叶わない願い

Grisly

叶わない願い

N氏が枕元の電気を消そうとすると、

美しい妖精が現れた。


「私はリリー。

 3つ、何でも

 あなたの願いを叶えてあげるわ。」


N氏は、考えた。

金が欲しい。それも無限に。


沢山の金は聞いたことがあるが、

無限の金は叶えられるだろうか。

聞くだけ聞いてみよう。ダメで元々。


「いいわ。叶えてあげる。

 私は他の妖精より、

 ちょっと力が強いのよ。」


次の日、N氏が財布を開けると、

無限に金が出てきた。

どうやら本当らしい。


N氏は、昔から行きたかった、

高級料理を巡った。


イタリアン、フレンチ、創作料理。

何だかよく分からない、

二酸化窒素を使った料理も食べた。

もちろん、キャバクラの若い女と一緒に。

金はあるのだ。


しかし、不都合が生じてきた。

美味いものを食べ過ぎると

どうも胃もたれがする。

太ってきて、最近なんとも動きにくい。


いつまでも、若く健康な肉体が欲しい。

流石に、不老不死は聞いたことがなかったが

ダメで元々。

妖精を呼び出す。


「いいわ。叶えてあげる。

 私は他の妖精より、

 ちょっと力が強いのよ。」


N氏は、全盛期の

アーノルドシュワルツネッガーのような体に

魅力的な筋肉。圧巻のスタイル。


当然、放っておいても、美女が集まる。

おまけに、金はあるのだ。

N氏は、世界中を旅して回り、

世界中の美女を抱きまくった。


しかし、不都合が生じてきた。

彼は自分の気持ちに気づき始める。

どんな美女を抱いても、

満足できなくなっていた。


気づけば、

彼は、妖精リリーに恋をしていたのだ。

無理もない。

何でも要望を叶えてくれる包容力。

他のどの妖精も匹敵しない魔力の強さ。


男が、隠し持っている、

甘えたい欲望を満たしてくれると言っていい

おまけに彼女は美人だった。


すぐさま、妖精を呼び出す。

「人間になって、俺と結婚してくれ。」


しかし、今度ばかりは断られてしまう。

彼の願いは、この世で最も叶わない願い。

すなわち、

好きな人の好きな人になるということ。


N氏は、少し考えて言う。

「ならせめて俺を妖精に。」

無理もない。

世界中のどんな美女を抱いても、

もう彼女には敵わないのだ。

この世に未練はない。


彼女は言う。

「いいけど、人間には戻れないわよ。

 それと、妖精は、

 人々の願いを叶え続けないと

 生きられないのよ。」


N氏に迷いはなかった。

今の無力な自分は嫌だった。

結婚は無理でも

少しでも彼女に近づきたい。

彼女の景色を見てみたい。



ついにN氏は妖精になった。

彼は、仕事に励み、

沢山の人々を幸せにした。

魔術の練習も欠かさず、

他のどの妖精より力をつけた。


しかし、なぜだろう。

もう2度とリリーとは会うことが

できなかった。


次第に、彼は気づいてしまった。

あのリリーとかいう妖精。

初めは人間だったに違いない。

どこからか来た妖精に、

叶わない願いを望み…




彼は、人々を更に幸せにするため、

ますます精力的に活動するようになった。



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叶わない願い Grisly @grisly

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