第5話 最終日 午前十時〜午前十一時 決断

 「何いっ!?もう午前十時だと?!」


 俺は昨日お妃候補三人との面会、父上様と馬鹿さを認識しただけのやりとりを済ました後、選択の熟考をしながら眠ってしまった。

 そして一晩中目覚める事なく、当然の様にパンイチ姿で覚醒した。

 そのまま、庶民街で流行していると言う、昨夜の飲み残しの鉄骨飲料なる物を、バルコニーで優雅にガブ飲みしながら熟考を振り返る。


 皇太子妃になるには条件……正しくは王室典範には記載がないが、要素と言う物がある。

 まずは、立場上他国との外交的な行事、国内の社交界への参加が必要になる。そうなると、表面上の社交性と言う要素が必要になる。

 残念ながら、この段階で極度の恥ずかしがりやであるシークレットの令嬢は除外せざるを得ない。

 次に容姿端麗である事。

 これは王室典範にも、それとなく記載されているが、俺はあまりこだわらない。明確な基準もない、好みがどうかは下半身が決める事だ。


 改めて候補者を整理しよう。


 ◯フラフープ令嬢

 →価値観が相違過ぎる。

  お断り済み。

 ◯ランバダ令嬢

 →母上様に似た、小柄な令嬢。

 明るく、積極的で好感が持てたが、たまに飛び出す発言が若干精神を蝕んでいた事は否めない。

 例)パンナコッタ様のハレー彗星、夜の被り物、私の堤防決壊、大人の笑い袋 など。

 ◯シークレットの令嬢

 →極度の恥ずかしがりやの為、お妃となった場合、公務に支障あり。


 結論は明白だ。


 発言に多少のダメージがあるが、それもジョークだと笑い飛ばせばいい。

 

 俺はジュリアナ家令嬢ランバダとの婚約を決めた。


 ちょっと待て?

 本当にいいのか?

 フラフープ令嬢は問題外だが、シークレット令嬢の事は何一つ知らないぞ?

 だいたい偉そうに決めたと、のたまっているが、ランバダ令嬢は本当に望んでいるのか?ちなみに俺の髪型は、後ろ髪長めのソフトモヒカンだぞ?

 


 迷いが出てきた――


 ガチャ


 「おい。パンナコッタ!」


 「あ、おはようございます。父上様」


 「決めたか?」


 「はい!今お部屋にお伺いご報告させて頂こうと思っていた矢先でして……ジュリアナ家令嬢ランバダをお妃として迎える事にしました」


 「やはりな……お前がそう考えるだろうと思い、既に呼んである。間もなく馬車で到着するはずだ」


 「さすが父上様!究極の手配力!さすが新人類だっちゅーの!」

 (誰が見ても明らかな選択だと思うが?)


 ヒヒーン


 俺の男のシンボルに、馬のいななきがチーンと響き渡る。


 俺はそそくさと、最高級絹糸使用冠婚葬祭兼用可能タキシードに身を包み応接室のドアを開けた。


 ガチャ


 「パンナコッタ様……」


 「ようこそランバダ令嬢。私は君を一生の伴侶として、長い時を共に過ごしていく事に決めた。お受けして頂けるかな?」


 「パンナコッタ様……もちろんでございます」


 涙を見せている。

 可愛らしい一面もあるな。

 先日の大人のふりかけ……じゃなかった、大人の発言は何かの間違いだろう。


 「パンナコッタ様、私が正式にこのお城にやってくるまで、夜のセルフサービスを堪能して頂ければと思います」


 間違いではなかった。

 白紙に戻すべきか?

 一生を決める決断だ。

 父上様に何を言われ、どんな指導を受けようが抗うべきか?

 こんな気持ちのままでは、ランバダ令嬢にも申し訳ない。

 一時撤退だ。


 「ランバダ令嬢、ちょっと待っていてくれないか?」


 ガチャ


 「おう!二人共おめでとう!早速だが、世間への発表はまもなく、婚約の儀は明日、結婚式は一週間後に決めたぞ」


 「…………」

 (父上様……終わったか……)


 「ん? パンナコッタ。お前どこに行くんだ?」

 

 「どこかへ行く?と、とんでもございませんっ! 夜はイッても、今はどこにも行きませんっ!」


 「ウフフフ……!」


 こうして俺の三日間は、熟考と葛藤の伏線を放り投げ、父上様の圧力に屈する形で幕を閉じた。


 その後どうなったかだと?

 野暮な事は聞かないでくれ。


 お妃として即位したランバダ令嬢は、その社交性、屈託のないピンクの笑顔などが指示され、女性国民の憧れ、身に付けている物は流行りになった。


 ◇◆◇◆◇◆


 少し時が経ち、小鳥がチュン!パン!ドピュ!トクトク〜と鳴き、白濁色の雲朝日を照らすバルコニー。


 「時が経つのは早いな、ランバダ。結婚式が終わりもう一週間だ」


 「はい。ですが、時の経つのは早いですが、パンナコッタ様の刀が勃ってイクのは遅いですね。ウフフ」


 「…………」


 今日も俺は、日々精神的ダメージを受けている。


 〈完〉



 ◯後書き


 ご拝読頂きありがとうございます。

 そして、特にそっち方面の耐性スキルがない女性の方、大変申し訳ありませんでした。


 テンポ良く、流行ネタを交え、サイト規約とカクヨムコンで許されるギリギリセーフラインを目指して執筆させて頂きました。私の中のNGワードがありまして、金・棒・自家発電・玉は使わない様に心がけ、クスッと笑える作品を目指しました。

 カクヨムコンではストレートなコメディ作品が少ないと言うのも理由です。

 流行ネタに関して、ボツにしたのはイナバウワー、ファジー、メークドラマ、毒まんじゅう、ゲッツ! などです。

 私は真面目です。

 こう言った作品があってもいいじゃないか? カクヨムコンに咲く黒い花として、一瞬でも読者の方に思い出して頂ければ幸いです。


 ありがとうございました!


 

 


 


 


 


 


 

 


 

 

 


 

 


 


 


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ある異世界皇太子が婚約者を決めるまでの三日間の物語 @pusuga

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