声劇台本「三人の恋人」

雲依浮鳴

三人の恋人ー本編ー

配役表

A:

B:



ー本編ー



A:

恋人ってどう思う?


B:

恋人って思う


A:

恋人かー、やっぱ恋人だよなー。ラーメン食べたい。


B:

え?待ってどういう事?


A:

どうもこうもラーメンが食べたいんだよ。


B:

お腹が空いたってことか?


A:

いや?さっきお昼食べたじゃん。


B:

うん、焼肉食べたね。え、何?肉よりラーメンが食べたかった?


A:

いや、焼肉が食べたかったよ。


B:

君が焼肉って言い出したもんね。良かった。


A:

それはともかく、やっぱりラーメンだよな。


B:

うーん、それは何がラーメンなの?


A:

え?ラーメンはラーメンだよ。何ラーメンでもいいよ。その時の気分で決めるし。あ!それこそ、二人で決められたらいいよなぁ~!


B:

ん?2人って?


A:

だから、恋人と。


B:

あぁ、そういう事か!主語が抜けてるから、わかんなかった。


A:

あぁ、ごめん。考えてるとたまに言葉足りなくなっちゃうんだよね。


B:

恋人とラーメン食べに行きたいって事ね。


A:

そう、わかる?恋人とラーメンに行く良さ!


B:

恋人がいた事ないから、わかんないね。


A:

そうか、わからないか。


B:

どういう良さがあるんだよ


A:

それはだな…うーん、うん?


B:

どうした?


A:

どう思い出そうとしても、恋人と過ごした日々が出てこない。


B:

うん、分かってたけど。恋愛未経験者だよね。


A:

あ、そうか。経験してないから思い出せないのか。


B:

え、なに、本気で存在しない記憶を思い出そうとしてたの?


A:

うん、あぁ、そういえば楽しかったな~


B:

ん?何が?


A:

え、覚えてないの?


B:

うーん、なんの話しだろうね。


A:

忘れるなんて酷いやつだ。


B:

待って待って、そう腹を立てる前に何を思い出したのか教えてくれないか?


A:

え、あぁ、前に存在しない記憶を捏造する会やったじゃん。田中を3人呼んで。


B:

あぁはいはい、嘘の思い出を語ろうの会ね。確かに、あれは楽しかったな。


A:

やっと思い出した?


B:

思い出す以前に、なんの話か分かってなかったんだ。


A:

え、もしかしてまた主語が抜けてた?


B:

抜けてたね。


A:

ごめんよ。気をつけないとな


B:

今に始まったことじゃないし、あんまり気にしないよ


A:

3人居ると大変だったよな


B:

ん?3人…あぁ、田中達の話しか。


A:

そうそう、全員田中だったからな。どの田中を呼んでも田中が全員反応するから困ったよな。


B:

そうそう、だから田中A、田中Bって分けて呼んでたんだよな。


A:

そしたら、RPGの敵キャラかーって田中Cにツッコまれて呼び方変えたんだよな。


B:

あー、そうだったね。住んでる地域の方角から、東の田中、南の田中、字一色(つーいーそー)の田中って呼んでたよな。


A:

あれ?国士無双の田中、八連荘(ぱーれんちゃん)の田中、緑一色(りゅーいーそー)の田中じゃなかった?


B:

違うよ?役満とかかっこいいからって別のにしたよ。確か…ポンの田中、チーの田中、カンの田中だったよ。


A:

そうそう、通しの田中に、フリテンの田中、代打ちの田中なんて呼び名もあったよね。


B:

それはなんかもう違うね。あと、いつまで続けるの?


A:

え、何の話?


B:

いや、この田中三人衆についてだよ。誰なのこの田中達は。


A:

えー、楽しいじゃん。記憶に存在しない田中三英傑の話。もっと設定作ろうよ。


B:

妄想話はもういいよ。それに、田中三兄弟は麻雀しかしてないじゃん。一人フリテンしてるしさ。


A:

兄弟ではないよ。


B:

兄弟じゃないのか!?


A:

違うよ。だって田中三郎だもん。


B:

三郎はもう人の名前だよ。


A:

あぁ、そっか違ったか。


B:

うん、違うね。


A:

そっか、田中三神話の話は終わり。話戻していい?


