第6話実験室の小さな悪魔

やっと授業が終わった。座学は基本言語学以外は暇なので実験の構想を練るための時間にしている。


ヒカリの放課後の日課は理科室の生き物の世話と研究だ。


今日も理科室に向かうのだが、どうやら話し声が聞こえる。


「星宮、良い加減理科室を爆破するのはやめてくれ」


どうやら一年担任の小瀧先生と玲ちゃんのようだ。


「爆破なんてしてないですって、ほんのちょっとぼーん!ってしただけです」


「それを爆破って言うんだ」


たしかにここ数日理科室が焦げ臭かったような気がする。


「こんにちはー」


「ああ、轟か。今日も早いな」


毎日のように通っているため来る時間帯を覚えられてしまった。


「あ!ヒカリちゃんだ!どうしたの?」


玲ちゃんの顔がぱぁっと明るくなった。相変わらず玲ちゃんの明るさには敵わない。


「ほーレーみーやー、お前はまず補習だぞ」


「えーっ!良いじゃん聞いたってー」


玲ちゃんは顔をぷくっと膨らませて怒ったような顔をしている。正直言って可愛い。


実験室の鍵を開けると、玲ちゃんが興味津々な目でこちらを見てきた。


「ねえねえ、その実験室って何があるの?」


「知りたい?」


ヒカリはニヤリとして聞いた。


「知りたい!」


「じゃあ入ってみようか」


「おい!星宮は補習だって言って、、、」


「まあまあ、良いじゃないですか」


「ぐぬぬ、、」


なんとか小瀧先生を言いくるめて玲ちゃんを実験室に入れた。


「ちょっと散らかってるかもしれないけど、大丈夫だよね?」


パチ、と実験室の電気をつけると、物がぐちゃぐちゃに散らかっている光景が目に飛び込んで来た。


「ちょっと散らかってる、、、?」


「轟、いい加減片付けてくれ。と言いたいところだが轟以外誰も使ってないしな」


実験室にはいろいろな機材や薬品が置かれている。


「ねえねえ、このロボットはなに?」


「あ、それは、マーメイドちゃん1号だよ」


「マーメイドちゃん1号?」


「くじら先輩の歌を参考に波長を合わせたんだけど、あんまり上手くいかなくてね」


(参考のためだけに3時間歌わせたのは黙っておこう、、、)

「この写真は?」


玲が指差す先には、家族写真が置いてあった。


「家族写真だね」


「この女の子は?」


両親の他にもう1人写真にはヒカリと一緒に写っていた。


「お姉ちゃんだよー、名前は轟ヒビキって言うんだ」


「へぇー!お姉ちゃんがいるんだ!」


「うん、わたしよりマッドサイエンティストだけどね」


そこまで言い終えるとヒカリは突然の腕を掴んで耳元で囁いた。


「つーかまーえた♥」


「ひぇ!」


「今日も実験に付き合ってもらうね!」


こうしてまた実験の被害者が増えることになった。

続く。

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