第24話 掃除

 外出をしたあの日からすでに6日経過した。


 基本的にシオンさんは朝に研究棟へ出勤し、あのゴミ部屋で何かしらの書類を書いたりする。他には魔物素材の材質を詳しく調べるため、虫眼鏡で凝視していたり、魔力を通して浸透率などを観察していたりする。


 どうやら最近は魔物素材に注目しているらしく、魔力の浸透率が彼女が思い浮かぶ義足の開発には必要らしい。


 そんな研究しているところを、観察しながら警戒の為に魔力探知をする毎日。


 護衛生活?と疑問を持つほどに何もない。怪しい気配すら感じ取れないため、もう狙われなれていたいのではと考えてしまう。


 こんなのでお金をもらってしまっていいのだろうか・・・。そんなことを思いながら、俺はふと周りを見渡す。



「・・・シオンさん。掃除、していいですか?」



 俺は暇すぎてこの部屋の掃除を決めた。


「掃除か?十分きれいじゃないか」


 どうやら彼女の中ではこれを綺麗に見えているらしい。な、なぜ家では掃除をしているのに、研究部屋ではこんなに荒れているんだッ!


「パパっとやっちゃうので」


「・・・ふむ、分かった。できるだけ静かに頼むよ」


「了解です」


 俺は返事をし、もうすっかり座り慣れた物体Aから立ち上がる。うーむ、とりあえずは床に落ちている者から片付けるか。そう思い、次々にものを仕分けしていく。


 えー、ゴミ、ゴミゴミ、ゴミ、硬貨?、ゴミ、ゴミ、またゴミ。


 魔道具?、魔物の素材、素材、羽ペン、インクが入った瓶、謎の調味料、手袋、白衣、モノクル、物体Z、馬のぬいぐるみ・・・・


 書類はこっちにおいて、本はここにまとめるか。


 本、本、紙、紙、パンツ、紙・・・



 ・・・・うん?なんか変なものが混ざっていたような・・・。


「ア、アレス・・・お前」


「はい?」


「そ、それ・・・」


 彼女がそうして俺が握っているものに指をさした。


 そこにはピンク色のパンツがあった。


「・・・」


「・・・」



 しばらく、空間に沈黙が制した。



「・・・ほ、本、本、本、紙」


 俺は見なかったことにして仕分けを再度開始する。



「ひべふッ!?」



 だがそんな俺の顔面に突如、強烈なローキックがさく裂した。


「わ、わざとじゃないのにッ!!だいたいなんで下着が普通に落ちているんですか!?」


 あ、あまりにも理不尽だ!不可抗力だ!


「う、う、う、うるさいぃ!お、おま、お前、私の下着をあんなにがっちりとぉぉ~~!!」


 彼女が赤いリンゴの様に顔を赤面させ、俺に対して何度も蹴りをしてきた。



「ひぶッ!?ちょ、やめ、蹴るのやめてぇ~!?」


 


 

 そんな感じでしばらく蹴られた俺は、顔面をパンパンに腫れ上がらせた状態にさせられてしまった。


 まるでその顔は顔がアンパンのあのヒーロを彷彿とフォルムだ。



 しくしく泣きながら手で瞳を抑える。


 こ、こんなのあんまりだッ!



 そう思いながら立ちあがろうと床に手を当てたとき、なにか硬いものが手に触れた感触がした。



「うん?」 



 俺は気になりそれを手に拾ってみる。すると、そこには通話ができる魔道具、フォトンが落ちていた。


「ふぅ、ふぅ、どうした?」


 蹴っていたからか、彼女は若干息を切らしながら俺が拾ったものを見る。


「これ、フォトンですよね。使ってないんですか?」


「ああ、そう言えばそれは誰かからもらった気がするな」


 彼女は誰からもらったのか思い出そうとしたのか、左斜め上を見る。そんな彼女の様子をしり目に、俺は手に持っている魔道具を見る。


「でも、高価なのにこんなところに埋もれててもったいないですね・・・」


「良かったらやろうか?」


「え?」


「別に私のはもうあるし、アレスは持ってないみたいだからやろう」


「・・・いいんですか?売れば100万ギルぐらいはしますよ」


 俺がそう言うと「そんなはした金いらん」と彼女から返ってきた。


 ま、マジかよ・・・じゃあ俺もフォトンデビューですか!そう考え、俺は初めて買い与えられたスマホのごとく、キラキラした目で赤色のフォトンを眺めた。


「はぁ、今日はもう疲れたな。続きは明日からにしてもう帰るか」


 彼女はカバンを持ち、帰り支度の準備を始めた。俺はちなみに何も持つものがないので準備は必要ない。


 強いて言うならば、パンパンに腫れた顔を手で元の形に押し戻す作業だけだ。えっと、あごはここら辺で、鼻と目は・・・。


 そんなことをしながら、俺たちはそのまま研究棟から出てシオンさん自宅に帰ってくる。


 玄関の扉を開け、リビングに歩みを進めていつも通り「ただいま」と、姉であるフレイさんに帰宅したことを知らせる。




 だが。



「姉さんッ!?」



 リビングに入ると、フレイさんが倒れた本棚の下敷きになっていた。


 


 

 

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