B:

三神話?よく分からんけど、話戻したいならどうぞ。


A:

やっぱ赤味噌だよね


B:

赤味噌…?うーん?あぁ、ラーメンの話か。


A:

違うよ


B:

え?違うの?


A:

違うよ。恋人の話だよ。


B:

え、恋人が赤味噌?


A:

え、恋人が赤味噌?何言ってるの


B:

いやごめん、俺も何を言ってるかわからん。


A:

あー、ごめん。また言葉足りてないかも


B:

うん、付け足してくれるとたすかる


A:

いやほら、毎日作ってくれるなら赤味噌がいいよねって話。


B:

え、なに、お前、恋人に毎日赤味噌を作って欲しいの?


A:

え、何言ってのお前、怖い。


B:

ごめんごめん、ふざけただけだよ。味噌汁の話だな?結婚した後とか想定してたろ。


A:

そうだよ、さっきから言ってる。


B:

言っては無いな


A:

え、言ってなかった?


B:

言ってないね。いいけどさ。

それで、お前は恋人には赤味噌で味噌汁を作って欲しいんだな?


A:

うん、そう、そういう事。全く、伝わるのに時間がかかるな。


B:

誰かさんが端折って話すからな~


A:

それでさ、話の続きだけど、3人くらいは欲しいよな 。


B:

3人?話の続きっていうと…子供の話か?


A:

いや、違うよ。子供だなんて気が早いな。


B:

さっきは結婚を前提の話だったろ?だから、次は子供かなって思ったんだが、違ったのか。


A:

そんな、結婚してすぐ子供だなんてハレンチな奴だな!全く!


B:

は?あぁ、違うなら何の話だ?


A:

あ、そっか、えっとね。恋人の話。


B:

うん?


A:

え?まだ伝わらない?えーと、恋人が3人欲しいよねって話


B:

何いってんだお前。


A:

え!?これでも足りない?


B:

言葉は足りてるが、意図と誠意が足りてない。どういう事?どう言うつもりで発言してんだ?


A:

いや、そのままだよ?恋人って3人くらい欲しいよねって。お前もそう思うだろ?


B:

いや、同意を求められても困るが。なに、お前浮気する気なの?


A:

まぁ、実現出来たらそうなるな。


B:

うわ、引くわ、クソだわお前、焼肉代返せよ


A:

まてまて、冗談というか妄想話だよ。理想と現実ってやつだ。この虚しい現実を忘れる為にな?


B:

いや、だとしてもクソだろ。不誠実過ぎるだろ。お前に恋人いない理由はそこだろ。


A:

え、恋人いるよ?


B:

は?


A:

だから、居るって。言ってなかった?


B:

聞いてないけど、え、何?妄想話じゃなくて?


A:

違うよ、本当だよ。さっき話したじゃん田中三股。


B:

三股してるのはお前な?田中に三股はつかないから。え、田中さんって言う3人の方とお付き合いしてるの?


A:

うん、そうだよ。


B:

え、馬鹿でマヌケでノロマでマイペースかつ給料泥棒で連絡マメじゃなくて忘れっぽくて、大切な用事にも遅れてくるし、人の金で飯食ってるお前が?


A:

え、酷くない?めっちゃ言うやん!?え、そんなに?給料泥棒ってなに!?ちゃんと働いてるよ?


B:

いや、だってお前、楽な仕事しかやらないし、人手足りない日は絶対休むだろ?無断で。


A:

それは、そうだけど


B:

いつも俺にしわ寄せがきてる。


A:

あーぁ、ごめん。次はご飯奢るよ。


B:

うん、おかしいよね。お前から焼肉食べたいって言ったのに財布忘れてきてるんだからな。


A:

ごめん。


B:

で、恋人の話は続けるの?


A:

続ける、ここからが本筋だから


B:

だとしたら前フリ長いね。


A:

そのためにお前呼んだんだから。


B:

好きな人でもできたのか?ならまずお前の性格をだな…


A:

いや、その告白とかではなく。居るんだ。


B:

え?子供?


A:

違うよ、ハレンチなやつだな。


B:

回りくどいんだよ。ハッキリ言ってくれ。


A:

わかった。


B:

・・・


A:

今、3人の方とお付き合いしている。マジな話。それで困ったことになった。


B:

・・・


A:

・・・


B:

・・・


A:

あのぅ、聞いてる?え、携帯取り出して何処に連絡するの?


