第3話 別のクラスだけど問題ないはず


 今日も斗真と一緒に登校した。いつもの笑顔で話しながらの登校だ。やはりあれは私の見間違いだったんだろうか。そう思いたい。


 斗真とは、昇降口で上履きに履き替えてから階段を一緒に昇って教室の前で別れる。

「斗真、また」

「ああ」


 斗真がBクラスに入って行くのを見届けてから私はAクラスに入る。

「おはよ、美緒。なんか本田君の事思い切り見つめていたけど」

「そっ、そうだっけ」


 私に声を掛けて来たのは、周防慶子(すおうけいこ)さん。一年の時から仲のいい友達だ。髪の毛が肩まであり、細面で赤い縁の眼鏡を掛けている。


「うん、なんか真剣に見ていたよ。いつもは教室の出入り口で別れると気にもしないで入って来るのに」

 不味いな。そんなに気にしてしまっているのか。少し心の中から追い出すか。


「まあ、偶にわね」

「ふふ、お熱い事で」

「斗真とは幼馴染なだけだから」

「ふふっ、今はそうしときましょう」




 俺がクラスに入って行くと理央と目が合った。彼女は、にこっとすると俺から視線を外した。

 



 斗真が教室に入って来た。それだけでも心が温かくなる。目立たないけど陰キャとかじゃなくクラスでも友達も多い。皆に優しい男の子。


 彼とはちょっとしたことで知り合って付き合う様になった。もうあっちもしている私の大切な人。でもクラスの中、いえ学校の中では彼との事は秘密。


 彼は榊原美緒さんという幼馴染がいる。とても仲がいいけど、特に何を約束している訳でもない。だから気にしていない。


 予鈴が鳴った。そろそろ担任が来るはず。



 お昼休みになり、私は皆と食事をする前にBクラスに行った。斗真が誰かと一緒にいないかと確かめる為だ。


 隣のクラス。急いで行くと授業が丁度終わった所で、出入り口が開いた所だった。直ぐに教室の中を見ると斗真が他の男子と何か話をしている。

 そしてこっちに向って来た。あっ、私に気が付いた。


「美緒。どうした。何か用事か?」

「ううん。ちょっと。斗真はこれから学食?」

「そうだけど」


「おっと、斗真、豆腐の角に頭ぶつける前に先行くぞ」

「あっ、すぐ行くから。美緒何か用があるのか?」

「ううん。斗真の顔見たくなっただけ」

「おかしい奴だな。毎日見ているのに」

「ごめん、私、教室に戻るね」

「ああ」

 斗真が、さっきの男子達の後を追いかける様に廊下を早足で歩いて行った。



 美緒の奴どうしたんだ。何か用事でも有ったのかな。まあいい。



 私が教室に戻ると

「美緒、どうしたの。授業終わったらすぐに教室を出たから心配したんだけど」

「ごめん、慶子。ちょっとね」

「まさか、Bクラスの本田君?」

「まさか」

「そうならいいんだけど」

 美緒、何か隠している。朝の件といい、何か有りそう。でも今まであまりにも何もなかったからな。夫婦の痴話喧嘩かな?



 私は、今日も部室に行って文化祭用のパワポを作成している。今日は斗真が図書室の担当じゃない。

 だからクラスの文化祭の準備をしているはず。


 午後五時、今日はぎりぎりまでかかってしまった。他の子の資料と構成を調整する為だ。終わってから直ぐにBクラスに行くとほとんど誰も居なかった。


 そっかぁ、模擬店だからクラス内の準備は無いんだ。私が覗いているのを見かけたのか男子が、

「誰探しているの?」

「斗真」

「ああ、本田か。今日は何も無いから授業終わったら帰ったよ」

「そう。ありがとう」


 私を不思議そうに見ながらその子も教室を出て行った。朝、何も言わなかったから図書室担当でないし帰ったのか。

 でも気になって図書室にも行って見ると別の担当の子がもう閉めている所だった。


 先に帰ったのかぁ。なんで斗真の事、こんなに気にしているんだろう。やっぱりあれが引っ掛かっているのかな。普段なら気にしないのに。仕方ない家に帰ろ。


 家に着いて自分の部屋に行くと斗真の部屋の電気は着いていなかった。


―――――


書き始めは読者様の応援が一番のエネルギーです。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★を頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る