第10話 『正義の魔女』

       (主人公視点)


※茶髪魔法少女=第8話のすれ違い魔法少女

       ランクはBです。

_________________________________________


あれから数日が経ち、いつもと変わらない日常を過ごそうと思っていたのに……。

朝っぱらから、クロネさんに叩き起こされ、ひらけた広場に連れてこられた僕。

……しんどい。しかしクロネさんはまるで

太陽のようにキラキラと笑顔を振りまいて

いる。


「みてて!…………はぁ!」


クロネさんの剣に漆黒の炎が周りに付与される。


「うんうん、魔力は充分に使えるようになったね」


僕は頷きながら答える。ところで、皆んなが

気になっているはずの、魔力と言われるものを習得して、何かメリットがあるのかと言う話なのだが________________。


「ねぇねぇ?この、魔力って奴を覚えたのは

良いんだけど、どうやったら強くなるの?」


首を傾げながら小動物のような瞳で、疑問を

口にするクロネさん。かわよすぎでしょ…。


「え、えっとね!……魔力を覚えることが出来たら、自分の属性を100%の力で使えるようにになるんだ!」


炎の色が変わったのもその影響だ。


「属性が……100%の力で? ………………もしかして私、今まで全然扱えてなかった!?」


「うん。力任せで戦ってたから、多分、本来の十分の一も

出てなかったと思うよ?」


僕が真実を口にすると、クロネさんは冷や汗を流しながら________。


「私、Aランク魔法少女だったんだけどなぁ〜……ははっ…」


軽く絶望していた。……そしてそこに、


「もっと言ってやれピヨ!」


追い討ちをかけるように声援を送ってくるぷよよ。


「……うぅ!言い過ぎだよぉ……」


うずくまるクロネさんを放置して、僕は話を続ける。


「……あとは魔力を鍛えることで、色んなことが出来るよ?」


例えばと、僕はさらに話を続けた。


「この山でインターネットが使えるのは、僕の魔力を変形している

からだね」


「……え?」


クロネさんは酷く驚いた表情をして、勢いよく僕に接近して問う。


「……えっ!?……ま、魔力ってそんなこと出来るの!?」


「……う、うん。エネルギーのようなものなら大体……電気とか、

放射線とか……」


(……そんなことより顔が近過ぎるんですけど!!)


僕が少し近づいただけで、クロネさんの吐息がかかる。


(な、なんだか甘い香りがする……や、やばっ

、これ以上ここにいたら理性が壊れる!!)


そう判断した僕はそっと、彼女から距離を取ろうとすると________


「あっ!手が滑ったピヨ!」


「「っ!?」」


ぷよよがわざとらしくクロネさんの背中を押して、僕に

倒れるように体を近づかせ_________________


チュッ


唇と唇がぶつかる音がする。……頭では分かっていても理解したくないと、僕の頭&体は

動かなくなる。

しばらくキスを続けていると、ようやく頭が働いてきたので、

僕は急いでクロネさんから顔を離した。


「……あっ」


名残惜しそうな表情を浮かべながら、クロネさんは吐息をこぼす。


「ご、ごごごごごごごごめめめめめめめめごごごごごごご!!!!」


僕は謝罪しようとするが、頭が真っ白なせいか、言葉が続かない________________

しばらくすると彼女は、僕の代わりに喋り始めた。


「ううん。謝らなくて良いよ!……むしろ、私が

謝らなくちゃいけなくなるから………」


彼女は頬を赤く染め、落ち着きのない様子で口にする。可愛い。のだが、

気にするところはそこではない。


(……これから、謝らなくちゃいけなくなる????)


僕は意図を理解しようと頭を働かせようとする________________

だが、その前に、


ドサッ


「????」


僕は、クロネさんに押し倒された。彼女は僕の上に跨り、頬を赤め、息を荒げながら________________


「はぁ……はぁ……、ご、ごめんね! ……私、も、もう、

我慢が出来なくなっちゃったの!!」


「え? あの、え?……ちょっ」


「……ぷよは先に家に帰ってるピヨ!」


「おい待てコラッ!元凶が先に帰るな!!」


妖精ならぬ、この現状を作り出した悪魔、ぷよよがその場から

逃げようとするので、僕は慌てて呼び止めようとするが、悪魔

ぷよよは僕に一言。


「ぷよは最近思ったピヨ。……こいつら、はよくっつけピヨ!

って、だから……ぷよはきっかけを作った神聖なる妖精ピヨ!」


くちばしを緩めて不敵な笑みを浮かべながら神聖なる悪魔は

退場して行った。


「……こっの!まっ、まっt」


ガシッ


僕の顔が、彼女の両手によって行き場所をなくす。


「…良くないね! 今、優ちゃんは私だけを見てれば良いの! 

……ほらっ! 私だけを見て?」


僕の顔を固定しながらクロネさんは僕を見据える。


(……あっ、おおおおおおおおお!!)


