実家で起きた心霊現象

久石あまね

僕の心霊体験

 僕は高校生の頃、仲の良いひとつ年上の女の先輩がいた。


 仮名(山本さくら)先輩は以下呼称『さくら先輩』は僕の所属するハンドボールの練習場の隣で練習する女子ソフトボール部に所属していた。


 さくら先輩とは練習前に雑談をしたり、たまにハンドボールのボールでキャッチボールをしたりしていた。さくら先輩はまあまあキャッチボールが上手く、さすがソフトボール部といった感じだった。


 僕はさくら先輩に好意を少し抱いていたが、さくら先輩に対して恋愛感情は抱いていなかった。気のいいお姉チャンというような感情をさくら先輩に抱いていた。


 しかしさくら先輩は僕に好意を抱いていた。僕とさくら先輩の共通の友達が教えてくれたのだ。

 

 夏休みが終わり、文化祭があった。文化祭はさくら先輩に呼び出されふたりで店廻りをした。さくら先輩の楽しそうな笑顔が目に焼き付いた。しかしさくら先輩はたまに真顔になり、シリアスな雰囲気を醸し出すようになった。以前はそんな雰囲気を出したりはしなかったので、本当に僕のことが好きなんだなと感じた。


 しかし僕はそんなさくら先輩の本気の好意に真向きに向き合えなくなった。理由は僕はまだ恋というものがよくわからなかったからだ。呑気なものだが、自分に恋が訪れるとは現実的に考えられなく、それを避けたく思い、本気で女の人と向き合うのが怖いと感じるようになっていた。


 そして秋が深まる10月下旬。


 さくら先輩は僕に昼休みにソフトボール部の部室前に来てほしいと共通の友達を通して伝えてきた。

 

 昼休みになった。


 しかし僕は待ち合わせ場所には行かなかった。


 僕は本気で人と向き合えない性格なのだ。


 この日は部活も休んだ。


 さくら先輩と顔を合わせたくなかったからだ。


 電車で高校から帰る途中、地元の幼馴染のやつと偶然会った。


 そいつに今日あった、出来事を話していた。そしてその時奇妙な感覚を感じた。耳の奥で耳鳴りがするのだ。その音が大きくなったり、小さくなったり、節操もなく連続的に聴こえてくるのだ。そして心臓の裏側に鳥肌が立つような感覚を覚えた。妙な寒気がするのだ。風を引いたのかなと思ったが、直感的にそうではないと思った。


 さくら先輩が怒っているのかなと感じた。


 自宅に帰り、すぐに風呂に入った。


 そして夕飯を食べ、自室に行き、その日勉強したことの復習をした。


 いつの間にか11時になっていた。


 僕は部屋の電気を消し、布団を被った。


 しばらく目を閉じて、さくら先輩のことを考えていた。


 やはりまずかっただろうか、待ち合わせ場所に行かなかったのは。


 自分がさくら先輩の気持ちになって考えたら、悲しいと思った。


 僕はなんともいえない気分になった。


 そしてまたあの音がした。 


「きーん、きーん」


 また耳鳴りがする。初めは小さな耳鳴りだったが、それがだんだん大きくなっていき、僕の身体に異変が起こった。


 頭のてっぺんから足の爪先まで鳥肌がたっているのだ。


 そして心臓が暴れるようにドクドクとなっている。しかし身体は動かなく、目だけが動く。


 金縛りだと思った。


 そして目を開けたら、僕の目の前にドレスを着たさくら先輩が乙女座りをしながら浮遊していた。


 しかもベッドの周りには六体の人の形をした煙が透けるように浮かんでいた。


 僕は全身に冷や汗が出た。


 しかし、身体が動かない。目だけが動く。


 そしていつの間にか金縛りが解けた。


 僕は大急ぎで自室から出ると、両親の寝室に駆け込んだ。


 その日の夜は両親の寝室で寝た。


 僕はさくら先輩に恨まれたんだと思った。さくら先輩の周りにいた、六体の人の形をした煙は僕の守護霊だろうか。今ではあの六体の守護霊はさくら先輩の怨念から僕を護るために現れたんだと思っている。


 これが僕の体験した心霊現象だ。

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実家で起きた心霊現象 久石あまね @amane11

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