前に覚醒できるとなおいいね」

「無理」

「えぇ....」

「そんなことより私の荷物持ってみてよ!?マジで重いんだけど」


 咲稀にいきなり荷物を押し付けられた。………重い。

 何入れたらこんな重くなるの…


「美春のはどれくらい重い?」


 咲稀にいきなり荷物を取られた。


「ちょっと待ってなんか軽くない?」

「欲しいものがあったらトイレにでも行って瞬間移動で家に取りに行けばいいし最低限の物しか入れてない」

「なかなか修学旅行の雰囲気ぶち壊す発言だね」


 まあ大体のもんはバッグに入ってるからよっぽどの事がない限り戻らないと思うけどね。


「ところで咲稀は何入れたらそんな重くなったの」

「生活必需品」

「いらない物いっぱい入ってそう」


 泊まるホテルの部屋割りは男女別の4人グループ。メンバーは咲稀と私と中澤さんと、あと石原 桃花(いしはら ももか)ちゃんっていう女の子。

 このメンバーは部屋割り決めが開始してから咲稀が一瞬で集めてきた。ちなみに桃ちゃんは結構クラスで人気あるからみんな悔しがってた。そしてなぜか咲稀に対抗する人はいない。咲稀もそこそこ人気者らしい。

 ちなみに私は勝手に桃ちゃんって呼んでる。話したことあんまりないけど。

 あれ?そういえば桃ちゃんいないな。


「おー、美春と咲稀じゃん。やっと見つけた!」


 中澤さんが手を振りながら歩いてきていた。


「探しても中々見つからなかったから結構焦ったじゃん」

「ごめんごめん。っていうか美春も今来たとこだよー」


 ホテルの部屋のグループは研修旅行の班と同じ扱いだからホテルの部屋だけじゃなくて遊園地とか回る時もそのグループと一緒。で、バス乗る時もグループまとまって乗るから出発までに合流しとかないとマズい。


「ん?桃花がいないね。はぐれちゃったか?」

「はぐれた?」

「ああ、さっき咲稀たちを探してる時に桃花と一緒に探してたんだよ」

「もう出発まで5分くらいだけど大丈夫かな」


 1学年全員が同じ場所に集まってるから相当な人数。はぐれたんだったら早めに見つけとかないとね。


「私たちスマホ持ってるからそれで連絡しちゃえば?」

「あ、その手があったか。咲稀たちを探すとき使えばよかった…」


 そういえば自分で認知変えといてだけどスマホあるのすっかり忘れてた。


「ちょっと桃花にLINEしてみるよ」


・・・2~3分後・・・


「あ、春華ちゃん!ごめんなさいさっきまで一緒にいたのに。人多すぎて場所分からなくなっちゃった」

「遅いぞー」

「あ、咲稀ちゃんと美春ちゃんもー。みんな揃って——」


 ズサッ


 わあ痛そう

 桃ちゃんが男女問わずみんなからの人気が高い理由。


「あいたぁ......またこけちゃった」

「もー、何してんだよー」

「ごめんごめんー」


 可愛い系ドジっ娘美少女という正直詰め込みすぎと言いたいくらいのキャラしてるから。

 聞いた話あからさまなぶりっ子キャラの子は割と女子から嫌われやすいらしいけど、桃ちゃんはそのハードルを超えてもはや女子ですらキュンときちゃうらしい。この学校やべぇやつ多いなって思った。

 というか、この学校全員キャラが濃い。


「もうすぐバスが出発するからグループごとにバスに乗ってけー!」

「あ、バスもう乗るみたいだね」

「じゃ、そろそろ行こうか」

「……」

「……」

「どの順番で座る…?」


 私たちはバスの一番後ろの席だから横に4人並ばないといけない。よって端っこ2人は距離が遠くなる。

 正直誰でもいい。


「私美春の横ねー!」


 私を強引に連れて端っこの席に座る咲稀。


「じゃあ私美春ちゃんの横でー」

「いや、ボクが美春の隣だ!」


 あ、咲稀が私の隣に座るのは確定でいいんだ。なんでだよ。

 私の隣にどちらが座るか桃ちゃんと中澤さんがモメてる。一応言っとくけど私そんな人に好かれることした覚えはない。


「おいお前らー、はやく座れー」(あいつら何やってんだ早く乗れよ....。もたもたしてると怒られるのはこっちなんだって)


 まあ、先生も大変なんだなって...


