第7話 桜さんを気持ち良くしたいな~

 今日は俺が早番で、東雲しののめさんが遅番だ。忙しいランチタイムは2人でこなし、それ以降は彼女のワンオペになる。


東雲さんは店のカギを持っていないので、閉店作業はできても施錠は無理だ。なので、桜さんが閉店間際に来る事になっている。



 時間は午前10時ちょい過ぎ。遅めのモーニングを済ませたお客さんが帰ったので、10時台前半は暇な時間だ。


11時近くになれば、早めのランチをする人が来るかもしれないがな。


「お疲れ様で~す」


扉が開いた後、東雲さんの元気な声が店内に響く。


「あれ? もう来たの?」

どう考えても早いんだが…。


「佐々木さんに話したい事があるので、早めに来ちゃいました~!」


「俺に話したい事?」

心当たりがないぞ?


「桜さん、ここ最近疲れが溜まってる感じしません?」


東雲さんがそう思うきっかけがあったのかな?


「実際たまってると思うよ。この間、一瞬ふらついたからな(4話参照)」


「あたしも見た事あります。休ませてあげたいですけど、店長ですから…」


バイトがやれる事には限界があるし、桜さん抜きで店の経営はできない。かと言って、旦那の晴彦さんはサラリーマンだから土日以外の手助けは厳しい。


「どうすれば良いんですかね~?」


「だな…」


お客さんがいない間に、考えをまとめたいところだ。



 「…そうだ!」


東雲さんが閃いたっぽいぞ。


「温泉はどうです? 疲れを取る定番ですよね?」


「良いアイディアだけど、温泉ってこの辺にあるの?」


「それはよくわかりません。咄嗟に言ったもので…」


場所によっては日帰りもできるな。数日は厳しくても、1日だけなら俺と東雲さんでイケる…はず。


「他には…、マッサージもアリかもしれませんね」


「そっちの方が温泉より現実的だな」

場所が限定されにくいし。


「ですよね~。佐々木さんも時間があったら、色々調べてもらえませんか?」


「もちろん良いよ。桜さんにはお世話になってるし」


「ありがとうございま~す。それじゃ、あたしは着替えますので…」


そう言って、東雲さんは休憩室に入って行った。



 温泉にしろマッサージにしろ、共通するのは桜さんを気持ち良くする事だ。どうせなら俺が彼女を気持ち良くしたいな~。


もちろん嫌らしい意味もあるが、俺が何とかできれば金の心配がなくなる。温泉もマッサージも高いし…。


帰ったら彼女に言われた通り、色々調べよう。そう思いながら着替え終わるのを待つ俺だった。

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