第7話 殴られぞんな魔族と私
「ひいいい!」
ガエリスは悲鳴をあげて逃げる。
本来は魔族であるガエリスは逃げることは有り得ない。
それだけ今の状況がやばいのだ
「───オラァ!見っけたぞ!」
自分が先程居た場所で爆発音が響き、続けて何かをぶん投げてくる音がする
「ッ!ソードシールド!」
何とかそれを反射的に防ぐが……
それは悪手
「いよぉし!動きが一瞬止まったなぁ!」
防いだところを狙って律がぶん殴る。下から上に向かって放たれた一撃は
「?!」
彼の体を空中に打ち上げる。
──それでも魔族であるガエリスには翼があるので、むしろ好都合と思いながらその場を離れようとするが
「逃げんな!」
一瞬のうちにジャンプして追いつかれる。
最早逃げるのは不可能と判断したガエリスは剣を展開し、彼女を迎え撃つ
────しかし
「──────やっと戦う気になったか?……まぁもう手遅れだがな!」
彼女がそういった途端、チェーンソーがものすごい速度で光り始める。
さしずめ、何かを解き放つようなそんな雰囲気に
思わず後ろに下がろうとするガエリス
「───なんで私がさっきから地面ごと破壊してたかわかるか?
……それはなぁ……こいつを使うためだったんだぜ?」
嫌な予感がする。
それでも彼女の攻撃が当たらないぐらいの距離を保っているのは正しく魔族のエリートと言うべきガエリスの凄さだった
事実、最初の数発以外は致命打を避けるようにして何とか回避していた
しかし、そんな彼の逃げもここで終わる
「────『フルチャージ』」
そう彼女が叫ぶと、チェーンソーから光が溢れ出す
そして、そのまま近づくことなくその武器を振り下ろす
ガエリスはてっきりそのままチェーンソーを投げるのかと想像していたが
─────実際は
「『
その武器から光の刃がそのままこちらに飛んできた
それを回避しようとするが
路地の看板に引っかかり回避し損ねる
「!?ぐぁああ!!!!」
天地がひっくり返るような衝撃
そしてそれを受け止めた自分の肉体が一瞬で粉々になる
それでも魔族は再生能力が高いため、何とか立ち上がろうとするが
「───ゴリ押しスラーッシュ!」
そのまま殴り倒される。
一撃にて腕と足、それから羽を両方もぎ取られ
苦痛に呻く暇すら与えずに気絶させる。
◇◇◇◇
彼女の持つ武器、『リベレイトディザスター』にはとある効果がある
攻撃時に
その周辺の
それを
◇◇◇◇◇◇◇
ゆっくりとその気絶した亡骸?かは知らないそれに近づいた時
「──────困るのだよ……私の側近を殺されては」
変な格好の男が空から降りてきた
「……あんたは誰だい?」
そう言うと、男は
「俺の名は……カガミ=ロウ……魔王だ」
と告げた
告げながら魔力の爆発弾を投げつける。一瞬で彼女は消し炭になって消え……
「……なんすか……君ら先手必勝好きでしょ?」
爆発の中からゆっくりと立ち上がる律の姿を見てカガミは確信する
──────こいつはやばい。と
いまさっき放ったのは『
それを食らっていながらあの態度
……なるほどあれはおそらく天使とかよりも厄介なタイプだ
そう判断した彼はひとつ質問をなげかける
「……君、魔王軍に入らないか?」……と
まぁそんなふうに聞いたところで
「──────?何言ってんの?……まずはいきなり刺してきたそいつに対する私の怒りの発散が先でしょ?」
そう言いながら、チェーンソーを再び吹かす
バリリリリリリ!という心地よい音がして、刃の回転がどんどんと上昇していく
「───そうか。ではさらばだ……置き土産にでもこいつをくれてやろう」
カガミはそう言うと、手に持っていた魔物の召喚キューブを投げる
白い煙が充満し、その煙の中から現れたのは
「「「「ギャオオオオオオオオオオ!!!!」」」」
ティラノサウルスとタコのキメラ……?と言うべきものだった
そいつはタコの見た目をしていながら
足の先にそれぞれティラノサウルスのような頭を携えていて
しかもサイズは実に6mはゆうに超えていた
「……私はタコが別に好きでは無い」
律のその言葉にカガミは
「はははは!では君の足止めには丁度よさそうだな!……さらばだ!」
そう言って逃げるように去っていった。
「────でもティラノサウルスは好き……故に心置きなく潰せる」
そう言うと、再びチェーンソーを構える律
「ぬるぬるしてめんどくさいし、削ぎ落とせば良さそう」
──────先程、魔力の爆発弾を斬り裂いた時
……その中に含まれている魔力をチェーンソーにチャージすることが出来ていたので
「『フルチャージ』……タコごときが私の前に立つな」
そう言うと、タコを足元からナマス切りにしていく。
さしずめまな板の上のタコ。これからたこ焼きにされるタコのように
本来
このモンスターはタコの性質である打撃に強いという特性と
ティラノサウルスの持つ斬撃に強い鱗を併せ持つ存在なのだが
そんなもの露知らずとばかりに片っ端から
たたき潰して
ひねり潰して
切り飛ばして行く
「好きなものと嫌いなもののセットはやっぱ嫌」
ちょいと落ち着いた感じで、ゴリ押ししていく。
多分相性とか関係ないのだ
あるのはただ、倒せるか否か。
◇◇◇◇◇◇◇
「──────で、この大量のタコの欠片が生まれたわけですか……」
どうやら本当にタコでできていたらしく
今は倒した残骸を路地に住む人々に配りながら食べているところだ
「あの人、本当に頭がおかしいんですかね」
遊がそう呟いたことに俺はそうだな……と呟いて溜息をつきながらタコの素焼きを食べる
「……案外美味いな」
「ですね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そんな匂いにつられてやってきた一人の貧乏魔法使いの少女がいた
「〜〜〜くんくん……美味しそう匂い……」
そんな少女と律が出会った時、物語の歯車が本当に動き出す
これもまた
彼女がごり押さなければ出会わなかったであろう出会い
……なのかもしれない
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