「先生がお前らはよ乗れやって言いたげにこっち見てるよ」

「よし。ここは公平にじゃんけんだ!」

「私じゃんけん強いからね!」

『じゃーんけーん……』




「えー、京都行バス、発車いたしまーす」


 そういえば京都初めて。ちょっと楽しみかも。


「このボクが……負けるとは……」


 中澤さんが負けた。

 私たちは右から順に咲稀、私、桃ちゃん、中澤さん。という風に並んでいる。


「そういえば京都までバスでどれくらいなんだろ」

「確か説明では5~6時間くらいって言ってたけど」

「???」


 まあ、飛行機じゃなくてバスで京都だからね。割と遠い。

 先生が何回か高速道路の休憩所でトイレ休憩があるって言ってたからトイレ面は問題ない。


「バス乗ってる間何するー?」

「しりとりでもしない?」

「やろやろーー!」


 絶対30分ももたない。


「りんご」

「ごりら」

「らっぱ」

「ぱせり」

「りんご」

「ごりら」

「待って」


 バスの中はなんやかんや賑やかなまま時間が過ぎて行った。


「休憩地点に着いたからトイレ等行きたい人はバス降りてー。15分20分後に出発するからなー」


 時間の流れって早い。もう休憩所。


「私トイレ行ってくるけど美春は行く?」

「......行く。2人は?」

「あ、私はまだ大丈夫だよー」

「ボクも大丈夫だから2人で行っておいでー」


 休憩所のトイレが混む前に早くいかないと…

 私たちはちょっと小走りでトイレに向かった。


「良かったー、混んでないね!」

「早く走るからだよ....疲れた....」

「能力で疲れ取ったりできないの?」

「できるけど極力能力だけに頼る生き方は避けるようにしてるの」


 もし仮に能力が使えなくなるような事があったら、能力に頼り切った生活してたら大変なことになるからね。


「偉いなー。私だったらガンガン使いまくってたよ」

「まあ、この能力もそんな燃費良くないから楽しいのは最初の1週間だけだよ」

「マジか」


 やっぱなんやかんや普通に過ごすのが一番なのよ。


「よし、無事にトイレも済ませたことだしバスに戻ろー!」

「咲稀、そうやって気を抜いてたらこけるよ」

「大丈夫だよー、こんなとこでこけたりしないって!」

「まあ気をつけ——」


 ストン


 あっ

 どうやら私は地面の傾斜でバランスを崩して顔面からこけたらしい。いったぁ...

 気を抜いてたのは私の方だったって?


「美春ー大丈夫かぁ~!!」

「うるさい」


 自分の傷を治しながら早足でバスに戻った。ああ、能力使っちゃったよ......



「ちょっと遅かったね。何かあった?」

「咲稀にいじめられた」

「いや私何もしてない!」

「何かした人はそう言うんだよ」

「んな大げさな!?」

「いやほんとに何があった」



~~~めっちゃ時間経過~~~



「京都に着いたぞー!バスから降りてそこの広場に集合しろー」

「やっと着いたー」

「そうね、結構長かった」

「グウ…」


 中澤さん寝ちゃってる。


「中澤さん?着いたよ」

「ん?……ああ、おはよ」


 昼だよ。


「あそこの広場で集合。咲稀と桃ちゃんもう行ってる」

「そういえば美春ってどうして私の名前は苗字呼びなんだ?」

「……会った時からそう呼んでたからいきなり変えたら恥ずかしいじゃん?」


 確かに咲稀とか桃ちゃんと違って中澤さんは苗字で呼んでた。

 普段からそう呼んでるから気にならなかったな。


「じゃ、今からボクの名前は下で呼ぶってことでよろしく」

「いやよろしくって…」


 っていうか意外と中澤さん焼きもちするタイプ?

 結構可愛いとこあんじゃん。


「じゃ、行こう。春華ちゃん」

「意外とあっさり言ったね。もう少し恥ずかしがりながら言ってもいーんだよ~?」(照れてるとこ見れると思ったのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ.......)


 前言撤回。全然可愛くないなこいつ。本当にやべぇやつだなと思った。


「ほら、早く行くよ」

「へーい」


 春華ちゃん........ね。


「2人とも遅いぞー?」

「春華ちゃんが寝てたせい」

「ちょっとーボク悪くないー」

「寝てた」

「にんげんだもの」


 最強の言い訳やめて。


「なんか2人とも仲良くなったね」

「こういうのも研修旅行のいいとこよねー」


 なんか咲稀と桃ちゃんがにやにやしながらこちらを見つめている。

 やめて。


「美春顔赤いよ?大丈夫?」


 ほんとにやめて。


「さっさと集合場所まで行こ」

「あ、今照れ隠しした」

「照れてないし」

「照れた」

「絶対照れてない」


 なんていつものくだらない会話をしながら4人で集合場所の広場に向かうのであった。




<あとがき的なやつ>

ここまで読んでくれてありがとです。超能力が使える女の子のお話。今は高校生のノリと勢いで書いてますが大人とかになって改めて見たら恥ずかしくなるかもしれません。が、そんときゃ消せばいいんですよ消せば。ということで今は自分がやりたいようにこれからも書かせていただきます。

 最後の方なんか、百合そのものみたいな感じだったような気もしなくもないですが、少なくとも僕は「友情」と捉えてます。セーフセーフ。※なお修正前はかなり百合だった模様。

 男キャラはよ!!!!!!!!!!

 ちなみに僕が行った修学旅行でも京都にバスで6時間くらいかけて行きました。バスの時間、長ぇ。

 修学旅行編は割と長めになるかもしれませんが、よろしくお願いします。ところでこの「よろしくお願いします」は一体何を求めて故の「お願いします」なのか。お前は何をしてほしくてその言葉を使ったのか。いまいち分かりずらいなーって思いながら今回のあとがきを締めます。

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とある超能力系女子のお話 じゃがいもis神 @yozama1432

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