起床

傘根哉那

1話だけ

 今サッカーの決勝戦。延長戦に入ったが一対一。ここまで両チーム入らずこれで7人目。先に相手シュートが外れた。このPKで運命が変わる。そんな重要なボールを自分で蹴る。不安だったこの試合で初めてレギュラーになった自分に任せれている。英雄になれるかもしれない。でも……

 とても複雑な気持ちであるが、やるしかない。

 ボールの前に立ち助走する。右に蹴る。キーパーも右に出る。ボールの軌道上にキーパーの手が迫る。わずかに届く直前にバーに当たり反射する。入った。

 勝った。

 喜びと共に信じられなかった。目の前がぼやけた。涙?

 仲間が近づいて抱きついていた。

 努力が報われた。とりあえず今はただこの余韻に浸ろう。


 このアニメは面白いな。昨日借りてきたアニメを朝早く起きて観た。典型的なスポーツ系だが興奮する。

 社会人になり子供の頃に抱いていた。将来とはかけ離れた生活をしている。子供の頃は、どんな困難なんとか乗り越えて幸せな人生を送れると思っていた。いつか何か変わらないかな。そう他力本願なことを思いながら惰性で過ごす。


 そろそろ出勤しないといけない。明日のプレゼン資料の整理をしないと。

 鞄の中身を確認して、電気を消す。アニメの一時の高揚感に包まれ家を出る。


「行ってきます」

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