第7話 変化は無いけど何か違和感がある


 文化祭が終わってから二週間が経った。もう九月も終わり。斗真とは毎朝一緒に登校する。明るくて話をしていても楽しい。


 毎朝一緒に登校して、斗真が図書室担当の時は一緒に下校する。二週間前に見た斗真と白石さんの事なんか何処にも無かった様に過ごしている。


 それに学校でも二人の接点は全く無い。一体あれは何だったんだろう。そう言えば十月中旬に二学期中間考査がある。大学受験はまだ先だけど重要な考査で有る事には、変わりない。


 斗真は学年でも中位。少しでも上に持って行かないといけない。


「斗真、十月半ばに中間考査があるでしょ」

「ああ、気が重い」

「ねえ、土日一緒に勉強しない。中間考査の為に」

「えーっ、いいよ。俺達別に国公立目指す訳じゃないし」

「でも、今からでも準備して行かないと」

「俺まだいいよ。それに考査準備は一人でやるから」

「駄目、私が一緒にやってあげる」

「いや一人でやる」


 美緒は勉強の事になると人が変わったように厳しくなる。この高校入る時だって、休みの日は午前七時に俺の家に来て帰るのが午後七時。

 学校のある日は午後四時から午後七時まで毎日勉強させられた。あんな思いはしたくない。


「斗真、同じ大学に一緒に行くんでよ。城地大学は今から準備しないと」

 私は斗真の腕をゆさゆさ揺らしてやる気を見せる。


「わ、分かったから。前向きに考えるから」

「絶対だよ」

「多分」

「それじゃあ駄目」


 そんな事を言いながらあっという間に学校に着いた。こんな話でも斗真といるだけで心が温かくなる。




 俺、本田斗真。本当は理央と一緒に勉強する予定だ。勿論場所は土曜日は理央の部屋、日曜日は図書館。理由は分かるよね。


 今週も金曜日が終わった。本当なら理央と駅で待ち合わせして他の街で一緒に遊ぶ予定だけど、何故か最近美緒が積極的で毎日下校は一緒にする様になっている。


 勉強の事気にしているかもしれないけど、考査週間になったら美緒とすれば、彼女も納得するだろう。だから土日は理央と一緒だ。


 十月の最初の日曜は理央と一緒に図書館で勉強した。俺が分からない所を理央は分かりやすく教えてくれる。


「斗真、まだ考査まで時間有るけど、もう少し頑張ろうね」

「理央、お姉さんみたいだな」

「ふふっ、あなたが大事だから」

「そ、そうか」


 斗真は国語や英語それに社会はそれなりに出来るけど、数学と理科特に化学が駄目なようだ。だから、土日の休みはそこを特に集中して教えている。


「ねえ、斗真。考査週間も一緒に勉強出来ない?」

「うーん、そこは無理。美緒と一緒にやらないとあいつが五月蠅い」

「でも榊原さんは幼馴染ってだけだよね」

「そうなんだけど、何かにつけて俺に絡んで来る。まあカッコいい男の子でも現れたら、それで俺はお払い箱だろうけど」

「なにそれ?」

「でも、同じ大学に行こうって言われて約束しているのも事実だし」

「ああ、前に聞いた事ね。私と同じ大学に行こうよ」

「俺もそう思っているけど、今はそれを公にすると面倒だから」

「そうだよね。仕方ないか。でもいつまで皆に内緒にしておくつもり。私はそろそろ皆に教えてもいいけど」

「気持は分かるけど、そうしたら学校内での俺の立場が厳しくなる。我慢してくれ」

「分かっているけど」


 斗真とは土日は一緒に居れるけど月曜から金曜までは、彼との関係は素振りも見せてはいけない事になっている。だからちょっと悲しい。


 最近、榊原さんの斗真へのアプローチが凄い。見ていても良く分かる。彼は幼馴染なだけだと言っているけど、彼女がそう思っていないのは明白。最ももう遅いけどね。




 今週も金曜日なった。来週から考査週間に入るけど、今週末は三連休。だから土曜日は、私の部屋でイチャイチャして日曜日を図書館、月曜日は両親に話して私の部屋で勉強するという事にしている。勿論家族が居ない時間はうふふだけど。




 私、榊原美緒。三連休の初日。窓の向こうの斗真の部屋を見ていた。午前八時位に起きて八時半には出かけた。どこかに行くようだけど手ぶらだ。直ぐに帰って来るのかと思ったら、彼の部屋の電気が着いたのは午後八時。


 次の日は午後九時に出かけて行った。バッグを持っているのが分かる。この日は午後七時に彼の部屋の電気が付いた。


 そして月曜日は、昨日と同じ様にバッグを持ったけど、出かけたのは午前八時半。微妙に時間が違う。そして彼の部屋に再び電気が着いたのは午後八時だ。


 いったい何をしているのだろう?尾行なんてストーカー見たいな事はしたくない。まあ、今している事は隣の家だからストーカーじゃないよね。


 明日からは考査週間、学校が終わったらずっと斗真と一緒にいれる。勿論勉強だけど。



 月曜の朝、私が玄関を出ると斗真がいつもの様に待っていた。

「おはよ、美緒」

「おはよ、斗真」

「今日から考査週間ね」

「ああ、美緒、優しく頼む」

「駄目、ぴったりくっついて教えてあげる」

「……………」

 どういう意味だ?



 午前中で授業が終わる斗真と一緒に帰った。最初、私の家で簡単に昼食を摂ってから、私の部屋で勉強する。彼は数学と理科特に化学が苦手な為、そこを集中的にする予定だ。


 私達は昼食を摂り終わると

「お母さん、私の部屋で斗真と勉強するから勝手に入って来ちゃ駄目よ」

「はいはい、分かっていますよ。斗真ちゃん宜しくね」

「俺、教えて貰う方だから」

「それでもよ」

 どういう意味だろう?


 

 私は斗真を自分の部屋に連れて行くと

「勉強の方法だけど、考査週間は苦手な科目を集中的にやって、斗真の得意な科目は今度の土日でまとめてやりましょう」

「えっ、俺、土日用事あるから週中だけでいいよ」

「でも中間考査目の前だよ」

「いいよ、用事が有るんだ」

「そ、そう」

 考査前に何の用事があるんだろう?


 私は斗真の勉強を見ていて違和感を感じた。前より出来る様になっている。独学でもしているのかな?でもちょっと出来すぎ。

「斗真、自分で勉強しているの?」

「まあ、ちょっとはな。何でそんな事聞くんだ?」

「うん、前より出来るみたいだから」

「お前、それ俺を馬鹿にしているのか?」

 笑いながら言って来るので本当に怒っていないのが分かる。


「馬鹿にしていないけど、斗真にしては出来るんだもの」

「酷い、帰ろうかな」

「あ、ごめん、冗談だから一緒にやろ」

「ははっ、冗談だよ」

「もう、斗真ったら」



 こんな形で金曜日まで一緒にやった。斗真は土日は出掛けたけど、次の月曜日はまた一緒に勉強して中間考査を迎えた。


―――――


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