# 4 異常事態 ⑧
生成された炎の球は
顔全体を覆ってしまいたくなるくらいには熱い熱風が吹き荒れ、
「ラウル、大火事になるぞ」
「心配は無用だ」
ラウルが掲げた
あの爆発と炎を正面から受け、微動だにしていないのなら、あれはとんでもない化物であることが確定する。
「火、全部消していいよ。多分、ラウルの魔法は効いてない」
「やっぱりそう思うか。僕も手ごたえを全く感じなかった」
そう言ってラウルが炎を消した。
露わになった
「くる」
メリィの口からこぼれた一言に反応出来たのはレジーナだけだった。
メリィとレジーナへ向かって伸びた触手の腕を二人とも防ぐ。メリィは構えていた大太刀を斜め上に切り上げ切断し、レジーナは片手持ちしていたサーベルを咄嗟に両手持ちに切り替えて弾いた。
「おもっっっ!!?」
レジーナが叫ぶ。
「まかせて」
そんなレジーナを見てか、返す刀で軌道の逸れた
「また来るぞっ!」
ラウルの掛け声があったところでどうこう出来るような相手じゃない。
切断された両腕は瞬時に再生し、
鞭のようにして伸び縮みする触手状の腕を振るう
地面を抉ってしまった大太刀は狙いの
この状態でどう態勢を立て直し、着地するのかと思いきや、メリィが
一瞬、何が起こったのか理解が追いつかなかった。そしてそれは躱す動作すら出来なかったメリィも同じだったはずで、
「ローグ・バインド・ノーム!」
メリィがやられたことを見届け、ラウルがすかさず詠唱を飛ばす。
今度は地の精霊魔法だ。光と火に続き、地の精霊魔法とは。ラウルの魔法使いとしての実力は相当高いと見ていい。だが、初手の攻撃魔法は
ラウルの詠唱は
「ダメかっ」
「二人は下がってっ!」
既に迫りつつある触手の腕をレジーナが受け止めた。メリィのように切断することは叶わないが、さっきのように驚くことはしない。冷静に触手を受け止め、受け流し、駆ける。
決定打は与えられなくとも、レジーナも
尋常ならざる身体能力と反射神経を用いた人知を超えた戦闘を繰り広げる。どこまでいっても常人でしかない、おれとラウルは見ていることしか出来ない。
「ずっとは持たない。助けないと」
「いや待って、ラウル」
おれたちは見ていることしか出来ない。
手出しなんてすれば容易に返り討ちにされ、命を落とすかもしれない。
ただ、おれはどんな生き物より強い存在を知っている。
「メリィがいる」
爆音と倒木の土煙が舞い上がるとともに、ある意味吹き飛んでき来たメリィがタイマンを張るレジーナと
「まず、いちげき」
「は―――っっっ!?」
レジーナが呆然とするのも仕方ない。
おれもやり過ぎだと感じた。
「つぎ、にげきめ」
停止した状態で、どうやったら超速の肉薄を可能にするのか。理解不能なことをして見せるメリィは
両足、両腕を失い、四角い肉塊となった
誰も死ぬことなく、この場を切り抜けられるなら、メリィの持つ全力で
どう弁明しようかと思ってしまうくらいにメリィは圧倒的だった。
しかしながら、安心する暇を
「つちのなかにもぐってる」
「拠点の方に向かってる!」
分かってしまった時点で叫ばずにはいられなかった。
「メリィ、あいつを追って」
「……うん」
地中を進む
そして、ここであいつを仕留め損ねた時点で最悪の結果になることは容易に想像出来たはずだった。
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