第14話 え?

 お昼ごはんは海鮮料理屋さん。やっぱり海近に来たなら外せないよね。


 誠さんが事前に調べておいてくれたみたいで、スムーズにお店に到着。お客さんが並んでいたから結構人気なお店みたい。


 3組待って入店。

 わたしは海鮮丼をチョイス。誠さんは煮魚定食を選んでいた。


「煮魚って、なかなか作らないし、食べないからちょっと選んでみたんだ」


 美味しいご飯をいただきながら、次に向かう浜辺を探す。ここは磯場が多くて浜辺はなかなかないみたい。なければないで別にいいんだよね。浜辺はまた次の機会でも。


 って既に次のデートも考えている自分にちょっとびっくり。



 ご飯のお支払いはちゃんと割り勘。というか誠さんが全部払おうとするから、自分の分は自分で払うと主張したんだ。まだカレシでもない人に全部払わすなんてそんなことはわたしに出来ないので。


「じゃあ、1000円だけ頂戴。あとはいいよ、ね? それくらい良いでしょ?」


 わたしが頼んだものは1530円だったので530円だけ奢ってもらった。うまいことやられた気分だけど嫌な感じは全く無く寧ろ好印象しか残らない。誠さんも策士だよね。




「ここって学生の頃に一度来たことがあるところなんだけど、浜辺は100か150メートルぐらいしかなくて、両脇が磯になっているんだ」


「ちょっと水遊びしたいだけだからこれくらいが丁度いいよー。運動部のトレーニングじゃないんだし砂浜は走らないよー」


「そりゃそうかぁ~」


 磯では干潮でタイドプールに残ってしまった小魚や小さいカニ。イソギンチャクなどを見つけては写真を撮ったりつついて見たり。子供みたいにはしゃいでしまう。だって、誠さんも楽しそうだし嬉しかったんだもん。


 砂浜では、のんびり歩きながらシーグラスを探したり、きれいな貝殻を拾ったりした。

 何時かこの小物たちが思い出になればいいな、なんて考えたりした。




「今日はありがとうございました。慣れてない車の運転は疲れなかった?」


「ありがとう。大丈夫。会社の社用車は軽自動車だし、偶にお使いで遠出させられるから慣れているよ」


「そっか、良かった。今日は本当に楽しかったよ。あのね、また一緒に何処かに出かけたいなって思うんだけど、駄目かな?」


 誠さんの方から誘ってくるのを待とうと思っていたのだけど、気が急いて思わずわたしのほうから誘ってしまった。口に出してから断られたらどうしようという思いがふと湧いてくる。


「そうだね。折角のお誘いに申し訳ないけど――」




 眼の前が真っ暗になる……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る