アリシア•イン•ラビリンスクール

悠山 優

第1話 出会い広がる


「いってきます!!」

お屋敷の玄関でニコニコ笑顔のアリシアは学園指定の制服のプリーツスカートをふわりとひるがえし大声で挨拶をする。

「「いってらっしゃい」」

ウィルソンとマリーの見送りの声でこれから始まる学園生活の背中を押す。


9月3日。学園の夏休み期間の終わりを待って、秋の風が青々と茂る庭園木々を揺らす今日この日。

10歳になるアリシア•クラーベルは、リザベートの街の学校に通うことになった。


重厚感のある木目調の扉を開けるとお屋敷の庭園と快晴の空が出迎える。

このお屋敷での生活も2年が経ち、街の人々の優しさや活気ある雰囲気にも慣れてきた。

夢にまで見た学園生活はもう目の前。

これからどんな楽しい日々が待っているんだろう。

頭上を飛び交う小鳥のさえずりが心地良い。

応援してくれてるのかな?

「ありがとー!」

足取り軽やかに胸を弾ませ、お屋敷の正門をくぐり中心街に続く坂道を下りる。


お屋敷から歩いて20分ぐらいで学園に到着出来るの。

学園に通えることが決まった8月15日から緊張とワクワクが治まり切らなくて、お店の営業時間が終わった後、予行練習って言って何回も学園への道を往復してたの。

どこの道を進めばショートカット出来るかとかも確認済みよ!


登校初日ということもあり、

ノートと教科書がまだ数冊しか入っていない学園指定の新品牛革ショルダーバッグはアリシアの背中で軽々と弾む。

レンガブロックの塀の上をゆらゆらとしっぽを揺らし歩く黒猫さんの歩調に合わせる。

「おはようにゃぁん、あなたはどこに行くにゃぁん?」

ごにゃ~んと間延びしたひと鳴きで返事をしてくれた黒猫さんは住宅の壁の小さな隙間にひょんと入り込んで姿を消した。

「ぁ、行っちゃった…」


商店街を抜け噴水のある役所前を通り過ぎると学園専用の送迎バスが停留所で待っていた。

バス停には、私より小さな男の子、私より背の高いお姉さんがバスに乗り込むところだった。

その後に続いて私もバスに乗り込む。

「おはようございます!」

私は運転手さんにも座席に座る学生さんにも聞こえるように挨拶をした。

すると"ごきげんよう"と学生さん達から挨拶が返ってきた。

運転席に居る運転手さんも私の方を振り返り「ごきげんよう」と優しく返してくれた。

「あは…ごきげんよう…」

私は恥ずかしくなり空いている座席に座った。

そうだった、この学園での挨拶は"ごきげんよう"だったね。

失敗‥失敗‥。


バスに揺られること10分。

学園の正門前でバスは停まった。

バスを降りると正門を入っていく数多くの学生、先生の姿があった。

私が今日から学園生活を送ることになる"聖シルキーフォード学園"は初等部から高等部が在籍するエスカレーター式のマンモス校なんだって。

私は今秋から5年生クラスに編入になったの。

まずは学園に着いたら職員室に行って担任の先生に挨拶しに行かなきゃ。










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アリシア•イン•ラビリンスクール 悠山 優 @keiponi

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