第5話 『特別な人』

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◇かわいい嫉妬


 向阪は気付いていなかったが島本とのアドレス交換しているところを

少し離れた場所から見ていた人物がいた。



 それは向阪 の恋人で10代の頃から付き合っている掛居花だった。


 

 帰りは花と足のない同僚ふたりを乗せそれぞれを最寄駅まで送り届けた後、匠吾と花は北区のビバリーヒルズと呼ばれる高級住宅街に建ち並ぶ

それぞれの豪邸近くへと帰って来た。



 彼らは匠吾の父親が兄で花の母親が妹という兄妹の娘、息子、

即ち従兄妹同士だった。



 祖父の豪邸を真ん中に挟み匠吾と花は左右に住まっている。



 今回は匠吾の車でBBQに出掛けていた。


 その匠吾の車は近所にある公園の駐車場に止められた。


 会社イベントは楽しかったけれどふたりでゆっくり話す時間もなかった為、少し話をしてから帰ろうということになったからだ。




イベントの残りの缶コーヒーを飲みながら花は訊いた。



「今日島本さんと何話してたの? 

匠吾、鼻の下がビロ~ンって伸びてたけど」



「ビロ~ンってオマエなぁ~、なぁ~に言っちゃってんの。

 入社仕立てなんで分からないことがあったら教えてくださいって

お願いされてたんだってぇ‼」



「へぇ~、接点のない他部署の匠吾に教えを乞うなんて不自然だよね」



「そうか?」


「そうよ、おかしいよ。メルアド交換したでしょ」



「あっ、あぁそうだったっけ……」


「ふ~ん、心配だな」



「大丈夫だって、わたしを信じなさいっ」


「信じていいの? ほんとに?」



「大丈夫、ンとに心配性だなぁ~花は。

 花が思うほど俺ってモテないから」



「もし、彼女から相談があるから会って話を聞いてほしいって言われたら

どうするの?」



「電話で聞くようにする」


「外では会わない?」



「会わない……」


「よかった。それ聞いて安心した」


「俺も良かったぁ」


「何が?」



「ちゃんと花が俺に焼きもち焼いてくれることが分かったから」



 俺がそういうと怒るかなって思ったけど花の反応はそうじゃなかった。



『じゃあ、約束ね』といって小指を出してきた。

 そのしぐさが可愛いなって思った。



 車の中じゃなかったら盛大にハグしたのに、残念。


        




 

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