稽古に励む弓道部員に伝えたい技術と知識。

1,弓道理論「継続した的中のために、道具を調整しよう」

 弓道をやっている方なら考える継続した的中について「今日は調子悪いかな?」その調子、コントロール出来ますよ?

 射を変えたくないな~。道具を調整すれば多少の矢所はコントロール出来ますよ?


 ほい。それは弓具を理解することで可能です。


 問→調子が崩れました。

 解→まずは道具を疑いましょう。


 まず技術的な要素(射形)は度外視とします、考えると文字数が爆発するので。そもそも弓道とは道具を使うスポーツです。継続的な的中への近道はその道具のコンディションを把握することなんですね。これとっても大事。


 極端に例えます。


 同じ自転車が2台あるとします。空気の入っていない自転車と、しっかり空気が入った自転車をフルパワーでこいだ時の違いを考えてみると、全然違うはずです。


「オーバーでしょ?」「そうなん?」


 ではその理屈について、技術的要素は考えてはいけませんよ、これは道具に関する知識ですから。


【弓】調整しやすいけど、影響も大きいです。


 弓には並寸と伸寸とあり、それぞれ調整する部分は同じとしましょう。他のやつ引いてる人も同じ(竹弓は除く)。

 まずは弦の高さ、これ基本ですね。基本的な高さは握りから弦まで15センチですけど、これに対してその高さが変化した場合なにが変わるのか?


 弦が戻る距離が変化することで、矢が飛び出すタイミングも変化します。あくまで弦は弓の反り返る力を伝達するもの、なので弓の特性として反り返る向きを考えてみましょう。


 弦を引っ張り弓がそり返る→矢を射る→『45度左斜め上に反り戻る力』となります。つまり弓の握り部分を基準に、鉛直方向には反時計回りの力が加わってます。

「どうして?」和弓の握りを中心としたら、上端までと下端までの距離が違うから。

 水平方向(左右)の回転力は手の内でコントロールしますから、それは一定とします。


 左手で弓を押す力を0とし、筈を支点に弦の引き尺が変化しますから『距離✕弓のしなり+反時計回りの力』が矢に加わります。

 つまりこの鉛直方向のモーメントに対して、水平方向のモーメントを加え、弦の軌道をコントロールしてるんですね。


 さらに深堀りして弦輪を引っかけた上端と下端の2点が支点とするならば、矢を番える上下の高さによって、弦から発射される支点の位置、力の伝達位置も変化します。

 さらには弦の張った位置、弓を基準に左右の弦輪の位置によっても、モーメント力のベクトルに変換すると同じ事が言えます。

 要は、これがバラバラだとあっちこっちに矢が飛びます。特に弦輪なんて稽古中に位置が動いているなんてよくあること。


 ポイントは3つ。

 毎回同じ場所に番える。

 こまめに弦の高さを確認する。

 こまめに弦輪の位置を確認する。


 あくまで弦の回転運動を基本とするならば、逆にこの理屈を利用することで、射を変えずとも微調整出来るんですね。


 そしてこの理論に弓が持つ特性、つまり材質だったり弓力が加わることで、その振れ幅は変化します。あくまで弓には個体値があり、それに対して弦を調整する事で自分専用の弓に変化させるんですね。

 これは同じ2本の弓でもそれぞれ個体値がありますよ。ヘタっている、元気な弓、全然反り返る力や反り戻る力が違いますから。


 あと筈をつがえる中仕掛けの太さ、これも毎回同じにしましょう、矢の軌道が変化する一つの要素です。

 射る矢をつがえた感覚(筈のすり減り具合を一定として)でもいいし、気になる人は厚みを測りましょう。例えば理科の実験で使用されるノギスみたいなのがオススメ。え、高い? でしたらそこはお好みで。


 あと握りの大きさ、これはもう自分の手の内に合わせて好みです。

 つまり自分の射形に対してこれらの要素を把握しておけば、変化した矢所の原因にも気がつきます。道具の状態がいつも通りであれば、そこから初めて射を変える必要があると判断するんですね。


かけ】溝の変化は射の変化、育てると自分流の癖がつきます。


 これはもう単純です。弦枕の状態を把握しとくのです。弦枕を保護するクスネの重要さはここにあり。

 当然使えば弦枕はすり減りますし、取懸ける中仕掛けの太さによって弦の動きは変化します。その理由は離れをした際、弦枕から飛び出る弦の回転数(転がり)が変化するから。

 そういえば、興味本位で弦枕を分解して的中がガタ落ちした子がいましたわ。それくらい重要なんですね、かけの溝って。なんかね、アロンアルファが盛ってあったのを覚えてます。中身は「軽量の板がはいってた!」だそうです、でも修理はちゃんとプロに頼みましょうね。


【矢】弓力に対して適切な矢を使用すること、曲がった矢はおススメしません。


 矢ってね、弓力に対して適切な肉厚や重さの一覧表みたいなのがあって、ある程度弓力をあげたら矢の規格も変化するんです。

 1913とか2014とかはそれ。まぁこれは知ってる人も多いかと。一応、その種類による代表的な違いは『矢の肉厚・重量、矢のしなり』なんです。

 って事で、単純に矢が変形せず真っ直ぐな状態か。あと矢尻刺さるほうを外して、先端が変形していないか。長い間矢を短くしてない方は、シャフトの断面が内側にそりかえっている場合もありますよ?

 これ、矢の先端の重さが変わるので、酷いと矢の飛び方が変化するんです。特に弱い弓を使っている方なんか、顕著に表れます。

 時には矢を切断する必要もしかり、ただ矢を短くするタイミングは重要です。

 ちなみに短くすると軽くなるし、矢のしなりも変化しますね。

 え、羽? これはお財布と相談しつつ、チキンになったら変えどきですね。だから鷲羽がオススメなんですよ。

 

【まとめ】→射を変える前に道具を見直す。


 あとですね。袴の着付けとか服装とかで的中変わるわ~って場合。それはハートですね。あと雨だから変わるわ~って場合。筆者はあまり感じませんが、可能性としては道具の個体値によるものかと、気候によって変化しやすいやつとそうでないやつがあるんでしょうかね。これは弓具の材質によりけりかなと。これは商品によりますね。個体値によると考えてます。


 ちなみに弦は使っていると状態が変化しますから、予備の弦も育てておきましょうね。

 あと和弓ってのは、弦を張ってからでも多少反り返る動きをしてますから、試合なんかだと朝イチから弦を張らないと、弦も弓も微妙に変化しますよ?


 弦を張って弓立てに置いていただけなのに、高さが変化した経験がある方なんかは、まさにそれです。

 練習前も同じです、まずは弓に弦を張りましょうね。


 そして道具の状態を把握する事こそ、日々の稽古によって変化していく自分の射に気が付く要素の一つですからね。それに人はそれぞれ骨格や腕のリーチ等が違いますから、絶対この状態が良いってのは自分で見つけるんですわ!

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