4 地上を目指して
『ダンジョンワームを討伐しました。下級モンスターをアンデッドに変え、しもべにすることができます』
『ダンジョンワーム(アンデッド)をしもべにしますか? Y/N』
「ああ、しもべにする」
俺はメッセージに対してうなずいた。
すると――、
ずずずず……。
ダンジョンワームの死体から黒いモヤのようなものがあふれ、そのモヤが収束して、黒いダンジョンワームとなった。
「これは……」
そうか、アンデッドになったダンジョンワームだ。
今まで、もともとアンデッドモンスターである『最下級ゴースト』や『最下級スケルトン』をしもべにしたことはあったけど、通常のモンスターを『アンデッドに変え』て、自分のしもべにするのは初めてだ。
「他のモンスターも倒した後に、こうやってアンデッド化して、しもべにできるのかな……」
だとすれば、俺の能力の使い勝手は飛躍的に高まる。
強いモンスターをたくさん倒せば、俺は最強のアンデッド軍団を従えることができるんだからな。
と、そこまで考えたところで気づく。
じゃあ、ミラージュはアンデッドモンスターということなんだよな?
こいつ、一体どういう種族なんだろう?
下級のモンスターって全般的にデザインが簡単で、『いかにもザコ』って感じなんだけど、ミラージュは違う。
鎧のデザインも凝ってるし、それこそ主人公みたいな格好良さだ。
でも、俺がしもべにできたってことは、こいつも最下級アンデッドのはずで……うーん。
ミラージュって何者なんだろう?
「どうした、マスター?」
ミラージュがたずねる。
「ダンジョンワームをしもべにしたのだから、ダンジョンの出口まで案内させては?」
「あ、ああ、そうだな」
まあ、そのうち聞いてみよう。
なぜか、俺はミラージュの正体について聞きそびれてしまった。
「ダンジョンワーム、このダンジョンの出口まで案内を頼む」
と、しもべになったばかりのこいつに命令する。
きゅいい。
小さく鳴いて、ダンジョンワームが進み始めた。
その方向に出口がある、ということだろうか。
俺はミラージュと共にダンジョンワームが進む方向に歩き出した。
「これで地上まで戻れるのかな」
「おそらくは」
俺の言葉に答えるミラージュ。
「あ、でも戻った後、どうしよう……俺、クラスの連中からここに放置されたんだよな」
一体どういう顔をして会えばいいのか。
そもそも、彼らは俺を受け入れてくれるのか。
というか、置き去りにされて死にかけたんだから、もっと怒った方がいいのか。
ただ、今はここを出ることに気持ちが向いていて、彼らに対する怒りとか恨みとか……そういった感情がマヒしていた。
彼らに対して、どういう感情を持てばいいのか、自分でも分からなくなっている。
ばしゅっ……!
突然、青白い光が弾けたかと思うと、俺の前方を歩いていたダンジョンワームが消し飛んだ。
「えっ……!?」
通路の奥から巨大な何かが近づいてくる。
全体的に楕円形のシルエットだ。
俺は目を凝らした。
薄暗い迷宮だけど、集中すると段々姿がはっきり見えてくる。
なんだか以前より視力がよくなっている気がするのは、【ネクロマンサー】のスキル解放で俺の
「あいつは――」
全長五メートルくらいの、巨大な顔面だった。
全体が岩でできており、両目の部分には宝石がはめ込まれている。
カッ!
その両目が発光して、青白い光線を撃ち出した。
「くっ……!」
俺はとっさに左手の盾を突き出す。
「【シールド】!」
バリアが発生し、放たれた光線を防いだ。
ミラージュも同じく盾で光線を防いでいる。
ばきんっ。
と、俺やミラージュの盾が真っ二つに砕けた。
「一撃受けただけで……」
戦慄する俺。
「フロアボスのようだ」
ミラージュが言った。
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