第3話 『特別な人』

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◇バーベキュー


 10年前学生だった頃姉の恋人を寝取ったのを皮切りに人のモノ、


すなわち彼女持ちの男を射止めるのが癖になってしまった


島本玲子は元々がそのような拗れたところからの恋愛を繰り返してきた


為、最後はいつも破局してしまいこの年になっても未だ独身だった。





 言い寄られて彼女のいないれっきとした独身男性との交際も

時にはあったが飽き症の上にすぐ人のモノが欲しくなる性格も相まって

なかなか結婚まで行きつかない。



 向阪に関していえば社内のカフェテリアで何度か見かけたのが

切っ掛けだ。


 背が高く容姿がずば抜けて整っている。


 男性にしてはゴツゴツしてなくて、顔の肌が女子顔負けにきれいで

さらには鼻梁の線も美しく、くっきりとした二重瞼と併せて彼の顔を

きりりとした表情に作り上げている。



 実は彼の顔をなるべくはっきり見たくて自然を装って

彼が座っていた近くを何度か通ったりしていた。





 島本玲子が入社した会社では、バーベキュー施設は地域問わず多く


存在し、物品や材料が備えられているケースも多いため実施ハードルは


低めで、屋外で自然と触れ合いながら飲食をすれば、非日常感溢れる環境


だからこその仲が深まりやすい点もあり職場内よりも開放的な気持ちで



コミュニケーションが取れるメリットがある為、BBQは毎年恒例の行事となっている。




入社して3ヶ月目に突入。



 3日後の日曜日に社内の親睦を兼ねたバーベキューが催されることに

なっていて玲子は絶対この日に向阪のメルアドをGetしようと決めていた。


          ◇ ◇ ◇ ◇



          

 私は慎重に向阪 匠吾こうさかしょうごの様子を窺っていた。



 周りに人はいても、実際彼に話し掛けている者がいない時間が

できたのを見計らい私は近づいて行った。

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