夜襲

足軽「曲者、であえであえ!」


影長「何事っ」


足軽「敵襲です、全く深夜アニメの時間に来るとは何と腹の立つ」



影長「お前、自分の仕事判ってる?」


足軽「その為に、深夜警備のシフトずらして貰ったっす」


影長「デブネコは?」


足軽「あそこで、土柱派手に上げてるとこじゃないっすかね」


指さした先で爆音と共に城の石垣と同じ高さまで捲られた土が上がっているのが見えて、影長が震えた。



影長「味方にあそこだけは行くなって言っとけ」


足軽「了解です、つか毎回あれだけ派手に暴れてりゃ命令されても行きたくねーっす」



影長「奇遇だな、俺もだ」


影衆「影長さんは、長なんだから行かなきゃダメですよ」


瞬間に渋面になる影長、一斉に居なくなる影衆。


影長「あいつら、なんて薄情なっ!」



チラリとみると、爆音と土柱が定期的に天まで轟く東門の外。



姫「わらわも、ジェノサイドカラクリで出るぞよ」


影長「余計な事せんでくださいよ?!」



姫「安心いたせ、昨今の燃料費の高騰でここから一歩も動かせぬ」


影長「何しに出したんですか?!」


姫「動けんでも火力支援は容易じゃ、阿修羅バリスタセット!」



孔雀の様な放射状の巨大なバリスタ群から一斉に巨大な破城槌の様な矢がシャワーの様に敵陣に降り注ぐ。



影長「まさかのバリスタかい!」



姫「大丈夫じゃ、弧を描くように敵の頭上に落ちる様に設計されておる」


影長「一回の斉射で二千発位飛んでる様に見えましたけど?」


姫「強そうじゃろ?」


影長「いや~、猫耳と猫グローブと猫尻尾つけて顔だけ天狗お面だとものすごくキモイです姫」


(ドヤァ)


影長「…デブネコ無事か!」


デブネコ「お呼びですか、ダーリン☆」


影長「誰がダーリンだ!誰がっ!無事か?無事なんだな?」


デブネコ「ダーリンに心配されちゃった~」


両手を頬に当てながら、くねくねしながらバリスタと敵軍を蹴りだけで無双中のデブネコを見て影長が胸を撫でおろした。



影長「姫が、いつものやばいカラクリを持ちだした注意しろよ!」


デブネコが大きく息を吸い込んで、一点五倍位に膨れた様に見えた。


デブネコ「影長様に心配されちゃった~」



雄たけびの様にデカい声で、それがソニックブームになって敵兵が秋葉のごとく地面を吹き飛んで転がっていく。



影長「心配するだけ、無駄だったかもしれんっ」



敵に槍や刀で滅多打ちにされようとも、厚い脂肪に阻まれておまけに闘気がおかしい位噴き出ている為傷が瞬時に治っていく様と。飛んできたバリスタの矢全てが闘気の腕で鷲掴みにして中空に止まっている様を見てうわぁ……という表情になる影長。



姫「愛されておるの」


影長「デカい女子は、好みではありませぬ!」


そこだけ、やけに力説する影長。


姫「しかし、あれは本当に素手限定なら母上並ではないのかえ」


影長「否定できませぬ」



三千以上の兵に囲まれて尚、だいだらぼっちと国が戦っている様な状態が城門の前で繰り広げられていた。無論、だいだらぼっちはデブネコだが。




俺は影長、長でありながら部下に脅える男。

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