第17話 緩めざまぁ編

 半年後、首都をシュケーナ大公領に移し『シュケーナ公国』と名乗ることになった。サイモンは統一国のシュケーナ大公陛下、ケルバは大公妃陛下となる。


 サイモンはボンディッド王国中央部と西部の問題のある貴族以外はそのままの爵位を名乗らせ、問題のある貴族の再編はボイド公爵とイエット公爵に一任した。


〰️ 


 首都移転のため、元王都から移されてきた元国王夫妻、ノイタール夫妻、ノイタールの側近三人は、首都を通り過ぎて南の端まで運ばれた。


 馬車を降り立った七人は唖然とする。


「何なんだここは?」


 質素な食事で美オヤジになった国王がキャビに聞いた。


「国土の南側の未開拓地です」


 ノイタールたちの後ろからもう一台の馬車が到着し、ヒリナーシェの父母のロンダル元男爵夫妻が降りてきた。ロンダル元男爵夫妻はこの二年間騎士団の使用人をしてきた。


「元国王夫妻は散財分の借金の返済のため働いてもらいます。ロンダル元男爵夫妻は慰謝料の残金分ですね。

借金が終われば自由ですよ」


 元国王夫妻はキャビを睨みつけていたが、ロンダル元男爵夫妻はキャビに深々と頭を下げていた。


「ノイタール夫妻と側近三名はここの管理を任されました。開拓を進めれば、開拓した分の半分はノイタールさんの領地としていいそうです。ある程度の領地の広さとなれば男爵位を授けると主は申しております」


「ほ! 本当かっ!」


 五人は喜んだが元国王夫妻は怒りだし、ここまで護送してきた兵に抑えられた。


「彼らは国の借金奴隷なので使用料金が発生します。ご理解ください」


「ならいらぬ!」


「ですが、現時点で人手がいませんよ。あるのはあの家と畑、少しの家畜です。農具はあの小屋に入っています」


「グッ……。ではしかたない。

父上、母上。食うためには働いてもらいますからねっ!」


「お父さんお母さんも、やる気がないならいなくていいのよ」


「俺たちはやる! やるぞ!」


 ロンダル元男爵夫妻はやる気を見せた。


 キャビは簡単に説明すると護送兵たちとともに帰っていった。


 小屋には農具も畑用の種や苗もあった。釣り道具や狩り用の弓もある。

 家畜たちはみなつがいで、家畜を増やしていくこともできそうだ。


「あの書物たちはこれのためだったのかもしれませんね」


 エリドが呟く。五人はキャビが帰って行った方角に頭を下げた。ロンダル元男爵夫妻もそれに倣って頭を下げる。元国王夫妻だけは不貞腐れていた。


 ノイタールたちは決して赦されたわけではない。だが、マリリアンヌという公爵令嬢一人が貶されたことなど、両陛下の愚行、独立国家設立、さらにクーデターと比べれば大事の中の小事である。


 国土の繁栄に従事させることで罪を償わせることになった。


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 ノイタールたちが監禁されたいた離宮の本棚にはいつの間にかなぜか農業についての書物が沢山並んでいた。はじめこそ興味ももたなかった五人であったが、あまりの暇さにそれを読み始めた。


 そのうちそれを実践してみたいと考え、食事を運んでくるメイドに庭の使用を願い出ると農具や苗が運ばれ、一年間野菜作りをした。さすがに初めての事なので家畜の世話にまでは手が出せなかった。


 自分たちで作った野菜は不味かったが、気持ち的には美味く、五人で笑いながら食べた。


 今度は何を作ろうかと話をしていたところ、こちらへの護送となった。

 

 離宮でも元国王夫妻には何度も野菜作りを誘った。しかし、二人は頑なにやろうとしない。やらずとも質素であっても食事は運ばれてきたからだ。


〰️ 〰️ 〰️


「ここには食事を運んできてくれる者はおりませんよ。働かないのなら飯はありません。覚悟してくださいね」


 ノイタールの釘刺しに元国王夫妻はフンと横を向いた。


 家の中には農業の本だけでなく料理の本も並んでいた。台所には小麦粉や干し野菜もあった。

 ロンダル元男爵夫人とヒリナーシェにとって料理は手慣れたものだったが、材料が材料なので質素な食事である。元国王夫妻は文句を言いながら与えられた分は完食した。


 翌朝から早速畑を耕すことから始めた七人。二人は家から一歩も出ない。

 ノイタールの指示で当然のように二人に昼飯以降は出さなかった。


 次の日、へっぴり腰で鍬を振るう元国王と、エサ入り籠を持って鶏に追いかけられる元王妃の姿があった。


〰️ 



 西部で粛清された貴族の生き残りはノイタールの元へ送られている。


「働かなければ飯はないぞ!」


 真っ黒に日焼けしたノイタールは送られてきた元貴族の数家族を叱責しながら自分も斧を振るう。その様子を家畜の世話をしていたヒリナーシェが眩しそうに見た。


「貴女のお父さんはとても逞しくて頼りになって素敵ね」


 自分の背中で眠るかわいい我が子に語りかけた。

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