帝王の正体

 戦場が静まりかえった。空から私たちが現れたことに、びっくりしているみたい。


 一番おどろいているのは、アカネだ。


「メイ? それに、アオバまで!」


「アカネ。その……き、来ちゃった」


 私が自分の頭をこづく。ちょっとは和むかなぁ、なんて思っていたけれど、アカネは眉毛をつりあげる。


「ここは戦場、危険です! 早く城にもどりなさいっ!」


「そんなことわかっているし! でも、来なきゃいけなかったの!」


「いいえ、ここにいてはいけません! 本当に、怒りますよ!」


 アカネの勢いにおされる私の前に、キューターリーフが立ってくれる。


「姉さん。言いつけを守らず、ごめんなさい」


「アオバ。あなたもあとでお説教です。キズだらけの体で、なぜ戦場に来たのですか?」


 アカネが聞くと、キューターリーフは一言だけ答える。


「姉さんは、帝王と戦ってはいけないから」


 それから、キューターリーフはアカネを守るように立って、悪の帝王をにらみつける。


 私たちのやりとりをじっと見ていた帝王は、仮面の目元を光らせた。


「アカネ・リーフェスタ。アオバ・リーフェスタ。王族ふたりのお出ましか」


「わたくしの名も、知っているのですか」


 くぐもった声で名前を呼ばれて、アカネは私の前に一歩進み、剣をにぎりなおす。


「やめて」


 するどく言ったのは、キューターリーフ。


「姉さん。剣を下げて」


「なぜですか?」


「お願いだから、やめてよ。ボクは、いやだ!」


 キューターリーフは、苦しそうに息を吸ってから、目の前の帝王にさけぶ。


「兄さんと、こんな風に戦いたくない!」


 え……?

 なんて?

 ……「兄さん」?


 私とアカネが動けずにいると、帝王が仮面に手をかけて……ゆっくりと、外した。


「そんな……!」


 あらわになった顔を見て、アカネは剣を落として息を飲む。


 帝王が、名乗る。


「オレはコカゲ帝国の帝王。シロウ・リーフェスタ」


 その正体を、キューターリーフが明かす。


「リーフェスタ王国の第一王子。ボクの、兄さんだ」

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