47. 笑顔と涙

 その後あの映画の知名度は以前にも増して爆発的に上がった。私やニコル、その他のキャストは一躍スター扱いになり仕事のオファーが絶えなくなった。チャドは監督を引退する予定でいたが今回受賞したことで自信を取り戻し、死ぬまで作品を撮ることに決めたらしい。


 そんなある日、私の受賞の話を聞いた祖父の幼馴染のペドロが奥さんのカトレアと一緒に家にやってきた。ペドロは祖父の葬式のとき1人棺の前に頽れて大声で泣いていた。彼が亡くなったあともしょっちゅう家に来ては祖母や私に向かって懐かしそうに祖父の思い出話をしていた。ペドロは私に受賞のお祝いと沢山の手作りのパンをくれた。


「君の映画も演技も最高だった。ずっと笑いっぱなしだったけど最後は何でか泣けたよ。パウロは君を誇りに思っていると思う」


 円な瞳をした丸顔のペドロは少年のような笑顔を浮かべて私の功績を讃えてくれた。


「ありがとう。おじいちゃんはいつもあなたの話をしてた。あなたは素晴らしい友人だった、あなたが幸せでいることが自分の何よりの喜びだって言ってたわ」


 そう伝えるとペドロの瞳に涙が浮かんだ。裏表のない性格の彼は一切感情を隠すことがない。全てを曝け出すことを恥と思わないその姿は真っ直ぐで勇敢にすら思える。


 ペドロは帰り際私にこう声をかけた。


「人は好きなことしかできない。自分の魂の底から楽しいと感じることをしていればきっと道は拓ける。何も怖がることはない、ただ真っ直ぐに生きてさえいれば」



 

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