第2話:現象

ううたろうが無くなった日から4年が経った。

私は13歳、中学生1年生だ。仲の良い友だちもできて、ある程度は充実した中学校生活を送っていたので、ううたろうのことは忘れていた。

そう、ううたろうはまだ見つかっていないのだ。然し、そんなのもう些細なこと。ううたろうが無くなってから一ヶ月位のときまでは、寂しさは残っていたけど、段々とその状況にも慣れてしまった。

ふとううたろうのことを思い出した。同じ部活(美術部)の同級生でクラスメイトの浅井麻衣(アサイ マイ)

と一緒に下校していた時だったので、麻衣にううたろうの話をしてみた。

「ヤクルト1000を潰して、上の部分に裂目‥‥‥‥って、どんな形やねん!笑」

ナイスツッコミ。自分でも身近でわかりやすい表現は無いのかと思う。

「でも、逸れっきり出てこないんやろ?知らん内に片付けられ、棄てられたりしたんじゃ‥」

有り得なくもない。当時の私が聞けばショッキングでしかないだろうが、今であれば受入れられる意見だ。


「そういえばな、最近縫いぐるみ関連の変な噂耳にしたねん。まあ、気にするほどじゃないけどな」

麻衣は噂話等に興味ないタイプではあるが、ちょっと気になったので聞くことにした。

「ウチらが通う中学校の校区内で2週間くらい前から、ピンクの布と綿が至る所に発生してんねん。横断歩道、歩道橋、畑、バスかタクシーの中‥‥‥あ、この前なんかウチの姉ちゃんの友達の家の庭にも発生してたで!!!ウチ見せてもらったんよ。写真あるで。」

麻衣はスマホを取り出し、それを見せてくれた。

何も植えられていない植木鉢の右横に、そのピンクの布と綿でできた塊が無造作に置かれてあった。サイズ的には、なんとか両手に全部乗せられるくらいだ。私は麻衣に尋ねる。

「このあと、どうしたの?」

「あぁ、これ?ゴミ箱に捨てたらしいわ。まあ、あっても邪魔なだけやろうし笑他の場所で発生したやつも、大体そんな末路やな。一体誰がどんな悪戯企てとるんやろ。」

悪戯‥‥‥‥と考えるのが現実的だけど、だとしたら相当珍しいタイプのものだな。



笑い話をしながら私と麻衣は下校する。2人急に足を止めた。

「あれってもしかして‥‥‥」

「あぁ‥‥‥‥‥」

ご察しだろうか。先程麻衣が話していた、例の塊が道の上に落ちていたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る