第9話

   

「何をバカなこと言ってるんだ?」

 ラボのミーティングで話すと、最初は笑われてしまった。

 だから自説を支持するデータが必要となり、ある動物実験を提案する。


 ボスは一通り聞いた上で、難しい表情を浮かべた。

「君の説が正しいなら、確かに面白い論文になりそうだが……。その研究は何かの役に立つのか? 研究資金を獲得できるのか?」

 研究資金にこだわるなんて、サイエンスを追究する者の態度には相応しくないと思う。しかし実際問題、ラボの長ならば仕方ないのも理解できるので……。

 俺はポツリと答えた。

「新しい安楽死です」


 皆の笑い声が消える中、俺は発言を続ける。

「仕組みが科学的に解明されて、誰もが確実に幽霊になれるとしたら、それは素晴らしい死に方だと思いませんか? まさに『安楽死』です」

 同僚の顔を見回すと、多くの者たちは引いてしまっていたが、何人かは少し心惹かれたようで、幸いボスもそちらに含まれていた。


「なるほど。面白い話だな」

 ニヤリと笑ったのは、いくつかスポンサーを思い浮かべたからに違いない。そんな研究に金を出すなんて、どうせロクでもないところだろうけれど。

   

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