第6話 邂逅するのは魔族

───王国から離れた僻地にある魔王の砦にて


「まさかの4人もかよ……あの試練を超えたヤツがいるとか驚きなんだが?」


そう呟くのは十人いる魔王の一人、加賀美 次郎……今の名はカガミ=ロウ。

お付の従者が伝えてくれた情報をもう一度彼は噛み砕いて整理する。


魔王は勇者に敗れる。と言う予言があった……というか、大体のパターンではそうなるはずだ

彼は転移者にして、あの試練をかつて超えたものの1人。

毎年行われるあの儀式で生き残る確率はごくごく稀だ。それは当然なことなのだが……しかし4人も……か。


「なぁお前ら、どう思うよ……?」


俺は他の魔王に連絡し、その事を伝えたのだが


「ふむ、6人は寝てるのか反応無し……3人は、『どうでもいいし今かけてくんな』か……あのボケナスどもめ……」


魔王は十人いると言ったが、その内の5人は異世界人であり


残りの5人はこの世界の魔族だ


彼もかつては勇者に憧れた純粋な青年だったが……

あの異世界人召喚の裏を知ってしまい、その事を隠す女神たちが信用出来なくなり魔族側に付いた過去がある


他の4人の異世界人も同じ感じで世界の仕組みに不信感を抱いたヤツらばかりだ


───「ガエリス……居るか?」


俺は1度勧誘すべきだと判断し、側近のガエリスを呼ぶ


「は!ここに……」


「ガエリス、頼みがあるんだが……

今回ピックアップした4人に魔王側に着く気は無いか?と聞いてきてくれ

……もし断られたら」


「断られたら?……」


「全力で逃げろ……普通に死にたくないならな」


俺は知っている。あの試練を超えたやつがどれだけ強いかを


「……は!承知しました……まぁ私は強いので死ぬことはありませんよ!」


そう言ってその場を去るガエリスに俺は


「……死ぬなよ、ガエリス……お前は確かに強いが……

嫌な予感がするんだ……何より

……俺の感はよく当たる」


◇◇◇◇◇◇◇



「あ!きたきた……おっそいよ!もうお茶を20杯も頂いちゃったよ〜」


私はたぷたぷになったお腹を叩きながら他の3人を出迎える


「こっちは……満身創痍何だが……な!」


彼らは私よりもボロボロだった。

それでも死んでいないのはさすがと言うべきところだったりする


「……なぁお風呂ってどっかにあるか?」


ちょいとガタイのいい男の人に話しかけられたので


「あーあそこのテントの中に水と炎の魔法で体を流せる場所があるよ〜〜さっさと言っといで〜〜誰か知らないけど」


誰か知らないと言う言葉に、少し驚いたような仕草をしたが


「……そうだな、俺もお前のことは知らないし……まぁおあいこってとこだな」


ふむ、いい切返しだ。

センスを少しだけ感じる……


他の2名はもう喋る気力も残っていないようで、彼の後をついて行った


──────彼らが戻ってきたあと、私と同じようにギルドカードと騎士の称号を貰い

そうして改めて今回試練を超えたものたちが集った


『それではお集まりの皆様……これから式典を始めます……』


◇◇◇◇◇◇◇




私はベットに横になる。式典はまさかの夜まで続き、昨日の夜

夜更かしをしていたこともあって一気に眠気が襲ってきた


「ふぁ〜〜〜眠い……まぁ今夜くらい贅沢にベットを独り占め……いや毎日してたわ」


私はベットに横になり目を閉じて眠りの世界に落ちて……



…………………………「寝れない!」


そりゃそうなのだが、アドレナリンドバドバ出して、あんだけ血みどろの戦いを繰り広げたやつがぐっすり眠れるわけが無いのだ


仕方が無いので、眠れそうな歌を頭の中で流して目をつぶる


──────数十分後


「余計に目が冴えた!……ちくしょうどうなってんだよ!」


……私は仕方が無いので羊を数え始める


「羊が1匹、羊が2匹……」


……「羊が180匹……羊が………………2546匹……」


流石に眠くなってきたのか、私は安心して目を閉じる


いい夢を見れますように。おやすみ



◇◇◇◇◇◇



私は暗闇の中、ターゲットの女を観察する


そこまで驚異になりそうな存在では無いし、しかもそこまで強そうでもない。


むしろ、おっとりしていそうで刃物なんて持たなさそうなそんな感じの女性に


「なるほど……魔王様は流石に心配しすぎですよ……」


私はそう言いながら彼女に近づく。


彼は野心家であった。


「……こいつがもし魔王側に着くとしたらまた私が除け者になるかもしれない……」


前回、魔王の席がひとつ増えた時彼は最終候補まで上り詰めた。

しかし異世界人にその席を奪われてしまったことを思い出す


「これ以上私の昇進のチャンスを無くされるのは困るのでね……大人しく死んでいてもらおうか」


そう言って優しい寝顔の彼女に魔力で創った剣をブスリと突き立てる。


完璧な暗殺技術による、完璧な不意打ち。


──────「すまないな……まぁ来世にでも期待しておくといいさ」


そうやってカッコをつけて去ろうとした途端


「?!」


ガエリスは窓の外に叩き飛ばされる。


「!?……ッぐ!!」


何が起きたのか分からなかった彼だが次の言葉でその状況を理解する


「……人がぐっすりやっと寝れると思った時に眠れなくしてくれやがって……」


ガエリスは運が悪い男だった


寄りにもよって剣を突き立てたのが……律だったのだ


「てめぇ覚悟しろよ?…………知ってるか?ハンムラビ法典にはなぁ!……目には目を歯には歯をって言葉があるんだよなぁ!!」


そう言いながら全力でチェーンソーをフルスイングする


回避する間もなく、彼は人気の無い路地の奥まで吹き飛ばされる







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