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怜-𝑟𝑒𝑖-

第1話(単話予定)

「フフ…」


「きゃぁぁぁぁぁぁ!」


………


スマホからは、今日も物騒なニュースが流れてくる。

リポーター「5日前から、永都市(えいとし)郊外周辺の女性が相次いで失踪している事件について、警察が現在調査中です。現場からの中継をどうぞ。」


赤髪の少年「今回は、女性失踪事件か…物騒なもんだな。」


青髪の少年「海斗、お前ネットニュース好きだよなぁ。てか、最近のは動画まで付いてんのな。」


ネットニュースをスマホで欠かさず確認する今風の赤髪高校生、赤司海斗。つまり俺だ。俺に話しかけてるのは青井優太ってやつ。時々めんどいが基本いいやつだ。


最近巷を悪い意味で賑わせているこの女性失踪事件。かなり気になる。


海斗「きな臭いな…そう思わないか?」


優太「何が?」


海斗「だってよ、この失踪事件、女ばっかりなんだぜ?しかもよ、昨日からうちの学校の女子生徒も何人か居ないって話だぜ?」


優太「うちの生徒?考え過ぎでしょ…ただ体調不良って説もあるでしょ?」


海斗「まぁな…それもそうだけど。」


そうこう話している内に、先生が教室に入ってきた。


先生「お前らー、席につけ!」


海斗「…」


俺はその日、授業には身が入らなかった。ずっとニュースのことが気になってた。

気づけば放課後になっていたんだ。

ふと、先生が話しかけてきた。


先生「おい赤司!お前今日はずっとぼーっとしてるな!いい加減しっかりしなさい!」


海斗「あ、すいません…」


先生「…そういえばお前、今日欠席してる前田菜奈の近くに住んでたよな?」


海斗「え? まぁ、そうですが…あれですか?プリント持っていけ的なやつですか?」


先生「そうだよそれだよ! お前はもの分かりが良いな。もうパンパンになってるだろ?あれ持ってかないとな。」


前田菜奈は、俺の通学路の途中に住んでるクラスメイトだ。とても明るいやつだったが、最近休みがちになっていた。


海斗「先生、前田のやつっていつも体調不良で休んでるんですか?」


先生「まぁ、事情があるんだろうが休みの電話は毎日来てるからなぁ…あんまり事情は調べてないんだ。まぁ、それはおいおい調べる。取り合えずプリント持ってってくれよ。」


そんなこんなで、俺は前田の家に行くことになった。

前田の家に着き、チャイムを押す。


ピンポーン…

ピンポーン…


いくら待っても返事がない。留守だろうか? 仕方ない、プリントはポストにでも入れようと思い、ポストを探す。

ポストは無事、見つかった。しかし、そこには溢れんばかりの投函物が入っていた。


海斗「こりゃもう入らないよな…」


そしてそれは、長い間ポストに手が付けられていない事を意味していた。


何となく嫌な予感がした。だから俺は、ダメ元で玄関に手をかけ扉を開けようと試みた。すると、何と開いた。しかし異様な重さだ。何が重さの原因なのかは、中に入るとすぐに分かった。血だらけの死体だった。体の真ん中に大きな穴が開いており臓器が露出していたので、死体であることは明らかだった。

その直後だった。


「きゃぁぁぁぁぁ!」


聞き覚えのある声が2階から聞こえた。きっと前田菜奈の声だ!俺の足は恐怖心に震えながらも、昔から好奇心と勇気には自信がある男だ。勇気を出し、一歩踏み出した!その後は流れるように2階に到着した。

そこで見た光景は、想像を絶するものだった…


「フフヒヒヒヒ…若い女の汁は美味いのぉ…」


目の前に居たのは前田菜奈と、ノミ男だった。ノミ男は、前田に口から生えた管を突き刺し、体液をすすっていたのだ!!!!


俺に好奇心と勇気、それは確かにあった。しかしながら、目の前の状況に恐怖心が込み上げてきた。逃げなければ…やられるかもしれない!!

しかし、すり足で後ろに下がろうとした時、ノミ男に見つかってしまった。


ノミ男「あぁ!? なんだテメェは? 俺様の食事タイムに割って入ろうとは、いい度胸じゃねぇか、あぁ!?」


ノミ男が、体の腕に相当する触覚を俺に突き立ててきた。みるみる内に流れる大量の血液。


海斗「やばくねぇか…コレ…」


ノミ男「あーあ、男は趣味じゃねえんだよなぁ。やっぱこいつは殺すだけだな。」


…血液が流れ落ち、意識が遠のく中、俺は後悔した。

前田菜奈を救えなかったこと、

何もできずただむざむざとよく分からない生物に殺されること、

自分の不甲斐ない姿を俯瞰して見ていた。まるで幽体離脱したかのような感覚だった。


-「お前は、本当にそう感じているのか?」-


死を予感したその時、謎の声が頭に響いた。その声は、こう続けた。


-「お前の本当の想い、一番強い想いは何だ? 私はお前の思考に興味を示している。体を抉られた死体を見てなお好奇心を持ち合わせているお前の思考に。」-


-「お前の真の想いを開放してやろう。さすればお前は生き残るやも知れぬ。」-


声の主がそう語りかけた途端、俺の中の好奇心が急激に昇り立ち始めた。それはいきり立つ赤龍の如き荒々しさを宿していた。そのイメージは、まるで鋭い刃を彷彿とさせた。そう思った瞬間、目の前にイメージエネルギーの具現化が現れ、それが収束し俺の手には赤い刃が握られていた。血も止まっていた。


ノミ男「…あぁ!?なんだテメェ?そんなもんどっから出しやがった? まぁいい…いい加減死ねや!」


ノミ男の振り下ろす触覚に対し、俺は咄嗟に手に持っている赤い刃を振った。

するとノミ男の触覚を切り裂き、その余波でノミ男の全身をも切り裂いた。

ノミ男は触覚をもがれていた。


ノミ男「ぎゃぁぁぁぁぁ!? 俺の…体がぁぁぁぁぁ!????」


海斗「はぁ…はぁ…いい気味じゃねぇか、もう終わりにしようぜ。」


ノミ男「ま、待てぇ!! 待ってくれぇ! お前を殺そうとしたのは悪かった…許してくれ! 同じ人間じゃねぇか!」


海斗「はぁ? お前のどこが人間だってんだ!」


ノミ男「ほ、本当だ! 俺の体がこうなっちまったのは、数日前からなんだ!女をストーカしていて全てを掌握したいといつも考えていた。その思いがつのって気がついたらこんな体になっちまってたんだ!」


海斗「…それが本当だとして、何でお前を許す義理がある?お前は前田菜奈とその家族を殺しただろ!」


ノミ男「いやぁ…ばれないと思ったんだがなぁ…家族の汁を吸ってる間、この小娘には怪しまれぬよう電話応対を任せていた。そうすれば見逃してやるとな。だが、丁度他のやつの汁を吸いつくしたもんだから、腹が減っちまってなぁ…こいつも喰っちまった、ハハッ」


海斗「外道が!!!お前には生きる価値などない!」


俺は怒りに任せ、刃を振るった。


ノミ男「ま、待て!、ぎゃぁぁぁあっぁぁ!!!」


ノミ男は、息絶えた。


血まみれの家を後に、この謎の力のこと、ノミ男の突然変異のことを考えながら、俺はとんでもない運命に巻き込まれてしまったことを嘆いた。

今後どうなっていくのか、それは俺にも分からない。


海斗「…取り合えず、警察に電話するか。」


-終-

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