黒幕は空でつかまえて

「ハ?」


 リドリィがぽかんとくちばしを開いている。青葉は、いたずらっぽく笑った。


「全員の前で、すべて白状してくれたね」


 そこで、私は周りを見わたした。


 世界は動いていた。

 兵士たちは、全員がリドリィを見あげている。


「おい、聞いたか?」「敵を差しむけたって?」「すべては、あの鳥の策略だったのか?」


 もうボタンなんか使わなくても、みんなは戦いを止めている。


「【世界消音ミュート】、解除。便利だね、これ」


 青葉はリモコンをゆらす。


 リドリィが得意げにしゃべりだす直前に、青葉は背中にかくしたリモコンで【世界停止ストップ】のボタンをおして、停止を解除していたんだ。


「あとは【世界消音ミュート】で周囲の音を消して、【世界増音ボリューム】でリドリィの声を大きくするだけ。君がおしゃべりで、助かったよ」


 青葉の機転のおかげで、リドリィの自白は全員の耳に届いた。


 逃げようとしたスパイの兵長さんもとらえられて、あとは憎き渡り鳥だけ!


「チッ! ひとまず、にげるが勝ちだゼ!」


 最悪の状況に、リドリィは高く飛びさろうと羽ばたく。


「にがすわけ、ないしっ!」


 今度は私が、青葉の前に出る。


 リドリィに向けて、リモコンのボタンを、ポチッ!


 光が当たると、リドリィの動きに変化が起きる。


 猛スピードではなれて行こうとしていたリドリィの動きが、スローモーションになる。


「な〜、に〜、ヲ〜、し〜、た〜、ん〜、ダ〜?」


 と、しゃべるスピードものろのろ。


「……倍速って、速くするだけじゃないもんね」


 私が使ったボタンは【世界倍速スピード】。


 でも、速さを二倍三倍にするのではなく、その逆。


 二分の一倍、四分の一倍……と、どんどんおそくした。


 これで、もうリドリィはにげられない。


「青葉、お願い!」


「うん!」


 青葉が剣をふると、木の葉が空への階段になってくれる。


 私は木の葉の上をかけあがって、リドリィをつかまえた!

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