第7話

   

「そうか、この遺伝子だ!」

 霊能遺伝子のがわからではなかった。

 カスパーゼ8及びカスパーゼ3を介するアポトーシスに着目することで、別の霊能遺伝子も全く同じアポトーシスに関係すると判明したのだ。

 ただしアポトーシスを引き起こすのではなく、逆に抑制する方向。ヒトのPOG4に相当する遺伝子だった。


 霊能遺伝子群Psychic Occult Genesの中でも、POG4の研究は遅れている。霊力を下げる方向性が示唆された時点で、研究人口がドッと減ったらしい。

 霊能力が高い人々の間で活発な遺伝子なのに、逆方向の機能。それはそれで研究者の好奇心をくすぐるはずだが、霊力を下げる方向性では実用性が低いのだろう。


 しかし。

 霊力低下という点だけ見れば霊能遺伝子の理屈に合わないとしても、POG9とセットで考えれば合理的ではないか。

「なるほど、そういうメカニズムだったのか。POG4は、霊力が高すぎる者のアポトーシスを抑えるために……!」

 霊能力者はPOG9によって霊力が上昇しているが、POG9には脳細胞を殺す副作用もある。だからそれを抑えるために、POG9とは逆の効果の遺伝子、つまりPOG4も活性化されるというシステムだ。

 ならば、その両者のバランスこそが、正常に霊能力を発揮する上で大切なのかもしれない。


 この考えに至った俺は、一人で興奮してしまうが……。

 ハッと我に返れば、まだ最初の疑問が解けたわけではなく、むしろ深まっていた。

 POG9には何故、脳細胞を殺す働きがあるのか?

 そんな厄介な副作用を、なぜ保持してしまったのか?

   

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