B:

馬鹿Aと馬鹿Bだ。お前を島流しにしてやる。


A:

えぇ!どうしてまた!?


B:

理由が分からないとは救いようがない。


A:

待って待って!理由があるんだ!弁明させてくれ!


B:

弁明?聞くだけ聞こう。


A:

同じ時期に言い寄られたんだ!待ってくれって頼んでも押し切られちゃってさ…ってまてまて!電話をかけるな!!


B:

なんだ、もう余地は無いだろ。島流しだ。田中三姉妹には代わりに伝えておく。自分探しの旅に出たって。


A:

困っているんだよ!助けてくれよ!


B:

自業自得だ。数年間、島で暮らすだけだ。刺されるよりはマシだろ?


A:

えぇ、どんな島なの?


B:

え?あぁ、片角の折れたノコギリクワガタが居るらしい。


A:

なんだその島クソだな!


B:

おい、それを三億はたいて買った馬鹿も居るんだ。そして、お前はそのクソの島に行くんだ。


A:

最後まで聞いてくれ!!内臓を売るつもりなんだ!


B:

あぁ!?お前、侍らすだけじゃあ飽き足らず、終いにゃ売りもんにしようってか!?


A:

ああ、大きな誤解が…違う売られるのは俺なんだ。


B:

お前売ってもびた一文にもならんだろ


A:

酷い言われよう…。説明不足だな、ごめん。

説明を追加する。


B:

・・・


A:

美人なんだ。なんとか局の美人。3人ともそうだったんだ。


B:

は?


A:

そのあの、詐欺って言ったら伝わるか?


B:

あぁ、美人局。何かと思ったよ。

なに、騙されたの?3人に?


A:

いやその…酒屋ハシゴしてたら急に手を引かれて、抵抗するまもなくというか、気づいたら高額の請求されててさ、脅しまでかけられてて。言えなくてさ。遠まわしに伝えようとね。


B:

あのなぁ…


A:

言いたくても言い出せなくてさ…いつも迷惑かけてるし…。


B:

あのなぁ。あぁ、今日はいつにも増して変な話題の振り方だと思ったらそういう事か。わかったよ。今回限りだからな。


A:

え、助けてくれるの?ありがと。恩に着るよ


B:

あぁ、ただ、1週間は島に行ってもらうがな。


A:

あ、ダメなんだ…。


B:

安心しろ、馬鹿AとBもつけてやる。


A:

わーい、賑やかになりそう。


B:

わかったら後は任せとけ。そいつらの連絡先くれ。


A:

いつもごめんな、ありがとう。

それで何時から島に旅立つんだ。


B:

明日には飛ばす。

戻ってくる頃には問題を解決しといてやるから、バカンス気分で行ってこい。


A:

お土産に片角の折れたノコギリクワガタ持ってくるね。


B:

いらないよ。片角の折れたノコギリクワガタ。


A:

次は何処に連絡してるの?島買った友人B?


B:

違う、組の連中。お前を騙した奴らを探す為の手筈を・・・


A:

え?組?


B:

あぁ、前に話したろ。俺、この辺で大きい組の第一子だよ。


A:

え?あれって嘘じゃ…


B:

ガチの話って前置きしたよ?


A:

話された内容のスケールが大きすぎて妄想話だと思ってたよ…。本当にほんと?


B:

あぁ、お前だけだよ。俺にタメ口きくの。


A:

あー、そうだったんだ…。ごめんなさい。許してください!


B:

今更やめろよ。俺はお前を気に入ってんだよ。

だから、今回は特別だ。疑われねぇように島にいけ。


A:

何の疑いをかけられるんだい?あ、知らない方がいいやつ!?


B:

・・・


A:

なんか言ってよ!?


B:

ははは、嘘だよ嘘。


A:

え、嘘?


B:

あぁ、妄想話。


A:

あ、え、そうなの?びっくりしたー!何処までが嘘なの?島には行かなくていいよね?


B:

いや、島には行ってもらう


A:

嘘じゃないってこと!?


B:

島から帰って来たら、ラーメンでも行くか


A:

ははは、嘘だよね?あぁ、あの、今度は必ず奢ります…。





ーENDー


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