「大根か、マンドラゴラか」というアイデアが、飛び抜けてユニーク・秀逸だと思いました。謎の女から手渡された鉢植え――改心すれば大根に育つが、そうでなければマンドラゴラになって死ぬ。主人公は「大根か、マンドラゴラか」という状況を、悩みつつ真剣に考え、行動していきます。青年のリアルで等身大な悩みに、ぐっと胸がふるえる場面も。どう生きることが、より望ましいのか?……人生の深い問いかけを、おもしろく描いた傑作短編です。
「これを授けましょう。あなたが改心すれば――」 大学は2年連続留年し親の電話はシカト、バイトもしょっちゅうばっくれる。 そんな自堕落な生活を送っていた主人公は、ある日謎の女性から鉢植えを手渡される。 その鉢植えは主人公が改心すれば大根になり、改心しなければマンドラゴラに成長して…… 主人公が自堕落な生活を送るようになった過去のトラウマ、そして後悔や反省を経て少しずつ変化していく様子が丁寧に描かれています。
改心しなければ大根がマンドラゴラになって死ぬ──なんだかショートショートのような立ち上がりですが、その中身は『改心とは』『信じるとは』について考えるヒューマンドラマです。きっとこの二つに普遍的な正解はないと思います。人によって、状況によって違うから。だからこそ私たちはこの言葉を、存外ふわっと使っている。そんな二つの概念に対して、自分と向き合い行動する主人公の姿は、私たちにも考えさせてくれます。