第35話

お昼休みの時間になり紅葉がいるクラスへと向かった。



「紅葉さんいますか?」


「紅葉様と話したいんだったらまず俺たちに話を通してもらおうか」


疑っていたわけではないが篠崎が言っていた通り何人かの生徒がクラスの中から出てきた。


「俺は紅葉さんとただ話したいだけなんですけど」


「私に用事って何かな?」


少し奥の方からそう言って紅葉が俺の方に歩いてくる。


「いくつかお聞きしたいことがありまして」


「ただ聞きたいことがあるんだったら俺たちがいるこの場で話しても問題ないだろう」


「…」


「まあまあ他の人がいると話せないこともあるだろうし無理させるのは良くないよ」


「紅葉様がそういうのなら俺は受け入れますけど」


どこか納得いっていないような口調でもあったがそのたった一言で男子生徒を黙らせてしまった。


「それじゃあ場所を移動しようかここじゃ話しにくいことなんでしょう」


「はい」


俺たちはなるべく人目につかないグランドの場所に向かった。



「それで私に改めて話って何かな?」


歩きながら俺の方に振り返り訪ねてくる。


「紅葉さんが今までの噂を流してたんじゃないんですか?」


「どうしたのいきなり何でそんなこと言うの?」


「もし私が噂を流したとして一体何の噂を流すって言うの?」


「図書館の幽霊の噂とか」


「その噂ならある程度は知ってるけど私が流したわけじゃないよ」


「それにあんなのよく学校で流行る噂じゃない?」


「俺も最初はその噂のことについて探りはしてたけどそんな危ないとは思ってなかった」


「でもそれが次の噂を流すためのフェイクだったとしたら」


「どういうこと?」


「ちょうどその噂が落ち着いた頃俺が男子トイレに無理やり連れ込んだっていう事件が起きた」


「でもあれはあの子がやったことでしょう私には何の関係もない」


「でもなあその女子生徒に噂を流してるのは誰なんだって聞いたら口止めされてるって答えたよ」


「だからって噂を流した犯人が私っていうのは辻褄が合わないんじゃない?」


「俺も最初はそう思ってSNSで色々と情報を調べてた時とある女子生徒のユーザー名を入力したんだ」


「結局その事件は女子生徒が自分で男子トイレに入って叫んだだけの事件だった」


「だけどその事件が起こる前の日にその女子生徒がもう一人の女子生徒と事件を起こす的な会話をしてたのを聞いてあの時のことが実際に実行されたんだと俺に謝ってきました」


「もしかしてその時会話してた女子生徒が私だって言いたいの?」


「ええですがこれだけじゃ証拠にならない」


「だから実際にこの投稿した本人に会いに行って話を聞いて見たんです」


「そしたらあなたがその金井と会話をしてたもう1人だって言ってましたよ」


「でもそれはその子の見間違い っていう可能性もあるんじゃない」


「私がそんなことをする動機は何なの?」


「最初から動機なんてないただ自分のためにやったんだろう」


「紅葉…」


「いや…鏑木紅葉」


「お前はただ俺が苦しんでるところを見たかっただけだ」


「1年前とちっとも変わっちゃいない!」


「人の大切なものを奪って快楽を覚えるお前はそういうやつだ!」


俺がそう言うとしばらく間を開け大きな笑い声をあげる。


「ははは!」


その笑い声には聞き覚えがあった。


1年前まで毎日のように聞いていた人を馬鹿にする笑い声。


見た目が赤の他人のように変わってもそれは変わらない。


「残念だな…」


ひとしきり笑い声をあげた後小さくそう言ってため息をつく。



「後もうちょっと楽しめると思ったんだけどまさかこんなに早くばれるとはね」


「でも楽しかった」


「でもあの子は面白かったな」


「私に協力してくれたら進藤くんとくっつけてあげるって言ったら2つ返事で協力してくれたよ」


「あなたがクラスの中でいじめられてる間私は図書館にいるあの女の子の噂を広めるのを頑張ってたんだ」


「あなたがとてもあの子を大事にしてそうだったからあの子に被害が及んだらどうするのかちょっと気になってついつい遊んじゃった」


楽しそうに笑い声をあげながら言う。


「お前は本当に人の心を何だと思ってるんだ!」


「そんなに怒らないで何もしないから」


「次俺の周りの人間に何かしようとしたら今度こそ容赦しねえからな!」


次の日。 


俺はいつも通りの時間に学校の図書館に向かいドアを開ける。


「おはようございます鈴原さん」


「おはようございます篠崎さん」


「気にしていたかどうかわかんないんですけど噂を流していた本人と話して決着がつきました」


「そうですか」


帰ってきた反応は思っていたよりもあっさりしている。


「あのこれ少し遅くなっちゃいましたけど国語のテストの時のお礼にと思って」


少し不格好なしおりを手渡す。


「気に入らなかったら捨ててください!」


「ありがとうございます、とても嬉しいです!」

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本の虫文学少女と図書館で過ごす時間 カイト @478859335956288968258582555888

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