第2話

「じゃあ、ここからあと10分ぐらい歩いたら指示された場所の廃工場だ」


3人は立ち止まり、キキョウは2人の方を向く


「誘っておいてなんだけど、本当にキキョウくんが現地に行く人間でいいのかい?


もし失敗したとき君が一番危ないとおもうけど」


「あぁ、まかせろ」


(実際にはユウトにこの役回りをさせたくないが、コウヤにこの役を任せるのは不安だったからだが)


「キキョウ、気をつけろよ」


「お前らもな」




廃工場に入る指定された時間とほぼ同じ時間にきたのだが、まだ誰もいない


ガセだったのか?と思っていると、


「あぶねー時間ギリギリだー」


そういって入ってきたのは赤いパーカーで、耳や鼻にピアスをつけている、

いかにもこういうことをしていそうな奴だった


「おまえ、同業者?」


「えぇ、はい」


「ふぅーん」


赤パーカーは俺を頭のてっぺんからつま先までをなめるようにしてみてくる


(服装とか不自然なとこあったか?

まずい、こういう裏の人間がどんな服着るかとか考えてなかった)


と身構えていると


「そのファッションちょーイカスね」

「あ、ありがとうございます」


赤パーカーと軽いやり取りをしていると


バゴぉおん


扉を豪快に開けるタンクトップを着たスキンヘッドのゴツい体つきをしたおっさんがそのまま堂々となかにはいってくる

その露わになっている二本の腕には入れ墨が


「どっちかが依頼主なのか?」

「いや、どっちも違いますけど」

赤パーカーが答える


時刻は既に約束の時間となっているが外から人の気配はしない

(釣りだったのか?)


と、そのときだった


「やあ、私が依頼主のビェントだ」


一切の音を出さずにこの部屋に現れたビェントと名乗る人間は、


緑の肌をした人間の顔のお面をつけて宙に浮び、

3人を見下している



(緑の面、”運び屋”か)


運び屋とは

超能力者になるために必要な液体の入った瓶、能力薬を運ぶことを専門としたアリエルの外部組織の総称である


アリエルは階級ごとに違うお面をつけて階級をあらわしており、


現状、緑が運び屋、白が正規メンバー、ということが確認されている


「今から君たt,」


「おい!そんなんいいからまずは能力をよこせ!!」


おっさんがビェントの話を遮り怒鳴る


「能力薬の投与は説明が終わってからですよ。

私の説明を遮らないでください、殺しますよ」



場の空気が凍る

圧倒的強者の威圧を肌でかんじる


「す、すまなかった。」

おっさんはすぐさま謝罪をした


「では、きみたちに仕事の説明を、

あぁ、いまから口頭で伝えますがメモや録音等はしないでくださいね」


ビェントの説明を要約するとこうだ


今から3人は別々のロッカーへといきパスワードをいれて中からカバンを取り出す


その後、そのカバンをまた別の場所へと移動させろとのことだった


報酬の金はカバンの前ポケットにはいっているからそこから取るとのことだが、


カバンの中身は見てはならないとのことだった


(カバンの中身はなんだ、、能力薬?それとも爆弾?金?中身を確認したいとこだけど、、)


と思考を巡らせていたときだった


ドチャッッ


水分をふくんだような鈍い音


目をやるとそこには、


(ユウト!リクヤ!)


傷を負い血を流し横たわる二人の姿が


「こいつらはなんだ、ジェイク?」


ジェイクと呼ばれた、2人を運んできた緑色の面をつけたスーツの男がいう


「リーダー、こいつらここの周りに隠れてたんすよ。応募者の誰かとグルと見るのが自然ですけど、どうします?」


「偶然の可能性は?」

「よっぽどないっすね、武装してたんで。俺等を倒そうって魂胆なんすかね?」



2人とも生きてはいるようだが、出血がひどい


早く助けなければ死んでしまうだろう



(最悪の状況だ、なんとか2人を救わないと)


