第19話 讃美歌
窓やドアが壊された廃墟の中はコンクリートが剥き出しになり、そこに古びたソファーが置かれ秘密基地のようになっていた。
リリの安全な場所を作るために数日かけてリフォームをして、いつしかユウタとタカシはそこでモノづくりに
「沼崎さん、聞いてよ」
タカシはモーターにグリスを
「どうしたの?」
「こいつ俺にばかりグリス塗らせるんだよ」
「宿題がまだ終わってないから仕方がないだろ。ウチの親、成績下がるとめっちゃうるさいんだよ」
「ふふふっ」
「沼崎さん、頭良いから今度勉強の仕方教えてよ」
「ユウタ、ここ塾じゃないんだぜ」タカシは呆れている。
「あははは」
恵梨香は二人のやりとりが面白くて仕方がない。
年齢差はあったが他愛もない会話が弾んでいた。
「ニャーニャー」
二人が言い争うと決まってリリが仲介にくる。リリはユウタとタカシにも
ある日、夕方にバーベキューをやった。小さな鉄板を用いたほとんど
食事の後は
やがて光を見つめ合う空間がそうさせたのか、その場にいる者達は次第に思っていることを打ち明け始めた。家庭の話や進路の話など、深くて真面目な話になる。
そして絵梨香は傷跡を見せてイジメに遭っていることを告げた。そのとき、二人は女子校に抗議してやると声を荒げたが、絵梨香は首を振った。
「良いの。もう直ぐ卒業だから。それにリリと君たちに出会えて今は幸せだよ」
暗がりの中、線香花火をしているときはしんみりした時間だった。
「いつか俺たち、工業系の学校に行って二人でロボコンにチャレンジするんだ。なっ」
タカシはそう言ってユウタと肩を組む。
「ああ」
夢を熱く語っているユウタとタカシは可愛い弟のような存在だった。
「頑張ってね。応援しているからね」
「ありがとう、沼崎さん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます