グルメとかわからない姉妹

 母は、料理が下手だった。

たぶん、できなかったのだと思う。

家族の反応をみて、ある日ブチ切れて、料理をやめてしまった。 

私達が、小学生の頃だ。


それから、おじいちゃんとおばあちゃんが同居してくれるようになり、おばあちゃんの美味しいご飯が食べられるようになった。 


私たちが、美味しそうにご飯を食べる様子を見て、母は、機嫌が悪かった。

なので、おばあちゃんの作った料理を「美味しい!美味しい!」と食べることもできなかった。


 そんな食事環境だったせいか、私たち姉妹は、食べることに興味もなく、痩せている。

その弊害は、今も何かにつけて続いている。


「果穂ちゃん、今日は何を作る?」


と言って、最近は、インターネットのレシピサイトで検索する。


「これ美味しそうだね!

これ作ってみようか」


そうして、材料から調味料まで分量通り、作り方もレシピ通りだ。

美味しくなかったら、それは、レシピサイトのせいということで。


味音痴でもある。

とりあえず、空腹が満たされればそれでよかった姉妹だ。


「外で食べよう?何がいい?」

と、浩輔くんやルーが聞いてくる。

私たちの答えは、

「なんでもいいよ!」

誘い甲斐のないやつだ。

それは、他の人からみても、そうだったのだろう。


「お母さんの料理って、ほとんどが塩コショウ味で、しかも、かなり塩辛かったよね」


「そうだね!

私なんて、思わずぺって口から出しちゃって、叩かれたことあるもん」


「それ見て、私は絶対出しちゃいけないと思って、涙目で食べてたもの」


「そのせいか、私しばらく味覚障害だったんだと思う。

何食べても、味がしなかったもの」


「わかるー!悲惨だね」


「料理ができないのは、そのせいだと思うんだ」


「まあ、それだけじゃないけどね」


「ルーなんて、これ美味しいから食べてみろって言って、なんでも口に突っ込んでくるし」


「まあ、それも、それだけじゃないと思うけど。

だって、お姉ちゃん、ケイトに食べさせることに夢中になって、自分のご飯いつも手付かずじゃない。

私だって、口に突っ込みたくなるよ」


「コースケは、果穂ちゃんのお料理のこと何か言う?」


「最初のうちは、えって顔してたけど、最近は、こうすれば美味しくなるよとか教えてくれる」


「料理って、上手な人がやればいいんだよ」


「たしかに!

じゃあ!誰がやるの?」


「この4人の中では、コースケが一番上手いんじゃない?」


「そういうわけにもいかないじゃない。

だいたい、一日中家にいるお姉ちゃんがやってくれると、助かるんだけどなー」


「無理だよ」


 そういって、寒くなると鍋率が高くなる。






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