ビェントはこちらに目を向けてきた


「お、おい!おれは違うぞ!!」

おっさんが叫ぶ


「、、、そうですねぇ、こうなった以上は、、、」


数秒思考したあと


「皆殺し、ですかね」


スパッッッ


直後、リクヤの首が切り離されその勢いで赤パーカーの目の前に転がった


「うっっ、うわあああああぁぁぁ!!」


あまりの恐怖に赤パーカーは出口へと一目散に走る


ズパァァッッ


背後から体が両断される

切断面から内臓がこぼれおちる



お"っっお"えっっ

唐突な吐き気がキキョウを襲った



おっさんは自分の危機を悟り、

「お、おれは違う!!神にも誓えるおれはあんたらを裏切ってない!!」


必死の命乞いを始めた


「えぇ、この二人の年齢は高校生か大学生程度、あなたとは年が離れすぎていて接点がなさそうだ」


この言葉におっさんは目を輝かせる

「なっ、なら!」

「でもダメだ」


スパッッ


おっさんの首が落とされる


血が噴水のように吹き出し、俺の体を濡らす


「疑わしくは罰せよ、これ私の座右の銘なんだよね」


と、いうとビェントは真正面からこちらを見て


「君がグルなのかな?正直にいってくれたらこの子だけは見逃してあげなくもないいよ??」


その言葉を聞きすぐに答える


「おっ、俺がグルだ!だからそいつを、ユウトを殺さないでくれ!!そいつには帰るべき場所が、!!」


パァンッッ


風船の弾けるような音とともにユウトの体は弾け飛ぶ


肉片が周りへと飛び散りグチャッと言う水っぽい音を出しながら壁にへばりつく



「なーんてね、さて残すは君だけど、って、、」


ビェントがキキョウのほうを見ると彼は気絶していた


(なんだよ、、、じっくりいたぶってやろうと思ってたのに、、、)


と、残念がるビェントにジェイクが話しかける


「リーダー、もうこのやり方は無理だ。


こんなやつらがでてきた以上、超機にもバレかねん。」


「、、、シノノメ、あいつさえいなければ俺たちだけで事足りるんだが、、、」


「しかたない、他の方法を考えるとしよう。

さっさと撤退しよう」


(さて、気絶したアイツを殺すとしますか)


キキョウの方へと目線をやる


いない




「おい、ジェイクあのガキはどこやった?」


返事はない


「おいジェ、」


ビェントの言葉はそこで止まった



ジェイクのいたほうを見てまず目に入ったのは、首のなくなったジェイクの体


そのまま目線を動かすと白井 桔梗の姿


手元をみると、ジェイクの頭部抱えるようにして持っている


「てめぇ!!」


ビェントは右手を横に払う


するとその軌跡をなぞるように強烈な風の刃が飛んでゆきキキョウの首へと迫る


しかし次の瞬間には数メートル先へとキキョウは移動していた


(異常なまでのスピード、まさかこいつ!)


ビェントはある一つの可能性にたどりつく


「まさか!キサマ、天然の能力者か!?」


答えはかえってこない



「、、t、n、 、ん」


(なんかいっている?)


ビェントは耳をすます


「のう、sy、、せ、めt、、し」


(能力者、殲滅?マズい、くる!)


すぐさま自身の風の能力を使って目の前に渦の盾をつくった


瞬間、凄まじい勢いで炎の玉が飛んでくる


炎の玉と衝突した渦の盾は消え去る


さらに連続して炎の玉が飛んでくる


「くっっ!」


ビェントは周りに風を巻き起こした

直後、火の玉と衝突し爆炎が一体を覆い尽くす


廃工場の天井を突き破り、外へとでる

「全員、即座に撤退行動だ!超機関があらわれた!」




取り残されたキキョウは一人つぶやく

「対象の撤退を確認、接続を解除します」


直後、電池がきれたように力が抜けるキキョウ

しかし、その体は何者かにより倒れることはなかった

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