僕の理性が崩れていく感覚がする……。

そんな僕を見て、クロネさんは悪魔のような笑みを浮かべて、

そのまま僕に__________


「む。浮気現場、発見」


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


空からいきなり女性が降ってきた。

……僕は、物凄く驚きながら空から降ってきた女性に目を向ける、

するとそこには、白髪ロングヘアーの女性、『操縦の魔女』が上空から

僕たちを見下ろしていた。


「ん。浮気やろう」


「ちょっと待て!その不名誉なあだ名を取り消してもらおうか!!」


彼女はいつも無表情だが優しい声色で話しかけてくるのだが………、今日に限ってはトゲのある言葉を

投げかけてくる。相当不機嫌なようだ。


「ん。取り消して欲しければ私との交際を認めろ」


「……ど、どうにかなりませんか?」


「ん。どうにもならない」


「Oh……」


僕はその場で絶望した。でも、魔女が現れたおかげで

クロネさんも少し冷静に________________


「ちょっと!誰ですか!」


「ん、みんなからは操縦の魔女って呼ばれてる」


「そうですか! では、操縦の魔女さん! 優ちゃんは私が! いただきますね!」


「ん、上等、出来るものならやってみるがいい」


なってなかったね。むしろ悪化している気がするのは、僕の気のせいだよね?……

頭が痛くなった僕は、操縦の魔女が何故この場所にやってきたのか聞くことにした。


「ねぇ?操縦の魔女はどうしてここにいるの?」


「ん、そうだった、マリア、これ見て」


魔女はハッとした仕草をしてスマホを見せてきた。


「……、新たな魔女が誕生!?」


スマホに写っていたのはニュース番組の切り抜き動画がだった。サムネでは、

どでかく魔女らしき人物が写っている。


「……えっ?………………あ、灯ちゃん!?」


「……ん?知り合いなの?」


どうやらクロネさんと「灯」と名乗る女性は知り合いだったようだ。魔女の情報を

少しでも知りたい僕としてはありがたい話なので、クロネさんが知っている情報を

話してもらうことにした。……しばらく話続け、灯さんの性格を大体把握したところで切り抜き動画を再生した。撮影されている場所は22階のマンションのようだ。最新の

カメラを使っているからか、映像が遠目からでも鮮明に見える。……どうやら音声は

何かの手段で後付けされたもののようだ。


【…………あ、あんた! な、なんで生きているの!?】


【…………ま、マジ引くわ~……】


動画には茶髪がよく目立つ魔法少女と、黒髪ツインテ魔法少女がまるで幽霊でも

見ているかのように顔を蒼ざめてわなわなと震えていたが、

対照的に灯さんは不気味な笑みを浮かべている。


【貴方たち魔法少女がいてくれたおかげで私は、自分の中にある『正義』を自覚

することが出来るようになったの!! だから貴方たちには本っ当に!感謝

しているの!! 改めて、お礼を言わせていただくわ】


はきはきと喋る灯さんは続けて__________


【私の正義はね?貴方たち魔法少女を一人残らず木端微塵にすること!

………ねぇ?……凄くいい目標でしょ?】


ケラケラと笑いながら平然と言ってのける。


【ふざけるな!魔法少女を全員殺したら誰が魔女と戦うんだ!?…私たち魔法少女が

いなければ多くの一般人が殺されていたんだぞ!!】


【アタシ達は正義の味方だっつーの!】


【そうですね…………貴方の言う通りです。

だからこそ、私の正義が正しいことが証明されたのです】


怒りをあらわにして怒鳴りつける魔法少女を、冷ややかに微笑みながら、

魔法少女達へ、手痛い皮肉を混ぜ込む灯さん。


【………何言ってんの?馬鹿みたい!………ただ単にあんたの理想を語っているだけ

じゃあない!! ………あんたをもう一度ここで消して! 私は他のゴミ共を

出し抜いてランクSになればいいだけじゃない!!】


怒鳴りつけながら詠唱を唱えだす魔法少女。詠唱が終わると、上空に10mはある

魔法陣が数えきれない程出現した。


【………は、春! そんなに強くしちゃうと町が……】


【あっはははは!! 死ね! 私が本気を出せば! あんたはおしまいなのよ!!】


【あ~~~あ、これは聞いてない感じ~?】


魔法陣から町一つが消滅しかねないほどの巨大な隕石が辺り一帯に出現した。

対して魔女は小粒サイズの氷魔法を迎え撃つように投げ込んだ。……お互いの魔法が

衝突する_____結果は、


パキン


隕石が粉々に割れる音がした。…魔女の魔法によって、凍結&分解させられたのだ。


【な………なんで!? どうして!? 私の魔法が!?】


【…………ま…………マジ?】


跪き、顔を蒼ざめながら無様に叫ぶ茶髪魔法少女と、茫然と立ち尽くす

ツインテ少女。


【…………】


そんな魔法少女達に対して、興味を失った

ような眼をして見つめる灯さんは、一切の容赦無く。

________________________________________


【さようなら】


茶髪魔法少女へ、トドメの一撃を与えた。

魔女の魔法は魔法少女時代より遥かに

進化しており、元々Bランクだったのに対し、

現在はA+(固定能力を習得したAランク)

並になっていた。当然、そんな一撃をたかが

Bランク程度に防げるはずが無く、そのまま

氷魔法を受けて魔法少女の体は粉々に砕けてしまった。


【……まじかよ!……春!!】


ツインテ少女が砕けた体に寄り添い、まるで

赤子のように泣き叫ぶ。そんな様子を、

魔女は憎たらしく、それでいて少しの後悔を

馴染ませながら、もう一人の魔法少女に

トドメを刺そうと手をかざした。


ザシュ

_________________________________________

そんな光景を遠目で撮影していたであろう

撮影者は


【………正義の魔女の爆誕だ…】


   焦燥感と共に、独り言を呟いた。

_________________________________________

  明けましておめでとうございます!

今年もこの作品をよろしくお願いいたします。


しかし、前回の投稿と比べ、1週間以上空いて

しまいました。その理由としては、修正を

繰り返しすぎていたからです。自分は気を抜くとすぐにキャラ崩壊してしまいますので、

重要シーンほど、丁寧に作らせて頂きました。

(周りから見て丁寧なのかは自信がないです)


次回 第11話 『自分が思う正義』です。


まぁ、要するに戦闘のための準備回って事です。


























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