第47話 ヤンヤン、戦後を考える!

 コサック戦終わり!

 いやあ、あっという間でしたね。


 私はしみじみしながら、残る陸上戦艦の艦橋にコサック軍のバックパックをミサイル代わりにして叩き込んだ。

 次々に、船が炎に包まれる。


 もう、空を飛んでいるコサック軍MCはいない。

 滞空できるぶんの燃料は使い切っているだろうし。


 地上に降りてしまったら、いい的だ。

 私は残った地上のコサック軍をパラパラとライフルで掃討しつつ着陸した。


 おっと、敵軍からタイヤを回収!

 MCは自立できないからね、バックパックに取り付けるのだ。

 これでよし。


 コサック軍は全滅しました!

 ただし、環太平洋連合艦隊も半壊しました!


 MCに至っては57機中で45機が落とされたらしいから、大打撃では!

 陸上戦艦も二隻が破壊されてる。


 ハオシュエン大佐のガンガルムと七人のイケメン、それからグワンガン隊とロアン中尉とウーコンとサーコン。

 後はなんかどうにかこうにか生き残ったのが二機。

 それだけ。


 パイロットほぼ全滅ではないか……?


「いや、大したものだな……!! どうしてシートベルトなどするのか、グワンガンの天井にクッションが敷かれているのはなぜなのか、天井が低すぎないかと思ったが、完全に納得した!!」


 ガッシャンガッシャン音を立てて、MWが走ってくる。

 その上にはリー元帥だ。

 また生き残ったのね……!!


 まあ、グワンガンに乗ってるから当たり前なんだけど。

 MWを運転してるのは、どういう組み合わせなのかスバス二等兵だった。


「ヤンヤンさーん!! 無事で良かったー!!」


「うおー!」


 年頃の男子が迎えてくれることのなんという嬉しさか。

 私はスアに降着姿勢を取らせると、コクピットからぴょんと飛び降りた。


「スバスさーん! 出迎えご苦労~!」


「おーい、元帥を無視するのではない……。それにグワンガンのクルーは我輩の一存で二階級特進させてある」


「えっ! 二階級特進というと死……!?」


「死んでおらんわ!! なあスバス上等兵!」


「はい! みんな元気ですよ!!」


「ほんと!? よかったー!」


 めちゃくちゃ人が死んだし、顔見知りのポンチャック曹長も開戦早々星になったけど、生きてる人が生きていることは大切だもんね。

 MWに乗せてもらって、私はグワンガンに帰投した。


 回収用MWが入れ替わりに出て行く。


「ヤンヤン、ナイス!」


「すげえよヤンヤン!」


「俺もヤンヤンに告っちゃおうかな!」


 MWに乗った整備士の人たちがそんな軽口を言っていた。

 これは……モテ期では……?


「危機感を感じるよ……!! 僕はもっと昇進してヤンヤンの目に止まるようになりますから!」


「えっ!? スバスさんそれは愛の告白では!!」


 というかこの人、世界の屋根の下の町で私を口説いてきた一人なんだった。

 うーむ、大事に大事に育てよう……!!

 彼が最後の保険だ!


 グワンガン艦内でも私は大歓迎!

 ウーコンとサーコンは先に戻ってきていて、シェフが作ったお料理を必死の形相で運んでいるところだった。


「うおおお忙しいっすー!!」


「戦争から生還したらウェイターやらされてるすよー!!」


「二人ともちょっと飛んでちょっと撃ってから、撃墜されたふりして降りたでしょ」


「ギクッ」


「ギクッ」


「働きたまえよー」


「く、くうーっ! 僕ら、中尉に昇進したっすよ!!」


「偉いすよ!」


「私は大尉だねえ……」


「うっ」


「うっ」


 それにしても昇進の大安売りだなあ……。

 三ヶ月で二等兵から大尉になってしまった……!!


 ちなみにパイロットとしては大尉で頭打ちらしいので、他の細かい仕事がぜんぜんできない私の昇進はここで終わりなのだ!


 そもそも、大尉だけどお給料は伍長の頃の金額しかもらってないからね……。


「おおヤンヤン! 飲むぞ! 飲み会だ!」


 艦長が艦橋から食堂にやってくる。


「まだ作業服を着てるのか! さっさとシャワーを浴びてよそ行きに着替えろ! 宴会だぞ! 今日ばかりはグワンガンはお休みだ!」


「な、なんですって!」


「戦勝パーティだぞ。ヤンヤン大尉に出席を命令する!」


 副長がニヤッと笑ってそんな事を言った。

 艦長は大佐になったし、副長は中佐になったらしい。

 大出世じゃん!!


 シャワー室に飛び込んで、服をぽいぽいっと洗濯機に放り込み、ざーっと浴びる。

 うひょー!

 疲れた体にシャワーが気持ちいい!


 そして体を拭いてよそ行きに着替える……。

 私の一張羅、可愛いワンピースだ!


 私が登場したら、そこに居並ぶみんなが一斉にクラッカーを鳴らした。


「本日の英雄の登場だ!」


「ヤンヤーン!」


「かっこよかったよヤンヤーン!」


「酒うめー」


「乾杯前に飲むなバカ!」


 賑やか賑やか。

 料理を全部作り終えたシェフもいるし、整備長と整備士たち、機関長と機関士のみんなもいる。


「あれ? エンジンは放っておいて大丈夫なの?」


「ちょっとの間ならいいだろ」


 機関長は豪快なのだ。


「では諸君! グラスを手にしたか? 行くぞ! クソコサックどもとの戦争の勝利を祝って!! 乾杯!!」


 かんぱーい!!

 食堂に私たちの声が響き渡るのだった。


 もちろん、食堂だけには収まりきらない。

 なので通路から艦橋まで溢れ出していて、みんながお酒を飲んでいる。


 私はまだお酒の味が苦手なので、シェフ謹製のジュースをいただくのだ……。


 あ、なんか通信機がピコピコ言ってる。

 でも私以外はみんな酔っ払いなので出られません。


 ま、いつものことだよね!

 さてさて、戦争が終わったらどうなるんだろう。

 いや、まだコサック共和国をやっつけただけなのかな。


 じゃあまだまだ戦争は続く?

 どうなんだろうなあ……。

 今後なんて未来のことは、私には全然わからないのだった。


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