第7話 遊園地

俺は今、ミコと2人で遊園地に来ている。

俺は作曲を頑張ろうと思ったのだが、やはり一向に良い歌詞が思いつかない、相変わらず悩んでいたのだ。


そんな俺を見かねてか、ミコが一緒に遊園地に行こうと提案してきたのだ。


ちなみにミコは自在にCDの中から出入りできるので、遊園地まで俺がCDを持って行った。


「なぁ、そのCDの中の居心地っていいの?」

「うーん…子宮の中、みたいな」

「お、おう」


何でVOCALOIDのミコが子宮の居心地を知ってるのかはさておき、まぁおそらく居心地は良いのだろう。

ちなみにミコは普段、基本的に黒い服を着ている。魔法使いが来てそうなちょっとダボっとしたやつだ。伝わりづらいかもしれないが、魔法少女幸福論みたいな服というよりは、最後のワンダーランドみたいな服だ。魔法少女というより魔法使いっぽい服ということである。ミコが言うには、システム上MV以外では基本この服しか着られないらしい。不便そうだ。

さすがに街中でこの格好をしていると、すれ違った人たちに、ここは魔法学校だったか?と勘違いさせてしまいそうだが、遊園地でこの格好なら可愛い女の子のコスプレで済むだろう。


「ミコは何か乗りたいのある?」


ミコは少し悩んでから指を指した

「あれ乗りたい」


ミコが指を指した先には、高さ100メートル近くはある巨大なジェットコースターが構えていた。


「いや、あれは…」


俺はとにかく絶叫系が苦手だ。動物園とかにある小学生向けのミニコースターすらも乗れないのに、あんなヤバめなやつ乗れるはずがない。


そんな俺の考えを理解したのか、ミコはニヤッと笑って言った。


「ひょっとしてマスター、あれ怖いの?」


何て嫌らしい笑顔なんだ、そして可愛い。ただ、ここは俺の面子のためにも、怖いと認めるわけにはいかない。ましてや自分のVOCALOIDに舐められるわけにはいかないのである。


「いや、全然。俺は絶叫系が大得意だからな。ただミコにはまだ早いんじゃない?と思って」


するとミコはムッとして言い返してきた。


「心配してくれてありがとう!でも私は全然怖くないよ!マスターも全然怖くないんだよね!!じゃあ乗るの決まり!」


ーーーーー


「次だね!マスター!」


結局乗ることになってしまった。順番が進めば進むほど引き返したくなる。


「あれ?マスター震えてない?もしかして怖いの?」


ミコがニヤニヤ笑って話しかけてくる。今日はやけにS っ気がある。


「全く怖くなんてないよ!」



遂に順番が来てしまった。

恐る恐る乗り込む俺とは裏腹に、ミコはとても落ち着いた様子だ。よほど絶叫系が得意なのだろう。

ジェットコースターが出発した。


ーーーーーーーーー


「楽しかったね!、マスター!!」

「あぁ…そうだな…」

「あれ?マスター?絶叫系は大得意なんだよね?」

「あぁ…」


ミコは嬉々として俺をイジってくる。よほど機嫌が良いのだろう。 


「ミコは何でああいうのが得意なんだ?」

「だって…私

 MVの中で泳いだり飛んだりしてるもん」



そりゃ確かにこんなジェットコースター怖くも何とも無いよな!!


ーーーーーー


その後も遊園地のアトラクションを一通り楽しんだ。よほど楽しかったのか、ミコはいつになく上機嫌だった。すっかり辺りは暗くなり、俺たちはパレードが始まるのを待っていた。


「マスター」

「ん?どうした?」


ミコが突然話しかけてきた。


「わたし、今日すごく楽しかった!」

「俺もだよ、やっぱり遊園地って楽しいもんだな」

「もちろん遊園地も楽しかった。でも…

ずっとマスターと一緒にいられたのが1番楽しかった!!」


突然そんな事を言われると、男っていうのは勘違いしてしまう生き物だ。だが、男として言うべき事は言おうと思う。


「俺も、ミコと一緒にここに来れて楽しかったよ。ありがとう」


ミコは顔を少し赤くして、照れ隠しのつもりか顔を伏せた。


「ほら、パレード始まるぞ」

「うん!!」



パレードの明るい音楽が俺とミコを包んでいた。


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