2,弓道理論「射の中にある的中の3要素」

 ほい。これは筆者が考える近的競技(28メートル)での的中の要素、それは射の中にあるどの部分がポイントか。私なりの理論どす。

 ちょこっとだけ技術的な部分にも触れながら、それぞれ射を分解して考えてみます。


 ただしこれは、「狙いがあっている」事を前提として考えていきますので。そこは誰かにチェックしてもらってくださいね。矢摺籐やずりとうを基準に視える的は、個人差がありますからね。

 え、「矢尻でみてる?」矢が曲がったりしたらブレますよ、その狙い。狙いは矢摺籐を基準に視ましょう。オススメです。


 まずは結論から。


 問→弓道においてその的中をつかさどる部分はどこですか?

 解→極論は左手(弓手、または押手)


 で、さらに射を分解する事で、私が考える的中の3要素をランキングにしてみます。(ここで、左手を押手おして、右手を勝手かってとします)


 1位、押手と勝手の動くタイミング

 2位、押手。(矢のコントロール)

 3位、勝手。(弦のコントロール)

 

「タイミングって大事なんですか?」、超大事です。ハッキリいってこれがバッチリ決まってれば、多少癖のある射でも狙ったところに飛びます。

 逆に素晴らしい押手でも、勝手でも、動く動作に時間差があればあるほど、狙った場所に飛びません。「押手やないんかい!」違います、だって要素だし。


 ここで、弓道家の中ではよく正射必中せいしゃひっちゅうといった言葉を聞きますが、そもそも正射ってなんでしょうね。え、弓道教本?

 でもこれはもっこす流の理論。物理学として考えれば、狙った先に的があり、その結果継続して的中する。これが私の必中です。射形は矢を射るその過程であり、求めるものは……脱線しそう。 


【押手と勝手のタイミング】


 要素なので深く考えずに、計算式として簡単に考えてみましょう。この計算式は意味不明と名高い私の理論の一つなので、そこはご了承くださいな!


 技術的納得ができる押手をプラス。その逆はマイナス。

 技術的納得ができる勝手をプラス。その逆はマイナス。


『プラス×プラス=プラス』


 もしそのどちらかがマイナスであれば。

『マイナス×プラス=マイナス』


 では、両手がマイナスならば?

『マイナス×マイナス=プラス』


 不思議ですね、マイナスなのにプラス!

 でもこの計算式を成り立たせようと思うと、やはりタイミングが重要です。


 タイミングとはそもそも『弦から矢が飛び出すまで、狙った場所に矢が留まっていること』なんですわ。

 ここでもう一度狙いをみてもらい、矢が飛び出す直前、矢の向きに変化がないか見てもらいましょう。タイミングの要素はこれで分かります。

 もし矢を射る直前に矢の向きが変わり、それが的中となるのであれば、継続した的中としては、その射をひたすら繰り返せばいいのです。

 こうやって中る選手もいますからね、しかし、シンプルにいくなら狙った場所に飛ばし、中るほうが射の変化する要素は把握しやすいですけどね。

 

 ここで、「プラスとは狙いが変化する要因がない」こと。「マイナスとは変化する要因がある」こと。押手と勝手にマイナスの要因があったとしても、同時に動く事で、その要因を打ち消し合うんですよ。

 例えば離れの瞬間、勝手が原因で狙いがブレる動作をしても、押手がそれを打ち消す要因を持っていれば、狙った場所に矢は留まります。

 そのためには、左右のタイムラグがポイントです。


 これぞ極意、『身体の真ん中から離す』です。噛み砕けばそのカラクリは、単純な理屈なんですね。またの名を、『胸割むなわり』とな。

 要は、狙ったところに矢が飛ぶかどうか。そんだけ。むしろ飛ばないから稽古するんですよ。

 この要素を理解していれば、何を稽古するべきかはおのずと決まってきます。


【押手、または弓手】


 私の得意なのは斜面、なので押手と呼んでます。ただね、この押手がバッチリ決まっている事で、多少離れに癖があっても、狙ったところに矢は留まります。

 というより、そもそも押手が矢の軌道をコントロールしてるんですよ。なんで?

『射る瞬間に弓が動いたら、弦も動くよ?』


 別にガチガチの手の内にして、とかではないです。それこそ斜面打起しでも、正面打起しでもその要素は共通してます。

 つまり、『最後まで押手が的に残ること』

 この場合、親指の上に乗っかっている矢が、最後まで的を向いている事、なんですわ。

 そもそも矢が飛び出す瞬間ってホント一瞬。その一瞬の間だけ的に向いてればいいのです。


 例えばですよ、矢を射る瞬間。

 1、手首を折らないこと。

 2、弓の反発力に負けないように最後まで押しきること。


 手首を折ると押す力が左右に逃げます。弓の反発力に負けると力が上下に逃げます。逆に弦から矢が飛び出したあとは、どう動いてもいいです。関係ないので。

 あ、よく角見つのみを効かせるといった表現がありますが、「これって流派の手の内によるんじゃない?」って個人的に思うんですよ。

 角見って親指の付け根を、的の方向に真っ直ぐ押し込むって意味で解釈するのが一般的ですが(たぶん)、反り返る弓に負けない力を加えるって解釈するならば、人それぞれ手の表面積や骨格の違いによって、力を加える位置って変化するんじゃない、って思うんですよね~。

 それに弓返りをさせない手の内(主に斜面)で、つのみ効かせたら、練度がないと弓があっちむいてホイっなるんですわ。

 だから親指のつけ根〜というのは模範解答、これは手の内によって弓の押し方には色々あると考えてます。


 そうそう、正面打起しの場合、弓返りするのが正解だとして、引き分けから会に入るまでの間。手の内が滑ったりすると、射にムラが出ますよ。押す力も分散するし。

 どこか一点でも握り部分をロックする手の内のほうが、変化しにくいかなって。

 だってね、弓が振れてる状態で弦を引こうとするより、振れてない弓の状態で弦を引くほうが、引きやすいから。


 一般的に斜面のが中る、とか言われたりもしますが、あんま関係ないかな。要は斜面のほうが毎回、同じ手の内を作りやすいだけだし。ただそれだけの理由。


 まぁ結局のところ、つのみを効かせるってのは、的に最後まで押手を残す技術のうち、その一つであると思ってます。これは弓返りをしない手の内の人であれば、よく理解できるかと。

 え、「普通弓返りするくない?」。普通ってなんですの?

 ただ力が逃げるだけの弓返りなら、個人的にはしないほうがいいかな……。コツをつかむと自動的に返るようになりますよ。たぶん。

 

 それとね、強い弓であればあるほど、押手の自由は封じられます。反り戻ろうとする弓に負けないように押し返すならば、自然とその力は一点集中していくから。

 あと的より下に飛ぶ矢は絶対中らないので、そういった意味でも弓は強いほうがいいって言われているんですよ。基準はわかりませんが、体感だと並の14くらいあれば十分な気がします。

 強豪校とかだと17〜とか、でも日々の稽古で射る矢数があってこその所業。つまりマッスルなんです。


【勝手、または馬手】


 ほい。「離れが決めてだ!」といった人も多いのではと思います。それは間違ってないと思いますが、要素のランキングにすると3位です。

 だってね、離れってテキトーでも押手が決まってれば中るし、これは「弓道はパワーだぜ!」とか言ったら同期に全否定されて「いやいや、技術でしょ!」と言われた事があるくらい個性的な思考かと。もちろん意識して出す離れがあることも理解しております。


 でも結局のところ離れって、肘を支点に張った力の向きを定め、その惰性だせいで出るものだと思ってます。だから力んでもダメだし、変な事しようとしても、いいことになりにくいのかなって。

「意識してこうだ!」って離れより、定めた方向に出すだけ。そう考えると、押手が押す反対方向に引っ張れば、勝手に出るくない?

 だから勝手なんですよ。でもこれは斜面よりの思考かも。でも引っ張ってない方向、そのベクトルに離れを出すのはかなり技術がいる事なので、個人的には出したい方向に最初から引っ張ておくほうがシンプルかと。

 これもそう、人によって骨格もリーチも違うので、この方法が正解ってのはないと思ってます。ただ、弦枕が上下にブレる離れはあんまりよくないかな。なぜならつがえた筈の位置が動く可能性があるから。弦から完全に離れたあとはどうなってもいいですけどね。


 あ、でもヤゴロは別次元の技術だそうですね。ここで離れだって感覚が分かるってめっちゃ凄いと思うんですよ。私は結局最後までその理屈が曖昧だったので、どういった理由でヤゴロが発生するのかはわかりません。でもなんとなく、ハートな気がします。それか職人技みたいなもんかなって。

 

【まとめ】


 押手と勝手を動かすタイミングは同時に、それは体の芯から左右に力を伝達するイメージ。

 押手は最後まで的に残すイメージ。それは親指の上に乗っかった矢がポイント。力のベクトルはあくまで弓が反り返る反発力に対し、矢が真っ直ぐ飛び出す方向に押し抜くこと。

 勝手は押手に対し、弦を引く方向に模範解答はあれど、必ずしもそれが正解とは限らない。それこそ骨格によっては矢筋に引っ張らないほうが良い場合もしかり。


 問→中て射と言われます。

 解→試合で中てて結果を出しましょう。


 そもそも日々で何を稽古するのか、明確な目標を掲げ、その理由を考えながら練習すれば、調子という言葉に惑わされない技術と知識が身につくと考えてます。

 狙ったところに飛ぶ、それは良いとか悪いとか曖昧な要素でなく、ここがこうなって〜と説明出来るくらい自分の射を理解していれば、癇癪かんしゃく起こしてヤケクソになる事はありません。


 ある同期を例にだすと、「てやんでい! べらぼうべい!」、コレ読んでたらゴメンナサイ。


 なんか理由もなく中るわ、人によってはゾーンに入るとか言いますが。いかにそのゾーンを理解し、引き出せるか、ですよ。


 とゆうことで、ちょっぴり技術的な部分に触れつつも、私が考える的中の要素でした。

 悩むくらいならとりあえず試してみる。自分の射を理解してれば、どんな冒険だって出来ますから。

 でも弦枕を酷く痛めるような離れは、おサイフと相談しましょうね。

 


 



 

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