第10話 運命の再会! ?
「遠藤さん、お使い頼まれてくれないかな?」
「いいですよー」
営業1課のリーダー格の冴島さんにお仕事を振られる。雑貨の買い物か宅配便の発送かと思っていそいそと冴島さんの席まで移動する。
「お使いってなんですか?」
「ごめんね、遠藤さん。ちょっと手が離せなくてさ、このファイルを先方に届けてもらいたいんだ」
そう言って渡されたのは厚さが7~8センチはあろうほどのドッチファイルが2冊。中身もぎっしりと綴じられているので重量もかなり。
「宅配便ですか?」
「いや、大事なファイルなので先方に手渡しでお願いするよ。えっと、住所はね――」
おっふ。まじかー!
ちょっと持ってみたけど、2冊で5キロちょっとの重量はありそうだよ⁉
お届け先の会社は、うちの会社から地下鉄で4駅。オフィスビルの24階にあった。
担当の人がいなかったら、同じ部署の人に渡せば済むからと軽く言われて若干引きつった笑いを漏らしてしまったのは冴島さんにはバレていないはず。
受付で先方の担当者の方を呼び出してもらおうとしたが生憎ご不在のよう。同じ課の同僚の方が受付まで来てくれると言うので間仕切りされた応接スペースで待たせてもらう。
5分ほど待つと担当者の代わりの人がやってくる。
「お待たせいたしました。担当の熊谷が居りませんで申し訳な……い……で……あれ? もしかして、乃愛?」
「えっ?」
いきなり名前を呼ばれて驚いて、名を呼んだ人をよく見てみる。
「優斗? えっ⁉ どうしてここに?」
「それは俺のセリフだって」
「優斗はここの会社に勤めているの?」
「そ。インフィニテックソリューションズ株式会社が俺の勤務先だぞ」
優斗。
大学4年の夏前に別れたので就職先までは知らなかった。
まさか二度と会うことなんてないと思っていたのにこんなとこで再会するとは思ってもみなかった。
「びっくりした。見た目も変わっていてぜんぜん分からなかったよ」
「まぁ、かれこれ別れてから3年半ぐらいは経つからな。いつまでも変わらないってことはないかもな。こんなところで再会なんて運命的じゃない?」
「ま、それは置いておいて。これがうちの冴島からのファイル2冊です。ご査収ください」
「いきなりだな。それこそ横においておけよ。久しぶりだし積もる話もあるだろう?」
「――無いけど? ファイルを渡したら帰らないとだし、あなたもこんなとこで油を売っていたら叱られるんじゃないの?」
積もる話なんてあるわけない。別れた原因だってこいつの浮気だし。それにフッたのはわたしの方なので、未練も何も一切合切微塵もない。もちろん運命的なうんぬんかんぬんも全くもって毛頭ないし、ゆめゆめ考えたくもない。
「ええー? ねぇ、また連絡していい? ラインのブロックさ、解除してよ。ね、いいじゃん」
「あ、そうだ」
「えっ、なになに」
「こちらに受領のサインをお願いします」
「………はい」
受領のサインを貰ったらさっさと帰社の途へ着く。
「確かここらへんに美味しい洋菓子のお店あったよね」
なんとなく気分が悪いので、おやつにシュークリームでも買っていこうと思った。
冴島さんからはお駄賃をちょっと貰っているのでお土産にちょうどいいかもしれない。
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