未来を歩く君と僕。


「え!!」


隣の女性はすごく驚いていた。

音楽に疎い僕は全く分からなかった。


「あの〜この人って凄い人なんですか?」


「知らないんですか?今10代を中信に大人気なんですよ?この人の過去の恋愛を歌った歌が大ヒットして‥」


「そうなんですね、初めて知りました。」


どうやら僕は10代では無いらしい。


「私実は高校が近くの裏原高等学校で、学生時代の記憶って意外と忘れちゃうと思うんですけど、高1の記憶は今でも鮮明に覚えてて私の報われなかったラブソングを一曲”ダイスキ”」


そうして彼女の1番売れているらしい曲が始まった。


僕は逆張りでめんどくさいタイプなんだけどそんな俺でも分かるぐらいには良い曲だった。


「ありがとうございました〜!」


パチパチ!!!!


拍手喝采が起こった。

もちろん僕もありえないぐらいのめり込んでいた。


「やっぱり私はこの街が好きだなって思いました。

今日ぐらいみんなが笑えると良いな〜なんて‥

次やる曲はそんな私でも辛いだけじゃ無いって気持ちで作った曲です。」


その時、僕は萌さんと目が合った。


「そこのお二人さんみたいなカップルをイメージして作った曲なんで!」


え?




どうやら俺たちはカップルに間違えられたらしい‥


「ち、違いますよ〜ね、ねぇ?」


「は、ははい!私達たまたま席が隣なだけで‥」


「あ、そうなのか‥ごめんなさい。つい、そんな風にお似合いに見えて‥

じゃあ、改めて聞いてください。”I love Xmas”」


そう言って始まった曲はさっきとは違い少し明るい曲だった。


「♪〜終わったままの世界、止まったままの時計、君と2人歩けるからもう、大丈夫〜」


そんな歌詞に心動かされそうになった。

そんな時、隣から何が聞こえた。


「‥‥。」


そう彼女は曲に感銘を受けて泣き出していた。


確かに、この曲は俺を歌ってるように思えた。


「♪〜大っ嫌いな日が好きになる瞬間、私のモノクロの世界は色を付けていく〜」


__僕はクリスマスが嫌いだ。


いや、今この瞬間。







__僕はクリスマスを少し好きになった。


「ありがとうございました〜早乙女萌でした〜この後も楽しんでください!!」


そうして早乙女萌のライブは終わった。


泣き出してしまった彼女の隣気まずいが頼んだ紅茶セットが届いた。


ーそんな時‥


「あの〜さっきはごめんね、2人とも‥」


萌さんが俺たちに話しかけてきた。


「い、いや!」


「全然大丈夫ですよ!」


2人の声が重なってしまった。


「お詫びと言っちゃ何だけど、2人の紅茶セット奢らせて?

あ、あと私の事知ってるならサインでも写真でも何でもするけど?」


「え!!いいんですか?

そ、その私、萌さんの大ファンで!!!」


さっきまで泣いてたとは思えないほど興奮していた。


「ありがとう、あなたみたいな可愛い子に聞いてもらえて嬉しいよ。

じゃあ写真撮ろうか?」


「は、はい!」


「あの〜だったら僕写真撮りますよ?」


この空気の中無視ってわけにもいかない気がした。


「ありがとうございます。」


そうして、写真を撮ってあげた。


僕も写真を撮ってもらいたかったが、言い出せずにいた。

本当にチキン野郎だ僕は。


「本当ごめんね、この後も楽しんで!」


「あなたは、写真撮らなくて良いの?」


「あ、僕はその今日まで萌さんの事知らなかったし。」


咄嗟に否定してしまった。

何やってんだか‥


「でも曲聴いてなんだか感銘受けてる感じだったよね?」


「はい、その俺嫌な事あってクリスマスってあんまり良い思い出無いんですよね。

でも、今日ここにきてちょっとだけ好きになりました。」


「そっか、良かった。じゃあ君も写真撮ろうよ!!」


彼女のおかげで萌さんと写真を撮る事ができた。


「じゃあ、私これから実は近くのホールでライブだから行かなきゃ!

