呪神 ~呪い、願う~(仮)

生虎

呪い、願う

遠い昔、俺がまだ小学生低学年の頃だろうか、近くの神社に祖母に連れられてお参りをした。

祖母の「ここの神様は~」とか話を聞いているとふと疑問に感じたことを祖母に聞いた。


「どんな神様がいるの?」

「自然の神様、願いを叶えてくれる神様、元人間だった神様、他にも色居るいるね~」

「ふ~ん、元人間の神様もいるんだ~」

「天神様って知ってるかい?」

「知ってるよ~勉強の神様?」

「そうだよ~菅原道真って昔の偉い人で神様になったんだよ」

「ふ~ん、そうなんだ。どうやって神様になったの?」


祖母は菅原道真と言う歴史上有名の人物歴史を当時の俺に解り易い様に話してくれた。

そして、非業の死を遂げた後に大悪霊となり、それを鎮めるために皆に祭られて神となったことを教えてくれた。


「天神様は皆にお願いされて神様になったんだね~」

「そうだよ~」

「とうりゃんせ~とうりゃんせ~ここは何処の細道じゃ~」

「「天神様の細道じゃ~」」


家路に向かいながら、祖母と2人、わらべ歌の「通りゃんせ」を歌い終わると、祖母がふと私を揶揄い怖がらせようと話をしてきた。


「天神様は良い神様になったんだけど、中には悪い神様も居るんだよ」

「悪い神様?」

「そうだよ~祭ろわぬ神」

「まつろわぬかみ?」

「みんなが怖がってお祭りしない神様だよ」

「どんな神様?」

「貧乏神、死神とか色々だね~」

「貧乏も死ぬのも怖いね」

「あ~~それから・・・本当に怖い神様だから誰にも言ってはいけないからこの神様は2人だけの秘密ね」

「ひみつ?」

「秘密!」

「うん!分った!!」


何故こんな昔のことを思い出したのだろうか?

そう、それは今自分の置かれた現状にある。

俺はどうにかして復讐したい相手がいるのだ。

相手は復讐しようにも俺の手の届かな雲の上の人間だ。

ボディーガードがいる程の金持ちで手の出しようもない。

じゃあ如何するか・・・それこそ呪い殺すしか方法はないのではないのだろうか?

その時、ふと昔の祖母との話を思い出した。



その神の名は




呪神のろいかみ



『じゅしん』とも呼べるが祖母から聞いた名はそれである。

この神は読んで字の如く呪の神である。

祖母は言った「本当に呪いたい相手が居てこの神の存在を知る者の前にこの神は現れる」と。

この神が現れるのは条件を満たした者の夢の中に現れる。

そして、昨日俺は夢でかの神に出会った。

夢の中で俺はある庵の前に佇んでいた。

ふとその庵の中に入ると1人のおきなが囲炉裏の前に座っている。


「どうした?座らんのかね?」


翁に促され俺はその翁の対面の囲炉裏の前へと腰を下ろした。

ふと翁に視線を向けると禍々しくもあり神々しくもある。

何を馬鹿なと思うが夢の中ではそう感じた。


「ここに何をしに来なさった?」

「その前にここは何処ですか?」

「ここか?ここはうつつ夢幻むげんはざまよ」

うつつ夢幻むげんはさま・・・貴方はいったい・・・」

「知っておろう?ワシを知る者の前にしかワシは現れんよ」

「え?」

「それで?おぬしはここに何をしに来なさった?」

「俺は・・・」


間違いなく目の前に居る翁は呪神のろいかみ様だと思った。

そう思った瞬間に翁は邪悪にも無邪気にも見える何とも言い難い笑みを俺に向けた。


「俺はある者を恨んでおります」

「そうかい、それで?」

「その者は地位も名誉も金も持ち、俺では太刀打ちできません」

「その者をどうしたい?」

「呪いたい・・・」

「そうかいそうかい」


翁、いや呪神様はまた深い笑みを俺に向けて先を促す。


「俺は全てがどうなっても構わないので彼奴に恨みを返したい・・・」

「恨みを返すか・・・返すだけで良いのか?」

「返すだけとは?」

「それを見ずに死んでも良いと?」

「見れるなら見たいですが・・・」

「あいわかった」


呪神様は別れ際に「相手が絶望して死ぬまで眺めていると宜し、死んだ後は今度はお前さんの清算の番になるが宜しいか?」と尋ねて来た。

俺は深々とお辞儀して「宜しくお願いいたします」と言った。

気が付くと布団の中に俺は居た。

どうやら祖母の言ったことは本当だったようだ。


俺が呪神様に願った呪の相手は俺の元経営パートナーでもあり今や日本でも有数の資産家に上り詰めた人物である。

この人物は俺の経営者としての師匠でもあった。

色々と教えて貰いある時は助けても貰ったが、最後は全てを奪われ今の俺がある。

奴は俺から得た物を使い更に高みへと昇り詰めて今や手の届く存在ではない。

しかし、昨日の夜、夢の中に呪神様が現れ俺は奴への呪を願った。

きっと俺の願いは叶うのであろう非常に楽しみだ。


それから数か月後、奴の妻は重病となり奴と娘を残しこの世を去った。

奴の妻はテレビに出る程の女優でその闘病がテレビでも取り上げられて死んだ際も新聞やニュース、ネット等々で大きく取り上げられた。

奴も資産家としテレビ出演などする関係でインタビューを受け悲痛な胸の内を暴露していた。

呪神様へはどの様に呪って欲しいとは言わなかったが多分これは呪いの一部だと思えた。

そして、数年して奴の一粒種の娘が結婚したと言うニュースを聞いた。

更に数年後にその娘から女児が生まれたことを風の噂で聞いたが、その女児は難病を抱えていることも併せて聞いた。

俺はまたしてもほくそ笑んだ。

数年後、娘の夫が大事件を起こしその娘と離婚したと耳にした。

そして、夫との離婚と娘の難病の看病を苦に娘は自殺した。

俺はまたしてもほくそ笑んだ。

残された孫娘を大事に大事に育てるいいお爺さんとして奴は周りからは尊敬の眼差しを向けられた。

そして、その孫が二十歳の誕生日に例の難病が原因でこの世を去った。

有名な資産家であった奴が泣き崩れる姿はテレビでも一部取り上げられ俺はその映像を見ながら祝杯を挙げた。

地位と名誉と金以外は全て失った彼はその後すぐに枯れるように死んでいった。

そして昨日、夢の中に呪神様がまた現れた。


「どうじゃね、願いは叶ったかね?」

「はい、最高でした」

「そうかそうか、それは良かった。では次はお主が清算する番じゃな」


そして俺はその言葉を聞いた後覚醒した。

俺は今後どうなるのであろうか・・・

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