スパロボ的恋愛戦

タヌキング

ゴング鳴らせ‼

僕の名前は片桐 衛(かたぎり まもる)。ゲームのスーパーロボット大戦をこよなく愛す大学二年生である。

そんな根っからのスパロボオタクの僕に恋愛のチャンスが訪れ、気合、いや気迫で気力が130になった。

相手は同じ大学の同じく二年生、名前は坂下 真利亜(さかした まりあ)さんという。長い髪にクリっとした目が特徴的な有り体に言って美人である。

ココが正念場だ、ドンサウザーの隣にコロスが居ようが構いはしない、全力のシャッフル同盟拳で恋愛という名の戦いに勝利してみせる。



ということで僕はオシャレな服を買い。初めてのスキンケアまで行い、いつもの散髪屋さんに悪いと思いながらも美容室で髪を切った。フル改造して衛カスタムに生まれ変わった心地である。もちろん強化パーツのスロットルにもバッチリ装備しているのをイメージして、付けた強化パーツはハロ、鋼の魂、勇者の印、火星丼である。

後は勇気を持って、待ち合わせの犬の銅像の前に定刻一時間前に只今参上‼

一時間、スパロボDのツメスパロボをしながら時間を潰していると、遠くの方に彼女の姿が見えたので、スッとズボンのポケットにゲームボーイアドバンスを隠す僕。

スパロボ好きなことは、とりあえず隠し要素である。

坂下さんは上は赤いセーターで、下は紺色のロングスカート、靴はハイヒールというファッションで、いつもより派手な感じである。もしかしてデートに気合入れてくれたのかな?


「お待たせ―。衛君は早いね。もしかしてかなり前から来てたの?」


「い、いや、僕も今来たところ。」


本当は一時間前から来てたなんて言うべきじゃないと、恋愛の攻略本に書いてあった。攻略本を読むのは得意である。ウーフェイのことを悪く書くのはやめてあげて。


「じゃあ今日は何処に行こうか?」


と言いつつも僕は遊園地に行くプランを画策していた。最初のプレイでは安パイのルートを選ぶこれが恋愛でもスパロボでも最適な解であろう。ハマーンは仲間にしておくべきである。


「私、水族館に行きたいな。」


な、なんとー‼

水族館?そんなバカな。コッチは水適応Dのカナヅチですぞ。一マスずつしか進めないし、武器は全部ビーム兵器ですよ。坂下さんってもしかして潜水艦の船長さんですか?

これは大変なことになった。まさか向こうからカウンターを喰らうとは思わなかった。母さーん‼って青野 武さんボイスを出しそうになるよ。

初戦から水ステージとかインパクトかよ。怯えろ、竦め、MSの性能を生かせぬまま死んで行け‼

だがココはあえて自分がゲッター3になったと思い、水族館ステージを乗り切ろう。


「分かった、水族館行こうか。」


「はい♪」


その時の彼女の笑顔は、僕のスパロボオリジナルの推しヒロイン、エスター・エルハスがデレた時に勝るとも劣らない可愛さであり、危うく撃破されかけた。


というワケでマーメイド水族館にやって来た。水族館の名前を見て、そういえばマーメイドガンダムってスパロボ出て無いなと思った僕は、病気であると言っても過言ではあるまい。

水槽を一つ一つ覗いて多種多彩な魚達を見て行く作業は、スパロボのライブラリを見ているような感覚になる。魚たちの声とか再生出来ないかな?


「熱心に見てるね。」


「あ、あぁゴメン。海の生き物たちを見てると、明日を守れって気分になってきて。」


「明日?」


あっ、しまった。何で出てきたバルディオス。お前は亜空間にでも突入しておいてくれ。


「ご、ごめん。変なこと言って・・・あっ、あっちにカワウソのコーナーがあるよ。」


「本当だ♪行こう行こう♪」


ふぅ、何とか誤魔化すことが出来たな。口を開けばすぐにスパロボが出てきてしまうのが僕の悪い癖だ。シグマシグマゴッドシグマ♪とかは絶対に言わない様にしないと。坂下さんから「アナタ最低です‼」とウィスパーボイスで罵られてしまう・・・いやそれはそれで良くないか?


その後も敵の増援が出たり(坂下さんの友達と出会った)、ギルドロームの気力下げイベントが起こったり(水族館内のレストランで食べたピラフに嫌いなグリーンピースが入っていた)、様々な苦難を乗り越えて水族館デートを乗り越えた。

水族館を出るとすっかり外は暗くなっており、僕らは海の見えるベンチに隣通しで座った。人気は無いしムードはバッチリだ。

ラブ補正のハートは僕の方しか出なかっただろうけど、ここで必中、闘志、魂、幸運、努力の精神コマンドを大盤振る舞いした。あぁ一応ひらめきを付けておこう、倒しきれなかったらいけないしね。

ただスパロボと違って直前にセーブしてコンテニューは出来ないので、バンプレストのロゴを見ること無い。勝負は一発スペースバズーカだ。

僕は坂下さんに告白をする。


「あの坂下さん、お話があります。」


「はい、なんですか?」


さぁ、今必殺のサン‼アターック‼


「ぼ、僕と付きひゃって下さい‼」


噛んだーーーーーーーーー‼クソがーーーーーー‼

僕はベンチから崩れ落ち、気分的にはイデオンの全滅エンドである。

だがここである歌が聞こえて来た。


「もしもー♪力尽きて~♪闘志の刃くだーけてもー♪」


この美声の声の主は紛れもなく坂下さんだった。彼女は僕に手を差し伸べながら、僕の大好きな歌を歌っているのだ。


「僕がここに居たことだけ~♪どうか覚えていて欲しいよ~♪」


な、なんということだ‼彼女もまさかスパロボ仲間だったとは‼


「衛君、今からカラオケ行かない?三時間ロボットアニソン縛りで。」


「い、行きます、ゴーアクエリオン♪」


こうして僕たちはカラオケに行くことになった。告白は有耶無耶になってしまったが、まだチャンスはいくらでもありそうな気がする。だってゴングは鳴ったばかりなのだから。


「インマイドリーム‼赤いバラの花ぁ‼部屋中にいっぱい敷き詰めてぇ‼」


坂下さん、インマイドリーム全力で歌う人とはね。もう素晴らしい。



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スパロボ的恋愛戦 タヌキング @kibamusi

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