あなたが私を呼んだとき。

『可憐剣士! キューティエイター!』


 タイトルコールに、不覚にもわくわくしてしまう。ソファに深く座って、コーラを一口。


 舞台の名はリーフェスタ王国。双葉の芽から生える剣の紋章が目印の、緑豊かな美しい国。


 主人公は、アオバ。腰まで届くポニーテールと、エメラルドグリーンの瞳の持ち主だ。


 アオバは幼いころに王族に拾われて、それから巨大なお城で暮らしている。


 いつも明るく元気いっぱいなアオバは、自分のことを「ボク」と呼んでいる。負けずぎらいな一面もあって、剣術の天才としてお城の中では有名だ。


 そんなアオバが愛してやまない王国に、となりのコカゲ帝国からの魔の手がのびる。


 リーフェスタ王国の侵略をたくらむのは、悪の帝王。


 帝王の命令で攻めてくるコカゲ帝国の兵士たちは、王国の草木や花をふみあらす。


「この国を守りたい!」


 強く願ったアオバは、不思議な力を宿す剣をかかげて、声高らかにさけぶ。


『疾風に舞う木の葉に乗って、さっそう参上! キューターリーフ!』


 すると剣から力があふれて、アオバの体は光に包まれて変身する。


 ピカピカのヨロイと、フワフワのスカートに身を包み、キューターリーフはばったばったと敵をたおしていく……!


 ここまで観て、私はガタガタとふるえていた。


 面白いから? 冗談じゃない。


「これ、あの時、観ていたやつだ」


 思いだすのは、六年前。


 このアニメを、私はあーちゃんといっしょに観ていたんだ。あーちゃんが奪われたときと、同じアニメだ……。


「もう、やだ」


 私は、頭を抱える。


「こんなの、観たくない。アニメなんて、きらいっ!」


 耐えられなくなって、リモコンをつかむ。もう止めてしまおうとした瞬間、テレビの中のキューターリーフがこちらに目を向ける。


『ボクには、君の力が必要なんだ!』


 アニメの中から、観ている子どもたちに助けを求めるキューターリーフ。みんなの声援を力に変えて、キューターは立ち上がる。


 ……はず、なのに。


 キューターリーフは、続けてこう言った。


『メイ、助けてっ!』


「……え?」


 私はリモコンを持ったまま、固まってしまう。


 いま、私が名前を呼ばれたの?


 おそるおそる、顔を上げる。


 エメラルドグリーンの瞳は、まっすぐ私を見ていた。


「…………」


 ありえない。


 意味がわからない。


 こんなこと、起こるわけない!


 それでも私は、おそるおそる画面に手をのばす。


 どぷ。


「!」


 テレビの中に、指が入る。夢でもマジックでもない……!


 とっさに手をひっこぬこうとした、瞬間。


 強く、手首をつかまれる。


 画面の中で、キューターリーフが勝ち気な顔で笑っていた。


「う」


 ぐい! と、引っぱられたのが、私が現実世界にいた最後。


「わぁああああっ!」


 私は、アニメの世界に飛びこんでしまった。

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