第2話 新しい生活の始まり

 網に入れられて連れてこられたのは、あの大きな箱の中だった。

 

 「こんなふうになっていたのか。」


 箱の中も開けたり閉めたりできる板で区切られていた。

 そして、とにかく広かった。もし僕が逃げられたなら捕まらないだろう。でも、悔しいことに網の中だと動きにくい。


 僕は一体どうなるんだろう。

 そのとき、僕に近づいてくるものがあった。

  

 「ぐるる…わんっわんっ」


 も、もしやこの声は「イヌ」というケモノかっ!

 まだ小さい頃、母猫に教えてもらったことがある。「イヌ」や「カラス」というケモノは本当に危険だから絶対に近づいては行けないよ、と。


 「僕はこいつの餌にされるのか。ああ、僕の人生はここで終わるのか。」


 死を悟った僕だったが、餌にされる気配はなかった。それどころか、とてもいい匂いが漂ってきて、その匂いを発するものが僕の前に置かれた。

 

 「食べて、いいのか?」


 安全なものか分からないけれど一口だけ口に入れてみた。


 「おいしい!なんだこれは!」


 周りのことも気にせず、とにかく食べた。久しぶりにまともな食べ物が食べられて、涙が出そうだ。捕まった時とは違い、穏やかな気持ちで食べることができた。


 「なんだか、お腹いっぱいになったら眠くなってきた。こんな食事が食べられるなら、ここでの生活もいいかも。」


 そう、新しい生活が始まる予感がしたんだ。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る