インドで価値観まっぷたつ
その年の冬休み、彼から、
「バイトで貯めたお金で、2人で、インドに旅行に行ってみないか?」と誘われた。
初めての海外旅行がインドかーと思ったが、当時は何でも2人でやれば楽しかったから、行くことにした。
スパイスの効いた食事、アーユルベーダ、カラフルな街並み。
2日目までは、都市部のホテルだったので、優雅に過ごし最高だった。
しかし、その後、
「もっと、色々行ってみよう!」
と言われ、少し都心を離れた。
人人人、車に、バイクに、動物。
クラクションに、怒号。
カラフルを通り越して、色が溢れている。
うるさくて、疲れる。
少し落ち着いていると思われたレストランに入ると、店員さんや隣のテーブルの客などに、
「どこから来た?」
「あそこは行ったか?」
「これを食べてみろ!」
ひっきりなしに話しかけてくる。
うるさいと叫びたくなる。
その日のホテルは、初日のホテルから比べようもない程だ。
トイレはかろうじて水洗だが、シャワーの水は茶色、窓からは一晩中ネオンの灯が漏れ、外の音が一晩中聞こえてくるので、眠れない。
数日後、もっと奥地に行くと言う。
さすがに、私はごねた。
一人でも行くという彼。
一人で残るくらいなら、帰国したい私。
とりあえず、着いていく。
食事は蝿のたかる屋台、ホテルとは名ばかりで、シャワーはなく、トイレは外で穴を掘った所に板を渡してあるだけ。
最悪だった。
でも、彼は楽しそうだ。
ここで、私達の価値観は初めてわかれた。
インド旅行の後、過酷なアメリカ自転車旅行を経て、二人で旅行に行くことはなくなった。
彼は、インドに東南アジア、中東やアフリカを好んで行っていた。
彼は、その後大学を辞め、バイトをしては、海外に行っていた。
一方、私は、大学に行きながら、外国人が多く来店するバーでバイトを始め、そこで知り合った外国人と友達になり、彼らと海外を旅行するようになった。
大学卒業後、私は、ある旅行会社に就職して、最初の赴任地は、バリ島だ。
やった!優雅な生活。ビーチサンダルでの生活が待っていると思っていたが、そうはいかなかった。
結局、空港のオフィスで一日中、観光客のホテルや食事やアクティビティの手配。
週一回の休日に、溜まった家事や買い物をこなし、夕方海を眺めて過ごす生活だ。
そんなすれ違い生活でも、彼とは、なぜか別れ話が出るでもなく、たまに合流して出かけたりしていた。
その頃の合言葉は、
「今どこに住んでるの?」
だった。
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