今日は本当に聴いてくれてありがとね!」


そうして萌さんは嵐のように去っていった。


「あ、あの。」


「はい!」


彼女から声をかけられた僕は思わず声が裏返ってしまった。


「私、佐野恵理香さのえりかっていいます。今ら高校2年生です。」


そう言って律儀に自己紹介をしてくれた。


「あ、同い年‥ですね、僕は柊斗真ひいらぎとうま‥です。」


「そっか、良かった同い年で。」


「僕もです。」


そうして僕たちはカウンターでいろいろな話をした。


「私も実は、中学時代にクリスマス嫌な事あってから、すごく嫌いになっちゃって〜この空気感とかも、そもそも文字見るだけでも。」


「あ、凄いわかります。

僕も嫌な事あってからずっとクリスマスなんて無くなれって思ってて‥」


「斗真くん。」


「はい?」


「同い年なんだし敬語やめない?」


「う、うん」


彼女は恵理香というらしいな。

僕と同じクリスマスに嫌な思い出がある人なのか。


「私さ、クリスマス嫌いだったけど今日勇気だして出かけて良かったな。」


俺も勇気を出そう。


「あ、あの、さ今日この後なんか予定ある?」


「え?」


恵理香はとてもキョトンとした顔をしていた。


「良かったら一緒にイルミネーション見に行かない?」


この数年間天罰受け続けたしそろそろ良いだろう。

そう思って声をかけてみた。


「いいよ。むしろ私なんかで良いの?」


「うん。恵理香と一緒に見たい景色があるんだ。」


そう言って俺たちは店を出た。

帰り際、店員さんに次はテーブル席用意しますね。と言ってくれた。


店を出た後も他愛もない話やお互いの学校の話をした。

僕と恵理香は似てると思った。


でも、2人ともクリスマスにどんな嫌な思いをしたかは聞かなかった。


聞かなくて良かったんだと思う。


「いやぁでも、萌さんにカップルに間違えられちゃったね。」


「うん。斗真くんはどう思ったの?」


「え?」


「カップルって思われてどうだったのかなって。」


そう耳に囁かれた。


「正直、嬉しかった。」







「私も。」






心拍数が上がりすぎて他の音が何も聞こえなかった。


「あれ?斗真!??!?」


「あれ?恵理香?!?!」


そう言って声をかけてきたのは姉の茜と彼氏のタカくんだった。


「お兄ちゃん!?!?」


1番大きな声を出したのは恵理香だった。


「まさか、タカくんの妹とうちの弟が一緒に居るとは‥」


どうやら恵理香はタカくんの妹らしい。


「なんだ斗真〜彼女居ないって俺に言ったくせに〜」


「恵理香も何も言ってなかったよね‥」


世間はどうやら狭いらしい。


「姉ちゃん、違うんだよ、彼女じゃなくて

今日好きなった人なんだ。」


思わず口にしてしまった俺。


「わ、私も‥」


多分この空間、いや日本で、いや世界中の中で1番恥ずかしいことを言ったのかもしれない。


でも‥


「そっか、良かったな斗真。

まあでもタカくんと気まずくなるから別れたり泣かすような事するなよ〜」


そう言って茶化しつつも少し嬉しそうな顔をしていた。


2人とお別れをした僕たちは少し気恥ずかしい気もしたけど‥


「あのさ、これからもよろしくね、恵理香。」


「うん。私こそ。」


そうして僕達は手を繋いだ。


リア充や、クリスマス商戦で金を使ってもらいたい人たちのため、イエスキリストの事なんかどうだって良いのにただ騒ぎたい人たちのためのものだ。


でも









__私達はクリスマスが大好きだ。







ー完ー






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メリークリスマス🎅🎁🎄

はっけよいのこっ太ロースより。

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Xmasが嫌いな君と僕。 はっけよいのこっ太郎 @hakkeyoi_nokottalow

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