第41話 ヤンヤン、伏兵と交戦する!
なんか途中でコサック軍の機体が出てきたんだけど!
知識だけはあるウーコンとサーコン曰く、
「伏兵っす!」
「あいつら、こっちに浸透してMCを隠してたす!」
「なるほどー」
艦隊の三番目にグワンガンがいたから、伏兵とやらが出てきたのに対応させてもらえない。
戦闘が始まっているのに、艦長がぶらぶら食堂までやって来て、チキンなんか食べている。
「いいんですか艦長ー。なんかコサックが襲ってきてるんでしょ」
「いいんだよ。俺らがどうして四隻のうちの三隻目なのか分かるか? 何かあったら、四隻目が俺らを撃つためだよ。スタンドプレーもさせたくないから、三隻目だ。つまり、嫉妬だ嫉妬」
あーん、とチキンを口いっぱいに頬張り、ビールで流し込む艦長。
戦闘中にアルコールだ!
やる気ゼロだなー。
私は艦橋へ遊びに行った。
オペレーター席ではウェーブさんが爪を磨いているし、操舵手の人は足で操舵してるし、レーダー手さんは「あっ、一人死んだ。また一人死んだ!」とか戦況を自分だけ眺めては悦に入っている。
「レーダーさん」
「おっ! 我らがエース! どうしたんだい。俺に戦況を聞きたい? いいとも!」
「話す前から!! まあそんなものです。どうなんですかねー」
「うんうん、我が輝かしき環太平洋連合は、甲板にぎゅうぎゅうに乗せてあったMCがわあわあと出撃したところだ。片っ端からコサックのデスマン-3に落とされているぞ。練度も基本性能も違うわな」
「ひえー、なんであれに負けるんですかね」
「おお、言うねエース!! 一応、コサックは制御系に純血連合謹製AIを使っているからな。うちはそのデッドコピーをどうにか使えているレベルだし、システム言語も純血連邦の共通語である北欧語だ。連合語に翻訳すらできてないくらい、技術力に格差があるんだなあ」
「嬉しそうに仰る~!」
「俺、支部のエリートたち大嫌いだもん。でも、そろそろヤンヤンが出ないと、一隻目落とされちゃうかもな。二隻目はガンガルムだから、あの七人がどうにかしちまうかも知れないが…犠牲は出るかもなあ」
つまり、本来はそれくらいコサック軍と連合の戦力差はあるらしい。
純血連邦のただ一国なのに、連合を圧倒するとはー!
「仕方ないので出てきまーす」
「おう、行ってらっしゃい! レーダーを見る限り、本当にごく普通のデスマン-3だ。ヤンヤンには物足りないかもな」
「そうですかねー」
そうだった!
出撃した私は、グワンガンからガンガルムに飛び移り、そこから整備長謹製の長距離砲をパカスカ撃った。
面白いようにコサックの機体が落ちる落ちる。
こっちに気付いた瞬間に撃つし、避けようとしたら避けた先に撃っておけば勝手に当たる。
この人たち、本当に行動が読みやすくて楽なのだ。
私はシェフが作ってくれたハニーレモネードをちびちび楽しみながら、片手間でコサック軍を撃墜していった。
FM弾でこっちを狙ってきたら、ギリギリでもう片手に持ってるマシンガンを使って撃ち落とせばいいし。
『いいぞ、ヤンヤン伍長! どうだ! ガンガルムに来ないか!』
「あ、いや、遠慮しておきます……うへへ」
私は通信先のハオシュエン大佐にペコペコ頭を下げつつ、ノールックで最後のコサック機を撃ち落とした。
あ、お仕事終了。
ちょうどレモネードも終了。
帰ろ帰ろ。
ぶーんと帰投するスア。
「どうだった!」
整備長が長距離砲の感想を聞いてきた。
「ひたすら弾速が速くてまっすぐ飛ぶから、やりやすかった! でも的に当たる時、ちょっとちっちゃくなってましたよ」
「わはは! FM弾対策にこいつ自体が螺旋を描いて動くからな! 空気抵抗で表面がガリガリ削れるんだ!」
ほえー。
だけど螺旋を描いて回っているから、一発でコクピットを撃ち抜けるのは凄くいいね。
ちなみに同じものをウーコンとサーコンも撃ったけど、一発撃つたびに砲口が大暴れするのでとても使えなかったらしい。
もしかすると、ヴァルクは非力だったりするんじゃないだろうか。
スアの本体、コサックのデスマン-3だもんねー。
ちなみに落とされた機体がたくさんあったらしいけど、コサックの狙いが下手だったらしくて死亡者が三人しかいなかったらしい。
みんなデスマン-3を回収し、好き勝手に乗り始めている。
「おいヤンヤン、第一艦からお礼の言葉が届いているぞ。『勝利を告げる虎よ、貴女に栄光を!』なんだこりゃ。歯が浮くな」
艦長が顔をしかめている。
その後、次々に第一艦に搭載されていたMC乗りたちからの通信があった。
『我らを助けてくれたエースはあんたか! ひゃあー! 小さい女の子じゃねえか! すげえなあ! ありがとうな!!』
『デスマン-3すっげえ乗りやすいんだが! フィーリングでやってもAIが修正してくれるわ!』
『エース様のお蔭で俺らの戦力も高まったからな! 今度は俺たちが助ける番だぜ!』
私……モテてる……!?
いや、ここでモテを自覚すると悲しいことになる。
私は学んだんだ。
悲観的に行こう……。
ちなみに、第一艦に乗っていた艦長より偉い将軍は、「わしの面子を潰しおって……!」とかぶつぶつ言ってたらしい。
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