第19話 雨降って地固まる(最終話)
あけましておめでとう。
計算違いで年を越してしまいましたが、これにて最終回です!
※※
「今更嘘をつかなくてもいいのよ! わたし見たんだからねっ。先週末だって会えなかったのはその女と一緒にいたからでしょ⁉」
「先週? 乃愛ちゃんが見たっていうのはもしかして、月曜日か火曜日あたりのことかな?」
「そうよっ、自分でもわかっているじゃないっ! この二股男!」
最初はとぼけたくせにすぐに認めたわね! やっぱり二股していたんじゃないのっ!
「乃愛ちゃん。ちゃんと僕の話を聞いて。冷静にね。僕は嘘をつかないからね」
「何よっ」
「乃愛ちゃんが見たその女って、この女でしょ?」
そう言って誠さんはスマホの写真アルバムを見せてくる。果たしてそこには、わたしがマンションの前で見た誠さんの腕を抱く女が写っていた。
「そうよっ、この女よ。やっぱり他にも女がいたんじゃない! ひどい人!」
「乃愛ちゃん。これ僕の――妹」
「……へっ⁉」
「
「妹さんなら隠さなくてもいいじゃない」
「うちの妹はブラコン気味だし、僕のほうとしても妹を甘やかしている自覚があるので、そういうの乃愛ちゃんに見られると恥ずかしと思って言わなかったんだ」
つまりは全部わたしの勘違い?
ブラコン妹なら兄の腕に抱きつくのはありうる。わたしも中学生の頃までは兄に甘えていた実績が豊富にあるので、否定することはまったく出来ない。
「いもうと……」
「はい。陣内茉優です。れっきとした妹だよ。もう山梨の実家に帰っているけど」
「ああ、はぁ……あはははっ。わたし、ばっかみたいー」
ついでに言うならばわたしは今回二つのミスを犯している。
1つ目は当然、妹を二股相手と勘違いしていたこと。
2つ目が、ドサクサに紛れて誠さんのことが大好きだってことをバラしてしまったこと。
誠さんに『わたし、本気だったのに』ってはっきり伝えてしまった。誠さんがその言葉を聞き逃しているわけもなく、しかも会社の前の路上で叫んでいたので、同僚の面々にもこの話は悪事千里を走るではないが、伝わっていることだろう。
めっちゃ恥ずかしい。もういっそのこと退職しようかしら。
「僕も本気だよ」
耳元でそっと囁いてくれるけど、今は嬉しさよりも恥ずかしさのほうが勝っているのでそういうのは後でにしていただきたい。いや、嫌なわけじゃないですよ。
「け、ケータイショップ行かないとなので、ちょっとここを離れましょう」
「いいですよ。ケータイショップになにか用事なの?」
誠さんにスマホを破壊した顛末などを話しながら(これも無茶苦茶恥ずかしかった!)、ケータイショップに向かい交換の手続きをしてもらう。手続きをしている間も誠さんはニコニコとニヤニヤを交互に顔に出していてとてもいたたまれなかった。だって絶対にわたしの言葉にニマニマしているに違いないから。
もう誠さんの横にいるのもイヤ! イヤじゃないけど、イヤじゃいけど!
「ぐぬぬ……」
「そう言いながらも、僕のスーツの裾を握っている乃愛ちゃんが可愛すぎるね」
だって! 恥ずかしいけど離れたくもないんだもん!
「乃愛ちゃん。今日うちに泊まっていく?」
「! うん……。泊まる。けど、一度自宅に帰りたい。着替えとってくる……」
今夜、ひとつになれそうな予感。
※※
お読みいただきありがとうございました。
今年もよろしくお願いします!
合コンに遅刻したOLの話 403μぐらむ @155
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