第40話 ヤンヤン、再び華国へ出発する!
なんとグエン共和国支部にあった陸上戦艦三隻と、後は改修されたグワンガンの艦隊で華国へ向かうことになった。
MCも総勢で60機いるらしい。
60機……?
私がコサック軍の華国要塞で仕留めたMCは200機を超えていたような……。
連合、何気に危ないところなのでは!
「ねえ整備長整備長」
「おうどうしたヤンヤン」
「私がコサック軍を250機くらいと、ガリア軍を25機くらいとか落としてるのに、なんで連合のMCは少ないままなんですかね?」
「そりゃ、少なからぬ量いた華国のMCが誰かさんに全滅させられたからな。ま、数合わせの価値しかない連中だったけどよ」
「うっ、それを言われると痛い」
ほぼ全戦力を失った華国軍は、バトーキン自治区に全く手出しできなくなり、結果として自治区は後方からやって来た元々所属してた国に保護された。
で、華国はなーんも抵抗できない状態になってるので、コサックが来るって情報があった瞬間に偉い人が全員逃げ出したってわけだ。
いやあ、大変ですねえ……。
まあ、まともに飛ばないMCはいくらいても的ですけどねー。
とか話をしてたら、ハオシュエン大佐がまたグワンガンに遊びに来た。
「どうだいヤンヤン伍長、うちの船に来る気になったかい?」
「い、いえ、遠慮しておきます……えへへへへ」
このイケメンはちょっと遠慮させていただきたい……!!
むちゃくちゃ凄い期待とか責任とか諸々が待ってそうなので!
「そういえばハオシュエン大佐」
「なんだい?」
「大佐はどうやって、あらゆる通信機能を断っているグワンガンを見つけたんですか? 二ヶ月くらいずっと他の船から逃げ回ってたのに」
「ああ、それはね。それぞれの陸上戦艦には固有の軌跡があるんだ。同じ型の艦も本来は存在するのだけれど、連合には現在全部で六隻、それぞれ違う型のものしか存在していない。同型艦は撃破されてしまっているからね」
「あっ、なーるほど」
グワンガンの軌跡データを持っていて、それを見つけた大佐が追跡をさせたということらしい。
で、追いついたのね。
有能~。
「それ以外にも、様々な土地で君たちの話が伝わっていてね。これを追ってきた。一度、連合の救い主になりうる最強のエースに会いたくてね。まさかそのエースがこんな可愛らしいお嬢さんだとは思わなかったよ」
「あっ、うへへへへ、どうもどうもすみません」
この人になびくとすっごい責任とか最前線任務とかが来るんだろうなーと思うので、彼のイケメンスマイルにもなびかないぞ……!
鋼の意志で耐えろヤンヤン~!
その他、訓練所でお手合わせしたことのある人たちもグワンガンを覗きに来た。
大柄な豪快お姉さんはロアン中尉。
支部でトップクラスの腕を持つパイロットらしい。
「なんだい、ここにはシミュレーターもないのかい? というか……狭い格納庫だねえ……。設備も古臭いし、うわっ、奥に資材が山盛りになってるじゃないか! 戦艦が引っ張っているあの不格好な荷車も変だし……」
なんがぶちぶち言っている。
それから、ウーコンとサーコンの鹵獲ヴァルクを見て……。
「いい機体だね。少なくとも、うちのノックより強そうじゃないか。どうだ? あたしにこいつをくれないか?」
「ひいーっ、僕らの最後の存在意義を奪わないで欲しいっすー!」
「俺たちこれがなくなったら本当に無駄飯ぐらいになるすよー!」
ウーコンとサーコンがやめてやめてと訴えているのだった。
いやあ、まあ今までの戦場だと二人とも戦えてないからなあ。
この二人はずっと引っ込んでいたからこそ生き残った気もする!
私が落とした機体の回収、解体要員とか、グワンガンの応急修理要員とかとしては働いてるもんね。
他にポンチャック曹長も乗り込んできて、そこでたまたま通過したオペレーターのウェーブさんを見た後、
「この船美人さんがちゃんといるんですなあ!」
とかめちゃくちゃ失敬な事を言ったりするのだった。
おのれー!
ロアン中尉にポコンと叩かれてたけど。
結局、連合の名のあるパイロットがわいわいと格納庫に集まってきて、スアを指さして、ああだこうだ、と言い合う会みたいになった。
「コサック軍の機体に南部大陸同盟のバックパックを取り付けて、関節がヴァルクで制御系がノックの機構を使ってる? 世界中の機体の寄せ集めじゃないかい」
「そうですねー。全部癖が違ってますけど、ちゃんとバランス取ると強いですよー」
「ちなみにヤンヤン以外は誰も乗りこなせてないっす」
「信じられないようなじゃじゃ馬す。降着姿勢からエンジン吹かすことすら困難す」
ウーコンとサーコンはダメだったもんねえ。
せっかくなので、みんなでやってみようという話になった。
スアを滑走路まで連れて行って、降着姿勢にする。
みんなで乗り込んで、エンジンを掛けてみる。
とりあえず……。
ロアン中尉と、ガンガルムの七人のイケメン以外はまともにバックパックを動かすことすらできなかった。
そんなに難しい……?
ロアン中尉とイケメン七人衆は、スアを飛び上がるところまではやってのけた。
そこから、空中でぐにゃぐにゃっと動いてからどうにか降着姿勢で降りてくるところまでやった。
「こんなメチャクチャなMC乗れないよ! 関節が柔らかすぎるじゃないかい!」
「あ、はい。とってもいい油をたっぷり塗ってるので摩擦が凄く少ない……」
「姿勢の保持ができないじゃないか!」
「あ、はい。常にちょいちょいっとコントロールすればばっちりいけます」
「つ……つまりアイドリング状態でも操作し続けているような機体なのか……? 見たところ、AI制御も無いのに」
「まるごとアナログですねえ」
信じられない、というのがみんなの感想だった。
間違いなく、スア・グラダートは使い物にならない欠陥MCだという判断になるはずなんだって。
そうかなあ……?
指先一本の動きまでこっちでコントロールできる、最高のMCなんだけど……!
結局みんな、首を傾げながらそれぞれの船に戻っていった。
整備長がこれを見てニヤニヤしている。
「支部のダット技術中佐がな。こいつを解体して調べたいと言ってきたんだ。でバラさせたんだが、ずっと首を捻っていた。だがあの人は流石だぜ。『ヤンヤン伍長が使うために特化された機体なのだろう。こういう言葉は使いたくはないが、人智を超えた何かがある機体だ。俺たちの常識の範囲の改造なんか施さないほうがいい』だとよ。パイロット連中よりは物が分かってるよ」
「そんなもんですかねえ。でも何もいじらないでもらえたのはありがたいなー」
私はスアに乗り込んで、格納庫まで移動させた。
うんうん、お前は言うことをよく聞くいい子だねー。
こんなにいい子なのに、欠陥扱いされるなんて、本当に不思議なのだ。
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